水素エンジンは水素を燃料とし、水素と酸素を燃焼させた際に生じる水蒸気などの圧力上昇を利用して動力を生み出す。ほとんど二酸化炭素を出さないため、内燃機関の脱炭素化手段の一つとして国内外で開発が進められている。小型かつ高出力化が可能で、燃焼機構を水素に対応させるなどの小規模な改良で開発できる点が特徴。大きなエネルギーが必要で電動化が難しい産業機器などの動力源として期待されている。

今回、実証試験に使用する水素エンジンは、豊田自動織機の既存のガスエンジンをベースに開発された。同社は2021年から水素エンジンの開発に着手し、産業技術総合研究所(以下、産総研)の知見を活用しながら、共同で出力向上などの改良が行われ、今回、実機検証が可能となる性能の目処付けが完了された。実証はAIRMANの水素技術試験場を使って実施し、実用化に向けた課題の洗い出しや技術確立が進められる。

豊田自動織機は今後、発電機やフォークリフトなどの産業機械への適用も視野に、水素エンジンの2030年頃の市場投入が目指される。これまで培ってきたエンジン技術を発展させ、脱炭素社会の実現に貢献していく。

水素エンジンの概要図
水素専焼エンジンコンプレッサー内部(中央が豊田自動織機製水素エンジン、産総研提供)