
UDトラックスの「クエスター(Quester)」は、新興国市場を中心に展開されている大型トラックで、日本の技術をベースにしながら、ボルボ・グループといすゞ自動車という二つの大手メーカーの影響を受けて発展してきたモデルだ。もともとUDトラックスは日産ディーゼル工業として長い歴史を重ねてきたメーカーで、2007年にスウェーデンのボルボ・グループに入り、2010年に現在の社名に変更された。この時、ボルボの品質管理や設計ノウハウを取り入れた成果として、2013年にタイで発表された、世界基準の信頼性と耐久性を備えたトラックが「クエスター」だ。

「クエスター」は東南アジアやアフリカ、中東など、道路環境が厳しく整備体制も十分でない地域でも安心して使えるよう設計されている。4×2から8×4まで多様な車型があり、長距離輸送から建設、資材運搬まで幅広い用途に対応する。エンジンは高出力でありながらも燃費性能を重視した設計が特徴で、トランスミッションにはUDトラックス独自の自動マニュアルトランスミッション「ESCOT(エスコット:Easy / Safe COntorolled Transmissionの頭文字)」を備えてスムーズな走行を実現している。

2021年にはUDトラックスがいすゞ自動車のグループに加わったため、現在はボルボ・グループ時代の技術にいすゞの技術が融合した形で進化を続けている。つまり「クエスター」は、日本のUD、スウェーデンのボルボ、そして日本のいすゞという3社の強みが重なり合い、信頼性・燃費・整備性を高い次元でバランスされた“国際派”トラックであり、成長市場を支えている実務的なトラックなのだ。ちなみに2024年からはいすゞでも、「クエスター」をベースにした兄弟車とも言える海外市場向けトラックの「S&E」シリーズが製造販売されている。
日本では見ることのないトラックだけに、『ジャパンモビリティショー2025』のいすゞ/UDトラックス・ブースで展示される「クエスター 2026年モデル」はマニア的にはぜひ見ておきたい1台だ。
