9月末、第5戦の公式練習日、HT・DUNLOP・85は横転したうえに火災に見舞われていた。

10月25、26日の週末、オートポリスで「2025グランツーリスモD1GPシリーズ」の第7戦、第8戦が開催された。しかし、ちょっとだけ話は9月にさかのぼる。エビスサーキットで開催された第5戦の前日公式練習で、広島トヨタ team DROO-PのHT・DUNLOP・85(AE85)は、横転クラッシュし、火災まで起こしていた。ドライバーに大きな怪我はなかったが、大破した車両を見た松岡監督は、もうこのクルマはあきらめようと思った。しかし、ファンはこれまで何度もチームDROO-Pが大クラッシュから車両を復活させてきたことを知っている。その日のうちから、チームDROO-PのSNSにはファンから「AE85を復活させて!」というコメント、DMが相次いだ。そこで松岡監督の心は決まった。「オートポリスまでに直す!」と宣言したのだ。

工場にもどった翌日には、車両はフレーム修正機に乗った。ロールケージは生きていたが、バルクヘッドの前やリヤセクションは大手術を受けた。エンジンルームは火災のダメージを受けていたので部品はほとんど交換。エンジンもいちど開けて組み直された。協力メーカーがすぐに部品を供給してくれたこともあり、オートポリスへ移動する前日にマシンは仕上がった。

復活したAE85。新調された外装は、石川のGR86とおそろいのカラーリングが施された。

第7戦オートポリス。ダンロップ勢は、広島トヨタ team DROO-Pの2台、そして“のむけんJr.”野村圭市が駆るURAS RACINGのDUNLOP CUSCO SKYLINEの3台とも、そろって出走できることになった。

前戦で三度のミッショントラブルを起こしていた野村の車両は、エンジンをあらためてまっすぐ載せなおし、プロペラシャフトを作り直し、リヤまわりもデフが動きにくいように補強を入れて対策してきた。また、エンジンも3.4Lから3.6L仕様のものに交換してきた。

前日の練習日には、まだクラッシュ&火災のダメージがあったのか、松川車がエンジンブローを起こしてエンジン載せ替えを行ったものの、その他の2台に大きなトラブルはなく、第7戦の本番を迎えることになった。

駆動系をしっかり対策してきたことで、野村の車両のミッショントラブルは再発しなくなった。

第7戦は土曜日に行われた。路面コンディションはドライ。気温もそれほど低くない。単走決勝、ダンロップ勢ではまず松川が出走した。松川は振り出しから大きな角度をつける進入を見せたが、その先がいまひとつ決まらず、2本とも通過指定ゾーンを外してしまう。石川は1本目にいい飛び込みを見せたが、その先で流されてしまい、振り返した先でコースリミット超過。2本目はドリフトが小さくなって1コーナーでインカットしてしまったほか、やや振り返しがおとなしくなり、得点が伸びなかった。

復活したAE85で単走を走った松川。前戦のクラッシュのトラウマもないようで、大きな角度をつけて進入していた。

野村は鋭い振り返しを見せたものの、やはり2本とも通過指定ゾーンをとりきれずに減点が入り、単走敗退。松川は30位、石川は31位、野村は22位で追走進出を逃した。

朝のチェック走行ではいい得点を出していた石川、「朝の練習は昨日のダメな部分を改善して、よくなったんですよね。これはいい流れやと思ったら、本番は同じように行ったらぜんぜん路面コンディションがちがいました。Cグループやったんで、そこまで見ていて『みんなミスっとるやん。オレはミスらんとこう』と思ったら、オレもまあまあなミスしましたね。練習と同じとこで振り出しても奥に流れるし、そう思って、ちょっとだけ手前にしたらインについちゃうし、むずかしかったです」とコメントした。

本番の路面状況にとまどったという石川。この日はほかにも練習より大きく得点を落とした選手も多かった。

そして第8戦は第7戦の翌日に同じコースで開催された。前日の夜からオートポリスは濃霧に包まれ、朝のチェック走行では路面はウエットの状態だった。そこからしだいに乾いてきたものの、ウエット路面も部分的に残っていたため、単走決勝では、全体の上位16名ではなく、4つの走行グループの上位4名ずつが追走に進出する方式で行われた。

