MFTBC は、水素を燃焼させるエンジン(内燃機関)で駆動する水素エンジン搭載大型トラック「H2IC」、燃料電池システムで駆動する燃料電池大型トラック「H2FC」の2種類のコンセプトモデルを、「JMS 2025」で世界初公開する。
水素が持つ高いエネルギー量という特性により長い航続距離や短い充填時間が可能になるため、重量物運搬や長距離輸送を伴う商用車のカーボンニュートラル化を実現するうえで、水素は有効な手段であるとMFTBCは考えている。

水素エンジン搭載大型トラック「H2IC」は、ディーゼルトラックと共通のコンポーネントや技術を流用することで、より早くスムーズな水素車両への移行を可能にする車両だ。
水素エンジン技術は、特に高い出力が必要となる建設用車両などの用途に適した車両で、「H2IC」は圧縮水素ガスを燃料として使用している。

液体水素搭載燃料電池大型トラック「H2FC」は、燃料電池システムが水素を電力に変換し、電気モーターを駆動させて走行する燃料電池トラックだ。
「H2FC」は、水素を液体状態で搭載。
「H2FC」は、圧縮水素ガスと比べてより密度が高い液体水素を使用することで、最大1,200キロメートルの航続距離※1を実現し、15分以内での充填が可能。
また、ディーゼル車と同等サイズのリヤボディを確保し、積載スペースへの制限もない。

「H2FC」は、国内初のサブクール液体水素(subcooled liquid hydrogen: sLH2)充填※2用の液体水素タンクを搭載した燃料電池大型トラックだ。
ダイムラートラック社が産業ガス、および水素インフラ構築技術の先駆者であるリンデ・エンジニアリングと共同開発した sLH2 充填技術は、液体水素を扱う上でこれまで課題であったボイルオフガス(蒸発した水素ガス)を再液化することで、ボイルオフガスを排出する必要がなく、液体水素の充填が行える充填方式である。
sLH2 は車両走行時もボイルオフガスの排出を削減する。
さらに、sLH2 は圧縮水素ガスを使用する際に水素ステーションに必要な設備を大幅に簡素化できることから、インフラコストの削減にも貢献し、水素社会の実現にも貢献する。

MFTBC は液体水素を国内で唯一供給する※3岩谷産業と sLH2充填技術の国内での確立を目指して、共同で研究を進めている。
sLH2充填技術は、ISO 規格化に向けて、関係者間で議論されている。
日本国内では、 MFTBC は sLH2充填に関する技術、規制及び商用化に関する共同研究を岩谷産業と取り組んでおり、sLH2充填技術の日本での確立に向けて取り組みが進められている。
MFTBC はまた、同技術の国内での確立を実現するために、外部企業・機関との協力体制の構築を図っている。

「JMS 2025」の MFTBC ブースでは、岩谷産業とのパネルディスカッションや水素技術に関する展示を通じて、同技術について詳しく紹介される予定となっている。

【注釈】

  1. MFTBC 社内評価に基づく(車両総重量25トン車、液体水素タンク容量80kg)
  2. 液体水素をポンプで加圧しながら車両に搭載された液体水素タンクに充填することで、液体水素タンク内のボイルオフガス(蒸発した水素ガス)が再液化され、ボイルオフガスを排出する必要がなく、急速に充填を行う液体水素の新しい充填技術。
  3. 2025年10月現在