ヤマハとトヨタが共同開発

カーボンニュートラルの実現に向けて、水素エンジンも多様な選択肢の一つと位置づけられる中、ヤマハ発動機は、二輪車への搭載に適した小型の高圧水素タンク(認可取得済)を トヨタと共同で開発し、この「H2 Buddy Porter Concept」を創り出した。

またこのモデルは、公道走行に関わる技術要件を織り込んだ上で、NOxを含むEuro 5排ガス規制にも対応済みで、単なる展示用モデルを超え、次世代社会における実用性を視野に入れている。

このように、ヤマハが提示するこのコンセプトモデルは、水素エンジンを二輪車に実装するという明確な意志をもって、既存のEV/ハイブリッドとは異なる未来のモビリティ像を提示している。

技術概要と特徴

H2 Buddy Porter Conceptが備えるポイントとして、まず高圧水素タンクが挙げられる。トヨタが新規開発した、二輪・スクーター用途に適した高圧タンクを搭載しており、二輪車の狭小スペースにも収まる仕様となっている。

そのタンクを満たした状態で実測で100 km以上の航続距離を達成しており、都市あるいは近距離用途において十分な実用性を示している。

さらに、エンジン・車体構造も専用に開発され、ヤマハが「水素エンジン及び車体等」を主に手がけている。環境性能面では排出ガス規制Euro 5(NOx含む)にも準拠しており、二輪車でも水素燃焼という価値を現実の制度・法規の中に落とし込もうとしている。

設計の観点では、モビリティとしてスクーター的・運搬用途的な「ポーター(運搬車)」性も見え隠れし、都市での日常的な使用シーンを想定するプロポーション/構成が含まれている。

意義とコンセプトの想定用途

このモデルが放つ意味は、二輪車だからこそ成し得る水素利用の可能性を示す点にある。自動車に比べて車体の小型化・簡素化が比較的容易な二輪車において、水素貯蔵・燃焼という選択肢をあえて検証することで、モビリティの“環境対応”を複数軸で追求する姿勢が浮き彫りになる。

また、都市部での配送や移動、短距離用途において「一回で100 km超を走れる」「高圧水素タンクを搭載可能」という仕様は、EV充電環境の整備やバッテリー重量・コストの課題を補完するインフラの一手としても意味を持つ。

さらに、ヤマハとトヨタという、二輪/四輪をそれぞれ主力としてきた2社の共同開発である点も注目すべきだ。モーターサイクルを手がけるヤマハが“実用二輪の水素化”を目指し、自動車分野に強みを持つトヨタの技術を取り込むことで、より実装に近い開発フェーズを示唆している。

今後の展開と課題

このコンセプトモデルは、“出展参考車”という位置づけだが、実用化へ向けた技術検証および社会実装に向けたロードマップの布石と見てよいだろう。公道走行を見据えて法規・排ガス対応を織り込んでいる点から、近い将来の試験運用あるいは限定地域での実証プロジェクトが期待される。

一方で、課題も明らかだ。水素充填ステーションの整備、二輪車としてのコスト構造、バッテリーEVとの競争、車体重量・安全性の確保、そして需要想定の明確化などが残る。さらに、技術的には「水素タンクの高圧化」「二輪車特有の振動・軽量化・動力伝達の確保」など、まだ超えるべきハードルが存在する。

それにもかかわらず、ヤマハがこの道を選んだという点は、モーターサイクル市場における“選択肢の多様化”を示すものであり、二輪車の未来を単純にEVだけに限定しないというメッセージとも受け取れる。今後、各地での実証や量産化に向けた動向が注目される。

このように、H2 Buddy Porter Conceptは、環境性能と実用性、そしてモビリティとしての楽しさを掛け合わせた未来志向のモデルであり、二輪車が水素で走る時代を具体的に描きはじめている。今後の発表・仕様公開・プロジェクト進展において、どのような姿を見せてくるか注視したい。