ダンロップ勢ではまず石川が登場。ゾーン2を少し外したものの、鋭い振り出しから大きめの角度で姿勢を決めて1コーナーを旋回し、95.95点というまずまずの得点をマーク。グループ3位で追走進出を決めた。松川と野村はともにDグループで出走。松川は進入ではいい角度を見せたものの、振り返したあとのコーナー後半で角度が浅くなってしまい、点が伸びず、野村は2本目にキレのある振り出しと振り返しを見せたものの、ゾーン2からゾーン4で減点を受けてしまって、ともに追走進出はならなかった。

得点は低かった野村だが、振りや安定感は良好で、減点前のベース点では高いDOSS点を獲得していた。

野村は、「動きはよかったと思います。フィーリングはすごいよかったですね。でもゾーンが逃げていきました(苦笑)。気持ちよくは走れてたけど、ダメでしたね。でも今日は路面がいろいろ変わる状況でしたけど、DIREZZA β02のグリップは安定してました。朝のハーフウエットは、滑るところもグリップするところもあって、ほんとにむずかしい路面だったんですけど、そこでもちゃんとコントロールできてました。今回は残念でしたが、次のお台場は魅せます! 期待しててください」と語った。

クルマの動きには手応えを感じている野村。あとはゾーンを押さえるだけだ!

その日の午後に追走トーナメントが行われた。石川はベスト16の最後で現在シリーズ2位の藤野と対戦した。筑波での第3戦では勝利しているが、エビスでの第6戦では敗れている、今季1勝1敗の相手だ。1本目は藤野が先行。石川は同時振りでコーナーに進入したが振り返しでやや離れてしまった。石川が3.3ポイントのリード。2本目は石川が先行。今度は藤野に同時振りで合わせられ、石川自身もややラインが小さくなってインカットやゾーン外しの減点を喫し、逆転を許してしまった。石川はベスト16敗退。第8戦の順位は12位だった。

石川は進入では先行の藤野をとらえていたものの、そのあとで離され、前戦のリベンジはならなかった。

大会後、チームDROO-Pの松岡監督は、「まず松川が、あの角度のつけかたをし始めたっていうのは収穫だし、石川も2戦連続で藤野と対戦して、ストレートはすっかりついていけるようになってきた。タイヤの使いかたをだいぶ覚えてきたね、次のお台場に向けては明るい材料がいっぱい出てきたと思います。石川の後追いはもう紙一重なんでね。ただ、まだちょっと戦える走らせかたの幅が狭いんで、そこがもうちょっとワイドに対応できるなにかを見つけ出せればぜんぜん変わってくると思う。そのへんの解決方法をこれから見いだして、戦闘力アップにつなげていきたい。

今日、朝のチェック走行のときはウェットでしたけど、ウエットなら勝ってましたね! ほかの選手の走りを見ててもタイヤスモークが出てたのはダンロップの3台だけだったので、この路面がいいなぁっていってたんですけど、そうはいきませんでした(苦笑)。

次はお台場ですけど、トータルでいまクルマがすごくいいって石川も言ってるんですよ。だから、このまま行って、あとは現地に入ってから微調整くらいで本番を迎えれると思います。ドライはもちろん、雨でダンロップのすごさを見せたいですね。

エビスでAE85がひっくり返ったときは不幸のどん底でしたけど、あの後でね、すごい、いろんないい流れが来ている。だから、必ず次のお台場につなげられるって期待してもらっていいと思います!」と語ってくれた。

石川車も松川車もお台場は得意だという松岡監督。最後の2連戦は期待できそうだ。

2025グランツーリスモD1GPシリーズ最後の2連戦は、11月15、16日に東京・お台場の特設会場で開催。特に石川は過去に単走優勝もしているほど得意なコースだけに、いよいよ初優勝を期待したい!