Porsche Cayenne Electric

プロトタイプによる航続距離テストを実施

発売前のプロトタイプを使用し、北米のジャーナリストのドライブで、航続距離テストを実施。1回の充電で563kmを走破した。
発売前のプロトタイプを使用し、北米のジャーナリストのドライブで、航続距離テストを実施。1回の充電で563kmを走破した。

数週間後に発表される「カイエン エレクトリック」には、革新的な高電圧テクノロジーが採用されるという。機能統合型バッテリー、強力なデュアル冷却、インテリジェントな熱管理、そして信頼性の高い充電機能により、高い実用性を持ったフル電動SUVだ。米国で実施された航続距離テストでは、高い効率性を披露した。

カイエン エレクトリックのパワートレインは、ポルシェとアウディが共同開発した「PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」の進化版がベース。800Vアーキテクチャの導入により、高い充電性能、インテリジェンスなエネルギー配分を実現した。

WLTP複合サイクルによる航続距離は600km超を予定。新開発の駆動システムと高効率バッテリーを組み合わせたことで、カイエン エレクトリックは日常域と長距離走行に対応した航続性能を手にした。今回、限られたジャーナリストが数名、量産前のプロトタイプ車両を用いて高速道路航続テストを実施した結果、法定最高速度(70mph=113km/h)のもと、1回の充電で350マイル(563km)以上を走破した。

ポルシェAGのR&D担当取締役を務めるミヒャエル・シュタイナーは、カイエン エレクトリックについて「カイエン エレクトリックによって、我々は電動パフォーマンスを新たな次元へと引き上げます。革新的な高電圧システムは、最大限の効率とポルシェらしいドライビングダイナミクスの両立を実現したのです」と、胸を張る。

コンパクトな機能統合型高電圧バッテリー

「ポルシェ カイエン エレクトリック」の機能統合型バッテリー。
113kWh容量を持つコンパクトな機能統合型高電圧バッテリーは、車両構造に直接統合されており、ボディの構造部材としても機能する。

カイエン エレクトリックの中心にあるのは、113kWhという総エネルギー容量を持つ機能統合型高電圧バッテリー。バッテリーセルは車両構造に統合されており、エネルギー貯蔵に加えて、ボディの構造部材としても機能する。その結果、重量とパッケージングの両面で大きな利点をもたらし、第2世代タイカンのバッテリーと比べ、セルとバッテリーケースの比率が12%もコンパクト化された。

バッテリーの車体構造への統合はボディ剛性を高め、さらに重心も低下。これにより、ドライビングダイナミクスとハンドリング精度が、従来の電動モデルと比較して大幅に向上することになった。さらに、バッテリーは俊敏なハンドリングにも寄与。バッテリーモジュールには特別に開発されたアルミプロファイルを採用しており、衝突時にエネルギーを計画的に吸収し、セルを保護する機能も備えられている。

最大のエネルギー密度と充電性能を得るため、ポルシェは6つの交換式モジュールと192個の大判パウチセルを備えたリチウムイオン・バッテリーを採用。このセルは黒鉛&シリコン負極とニッケル・マンガン・コバルトアルミニウム(NMCA)正極で構成される。

ニッケル含有率を86%と高くすることで、最大レベルのエネルギー密度を確保し、負極のシリコンによって急速充電性能が向上。アルミニウムはセル構造の剛性を高め、、現行タイカンのバッテリーと比べてエネルギー密度は7%も向上し、同時に充電効率も改善された。

大型家庭用冷蔵庫約100台分の冷却性能

「ポルシェ カイエン エレクトリック」の機能統合型バッテリー。
カイエン エレクトリックに導入されるデュアル冷却システムは、大型家庭用冷蔵庫約100台分に相当する冷蔵能力を持つ。

今回、高電圧システムに導入されるのが、上面と下面の両側からバッテリー温度を制御する革新的な冷却システム。このデュアル冷却により、温度域を精密に管理することで、天候・充電出力・走行スタイルに左右されず、常に最適な範囲で作動することが可能になった。冷却能力は大型家庭用冷蔵庫約100台分に相当するという。

こちらも初採用となる省エネ型プレス(加圧)ファンは、従来の吸引ファンに比べて約15%少ないエネルギーで作動。これにより、充電時の高出力を安定して維持しつつ、パフォーマンスを高く保ち、エネルギー損失を最小化する。

新開発の「予測型サーマルマネジメント(熱管理)」は、車両の全冷却・加熱回路を統合。温度・ルート・走行プロファイルを常時解析し、エネルギーの流れを先まわりして制御する。走行中、ナビ情報・地形・交通状況・運転スタイルを考慮しながら、必要な加熱・冷却量をリアルタイム算出。バッテリーを常に最適温度に保つことで、最大充電速度・寿命・航続安定性が確保された。

非接触式充電テクノロジーを新たに導入

カイエン エレクトリックから、ポルシェは一体型フロアプレートした、「ポルシェ・ワイヤレス・チャージング・システム」を導入する。
カイエン エレクトリックから、ポルシェは一体型フロアプレートした、「ポルシェ・ワイヤレス・チャージング・システム」を導入する。

カイエン エレクトリックは充電性能においても、新たな基準を打ち立てる。最大400kWの充電に対応し、バッテリー容量の10〜80%までを16分間未満で充電できる。さらに10分間の充電で300km以上の航続距離を手にすることも可能になった。

2026年から、ポルシェは新たに「ポルシェ・ワイヤレス・チャージング・システム(Porsche Wireless Charging system)」をカイエン エレクトリック向けに初導入する。これは11kWのワイヤレス充電システムとなり、コンパクトな一体型フロアプレートを使用する。

この非接触式充電技術は、有線AC充電に匹敵する効率(最大90%)を実現。車両をプレート上に停車すると自動的に検知し、車高をわずかに下げて充電状態に入る。充電は数cm離れた空間を介して誘導的に行われる。

「機能統合型バッテリー、両面冷却コンセプト、予測型熱管理は、ポルシェがいかに包括的にテクノロジーを考えているかを示すものです。我々のターゲットは、ポルシェにふさわしい電動化、つまり効率的で力強く、かつ走って楽しいBEVを実現化することでした」と、シュタイナーは付け加えた。

ポルシェは、2025年末に発表される「カイエン エレクトリック」のインテリアを公開した。

EVカイエンに導入されたポルシェ史上最大サイズのディスプレイ「フローディスプレイ」とは?

ポルシェは、2025年末にワールドプレミアを予定している新型フル電動SUV「カイエン エレクトリック」の、インテリアを公開した。カイエン エレクトリックは、ポルシェ史上最大のディスプレイサイズを誇り、新たなデジタル操作コンセプトが導入される予定だ。