あらゆる仕様を味わいたくなる素性の良さ!
コレクター&マニアとしての投資も実践!
1999年4月14日――FR×VTECのオープンスポーツとして高い注目を浴びて登場したS2000。奇しくもその日が誕生日だった西田さんは、興味本位で試乗に訪れ、9000rpmまで滑らかに吹け上がるF20Cと、鋭いハンドリングに一瞬で魅了されたという。
「当時はブーストアップ仕様のBNR32に乗っていたんですが、ワインディングではシビックに置いていかれるのが悔しくて。S2000を試乗した瞬間、“これだ”と思って即契約しました」と語る。

当初はS2000の速さに単純に惹かれていただけだったが、自信満々で参加したサーキット走行会で結果が出なかったことで、クルマのバランス引き上げやドライビングの重要性を痛感。チューニング次第で異なる魅力を発揮するS2000を楽しみつつ、ドラテクを鍛えるためにスーパー耐久への参戦まで果たし、気づけば10台以上もS2000を乗り継ぐマニアとなっていた。
「若い頃は資金がなかったので、手放しては次の仕様へ…の繰り返しでした。やがてS2000仲間からパーツを譲られるようになり、それが中古パーツ販売のきっかけに。今では整備から鈑金まで自社で行う『ホワイトナッツカーズ』として、減りゆくS2000を1台でも多く蘇らせています」。
現在では自社ガレージに3Dアライメントやドライビングシミュレーターを備え、4台の現役S2000に加えてレストアベース車両を含む10台超を所有。S2000コレクターとしても国内屈指の存在だ。

こだわりの相棒を見ていく。NAチューンで極限まで磨き上げた黄色号は、2.4L化+4連スロットル仕様で305ps/31.3kgmを発揮。鈴鹿2分18秒、岡山国際1分42秒の好タイムをマークする。エア駆動パドルシフトはヒューランド製シーケンシャルと組み合わせ、シフトミス防止とレスポンスを両立させた。

戸田レーシングの4連スロットルは、見た目のインパクトよりもパワーを優先してフレッシュエアを供給できるカーボンボックスとともにインストール。


ジェイズレーシングのワイドボディキットと、ボルテックスのGTウイング、K1ラボラトリーのハイフロートランクスポイラーでコーナリングマシンが要求する空力性能を確保。

エア駆動のパドルはシフトダウン時のオーバーレブでエンジンブローしないように、モーテックでシフト制限が行なわれている。導入直後はシフト制限が意識から抜け落ち、シフトダウンできずにアタック不発となったこともあったそう。

「FD3Sにストレートで負けるのが悔しくて」と語る西田さんが次に仕上げたのは、2.2L化+GTスーパーチャージャー仕様だ。

実測で453ps&40.2kgmを発揮する心臓部は、ターボのような熱不安もなく、鈴鹿2分17秒、岡山国際1分38秒、セントラル1分23秒という好タイムを叩き出している。なお、現状は完成形でなく、空力の強化やパドルシフト化といったステップアップを予定。さらなる好タイムが期待できる注目株だ。

ドライバーも鍛え上げるため、ABSにブレーキ圧力センサーをセット。ステアリング舵角やアクセル開度などロギングしたデータを基に、K1ラボラトリー・板橋さんのチェックが入る。

WTACなどで空力強化に定評あるボルテックスのフルエアロを纏うが、フロントスプリッターを追加して独自進化を進めている。

セットアップが定まった黄色号から、調整式スタビを移植して熟成を進める青色号。現状はリンクで制御しているが近日中にモーテックへ変更し、TTiシーケンシャルミッションをマグネット式バドルとする予定だ。

一方、ガンメタ号はK1ラボラトリー製のF20C改2.2Lを搭載し、280ps仕様でストリートも快適に。無限ハードトップの代替としてオリジナルカーボン製を装着するなど、日常使いと走行性能を両立している。

フルノーマルのエンジンで足まわりのみを煮詰めたホワイト号は、S2000本来の素性を楽しむための“リセットカー”。派手さこそないが、純粋な操る喜びを再確認できる原点回帰の一台だ。

西田さんが愛車のチューニングやセットアップを一任しているK1ラボラトリーは、ロギングした走行データをもとにマシンのセットアップが必要かドライビングの修正が必要かを的確に見定めるスペシャリストだ。
当初は、K1ラボラトリーに用意されているシミュレーターでドライビングスキルの向上を目指していたが、時間ができれば即トレーニングに取り組めるようにホワイトナッツカーズにもシミュレーターを設置。気軽に走らせることができないアタックマシンに見合ったドラテクを身につけるだけでなく、マシンに対する負荷軽減や攻めすぎてのクラッシュ回避も見越しての体制を整えている。

以前までなら部品取りして廃車となっていたようなS2000を、一台でも多く蘇らせるため、ファクトリーではフレーム修正機や塗装ブースも構えて再生作業を日々進行。S2000が自然と集ってくる西田さんならではの環境をフルに活かした取り組みだ。
●取材協力:K1ラボラトリー 大阪府摂津市鳥飼中2-1-99 TEL:072-650-3580/ホワイトナッツカーズ 奈良県奈良市針町110-1 TEL:0743-61-5758
【関連リンク】
K1ラボラトリー
http://www.k1laboratory.jp
ホワイトナッツカーズ
https://ecc.whitenuts.jp

