新世代スーパースポーツとして生まれた「RCプラットフォーム」の核

KTMがMotoGPの経験を注ぎ込んで開発した新世代スーパースポーツ、990 RC Rが欧州で姿を現した。発売は2025年11月。徹底した「READY TO RACE」思想のもと、サーキット直系の性能と日常での扱いやすさを両立した一台として設計されている。
このモデルはKTMの新たなRCプラットフォームの礎となり、これまで培われたデータと技術が集約されている。マッティガーフェンのR&D部門とモータースポーツプログラムによる長年の開発が結実し、数百万件におよぶ走行データから最適化された挙動制御が実現された。
LC8cエンジンが生み出すダイナミズムと耐久性

990 RC Rの心臓部には、最新のEURO5+規制に適合した並列2気筒エンジン「LC8c」を搭載。最高出力は130ps/9500rpm、最大トルクは103Nm/6750rpmと、ミドルクラスとは思えぬ力強さを誇る。バルブクリアランス点検は6万kmごとに設定され、サーキット走行を楽しみながらも高いメンテナンス性を確保している点も見逃せない。
このエンジンは990 DUKEをベースに専用チューニングが施され、低中回転域のトルクを厚く、レスポンスをより鋭く再構成。これにより、峠道での立ち上がり加速や、ワインディングでのリニアな出力コントロールが容易となった。まさに「日常を走るレーサー」の名にふさわしい心臓だ。
フレーム剛性と空力の最適化が導く操縦安定性

フレームはクロモリ鋼トレリス構造を採用し、990 DUKEよりも高剛性化されている。これにより高速域での安定性とターンイン時の鋭さを両立。トーション剛性を抑えたアルミスイングアームが、しなやかなトラクションを生む。新たにリンク式リヤショックを採用したことで、サスペンション作動の追従性も格段に向上した。
フロントにはWP APEXの倒立フォーク、リヤにも同シリーズのフルアジャスタブルショックを装備。路面の不整に強く、ハードブレーキング時にも確実な接地感を維持する。ブレーキはBrembo製HyPureキャリパーと320mmディスクを採用し、ABSは4モード(STREET、SPORT、SUPERMOTO、SUPERMOTO+)を備える。
空力はRC16 MotoGPマシンを参考に風洞で徹底的に検証され、ダウンフォースと冷却効率を両立。外装デザインも戦闘的かつ流麗で、視覚的にも走行性能を象徴している。
テクノロジーと人間工学が融合した“公道レーサー”

コックピットには8.8インチの横型TFTタッチディスプレイを装備。RAIN、STREET、SPORT、CUSTOMに加え、オプションでTRACKと追加CUSTOMモードを選択できる。走行中のリーンアングルやスロットル開度などのテレメトリーデータも確認でき、ライダーの操作を科学的にサポートする。
ライディングポジションはモトGP由来の攻撃的なフォームを基調としながらも、長距離走行での快適性を考慮。タンク上部には6点の接触ポイントが設計され、膝・腕・上体のバランスを最適化。結果として、コーナリング時の車体ホールドと長時間の安定姿勢を両立している。
燃料タンク容量は15.7L、装備重量はわずか195kg。軽快なハンドリングと十分な航続距離を確保し、サーキットからツーリングまで幅広く対応できる万能スーパースポーツとして完成されている。
KTMが示す「セミハンドルの復権」

KTMブランドマネージャーのリアン・ネヴリングは、「990 RC Rは我々が待ち望んでいた一台だ。ネイキッド、アドベンチャー、オフロードに続き、ついに“セミハンドル”の魂を取り戻すマシンが誕生した」と語る。モトGPのRed Bull KTM Factory Racing直系の技術を市販車へと還元する試みは、まさにKTMらしいアプローチだ。
オレンジとブラックの2色展開で、販売は2025年11月から開始される。KTMが掲げる「Never Stop」の精神を体現するこの990 RC Rは、次世代スーパースポーツの指標となる存在として、公道に新たな風を吹き込むだろう。
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