「BOOSTモード」って、どれぐらいパワーアップしますか?

ホンダ・スーパーワンプロトタイプ

本日2025年10月29日にプレスデー初日を迎えた「ジャパンモビリティショー2025」(10月31日(金)〜11月9日(日)まで一般公開)。東4ホールにブースを構えるホンダが世界初公開したモデルの1台、「スーパーワンプロトタイプ」の開発を指揮した堀田英智(ほりたひでとも)ラージプロジェクトリーダー(LPL/開発責任者)に直撃インタビュー!

ホンダ・スーパーワンプロトタイプの開発を指揮した本田技研工業の堀田英智LPL


−−スーパーワンの開発は、ベース車であるN-ONE e:の開発と同時にスタートしたのでしょうか?

堀田さん 具体的な開発スタートのタイミングはお答えできませんが、我々はこれを「EVシリーズ」ということで、軽自動車を中心としたBEVを開発するにあたって、「面白い商品ができないか」と模索しながら進めていたのは事実です。

−−ベース車に対するモディファイの範囲が非常に広く感じられますが、量産化で苦労した点はありますか?

堀田さん 開発してお客様に届けるにあたっては、生産工程での熟成は当然しています。今回の特に大きな変化点であるオーバーフェンダーや、前後のバンパーに関しては、従来技術の中でしっかり熟成しています。

−−フロントのオーバーフェンダーはN-ONE e:と全く別物でしょうか?

堀田さん はい、そうですね。

ホンダ・スーパーワンプロトタイプのフロントまわり

−−リヤドアの部分は上から貼り付けているのでしょうか?

堀田さん リヤドアはN-ONEをベースにしていますが、オーバーフェンダーの張り出し感を出すために、一部パーツを貼り付けていますね。

ホンダ・スーパーワンプロトタイプのリヤまわり

−−N-ONE e:に対し前後トレッドはどのくらい広がっているのでしょうか?

堀田さん すみません、具体的な数値はお答えできませんが、走りを楽しめるくらいの幅にはなっています。

−−スーパーワンは完全に軽自動車枠ではなく登録車枠になるんですよね?

堀田さん そうですね。

ブリスターフェンダー装着とともに拡幅された前後トレッド
フロントとリアに配置したエアダクトを含む専用設計のエアロデザインにより、空力性能の向上と冷却効率の確保を両立している

−−サスペンションで車高は下がっていますか?

堀田さん これも具体的にはお答えできないんですが、サイドシルのガーニッシュで低く見せるデザインにしています。

サイドシルガーニッシュが車高を低く見せるのに寄与。

−−タイヤの外径が大きくなっているんでしょうか?

堀田さん そこも具体的にお答えできないんですが(苦笑)、拡幅するにあたって走りに必要なタイヤサイズにしていますね。

−−「BOOSTモード」をONにするとパワーアップするとのことですが、どのくらい上がるのでしょうか?

堀田さん 具体的な数字は今はお答えできませんが、元々軽自動車が持っている47kW規制よりもアップできるようにしています。それを専用モードとして設定することにより、お客様に楽しい走りを体感していただけるように設計していますね。

−−「BOOSTモード」をONにするとエンジン車のようなフィーリングが楽しめるそうですが、これは「Honda S+ Shift」と同様のものと考えてよいのでしょうか?

堀田さん 技術としては「Honda S+ Shift」を少し活用していますが、BEVにはエンジンがありませんので、BEVとして持っているモーターを少し工夫しながら、そういった演出をしています。

−−「Honda 0 TECH MTG」で同様のものを体験しましたが、その市販版でしょうか?

堀田さん あちらはこの先のBEV化の時代の中で、どうすればお客様に楽しんでいただける演出ができるかというスタディモデルです。「BOOSTモード」は、昔懐かしいエンジンサウンドを楽しんでいただくか……といったものですが、その技術を一部採用しています。

N-ONE e:をベースとしながら全体的に派手さが抑えられたクールな運転席まわり

−−走りのチューニングは?

堀田さん そこもお答えできない部分があるんですが(苦笑)、必要な足回りのセッティングや、加速した際のサスペンションのチューニングはしていて、N-ONEよりもキビキビ山道を走れるよう、少しスポーティな味付けにしてます。

−−駆動用バッテリーは…。

堀田さん シリーズ開発ですので、そこはお察しいただければ。

期間や台数限定販売ではなく、普通に販売します。

−−スーパーワンのデザインコンセプトは?

堀田さん 50〜60歳の男性を中心としながら、その息子さんと一緒に楽しんでもらいたい…というような、スポーティなところからスタートしています。その際に、N-ONEの可愛らしさよりも、少し尖った印象を出したかったのは事実です。スポーティというと、ブリスターフェンダーだったり、アシンメトリーなデザインだったりしますね。

−−モディファイの範囲が広いので、限定販売になるのかもしれないと想像しました。

堀田さん 期間や台数を限定することなく、普通に販売させていただこうと考えています。

−−最後に、N-ONEシリーズ元来のガソリン車の進化について、教えて下さい。

堀田さん N-ONEはご愛用いただいている方がたくさんいまして、愛着のあるデザインが女性の方にも響いています。ですので我々の中では、ガソリン車もカラーの追加などをしながら、しっかり商品強化していきたいと思っています。

−−N-ONE e:やスーパーワンに採り入れられたモディファイがガソリン車の方にフィードバックされることはあるのでしょうか? 例えばフロントシートなど…。

堀田さん シートはEVとして専用開発しているので、それがガソリン車に反映されるかというと、来年すぐにはないです。ただし技術的には充分活用できる状況になっていますので、どのタイミングでどういうものを商品に入れていくかは、弊社の中でも議論していますね。

−−N-ONEのファミリー全体がどんどん広がって、進化をしていく、と。

堀田さん N-ONEというよりは、ホンダが持っているNシリーズを、それぞれ商品の方向性が違うものに対して、少しずつラインアップを拡充させながら進化していく、というイメージですね。

−−Nシリーズ全体の進化の広がりを楽しみにしています。ありがとうございました!