■ジュークに“ターボ+4WD“を装備した高性能モデルを追加

2010(平成22)年11月2日、日産自動車は同年6月にデビューしたコンパクトなクロスオーバーSUV「ジューク」に、“ターボエンジン+4WD”の高性能モデルを追加した。4WD(ALL MODE 4×4-i)は、状況に応じて前後輪に適正なトルクを配分する、いわゆるスタンバイ方式の4WDである。
斬新なコンセプトとスタイリングで注目を集めたジューク
コンパクトなクロスオーバーSUV「ジューク」は、2010年6月にデビューした。ジュークのコンセプトは、“コンパクトスポーツとSUVの融合”であり、それを象徴したのが斬新なスタイリングだ。

大きなフェンダーと丸みを帯びたボンネットに異径4灯ヘッドライト、ブーメラン型のリアランプなど、コンパクトながらボリューム感のあるフォルムが圧倒的な存在感を放った。インテリアについても、運転者がワクワクするようにメカニカルかつスポーティに仕上げられた。

パワートレインは、世界初のデュアルインジェクター(1気筒あたり2本のインジェクター)を組み込んだ最高出力114ps/最大トルク15.3kgmを発生する1.5L 直4 DOHCエンジンと副変速機付CVTの組み合わせ。駆動方式はFFのみが設定された。
斬新なスタイリングや車両価格169万円(15RS)/179万円(RX)というリーズナブルな価格設定によりジュークは人気を集め、発売1ヶ月で約1万台の受注を記録して順調に滑り出した。
ターボ+4WD化で走りに磨きをかけたジューク

順調に滑り出したジュークは、さらなるモデル展開や商品力強化を図った。同年11月のこの日、よりスポーティな走りを追求した新開発のターボエンジンを搭載した「16GT」と「16GT FOUR」が追加された。


エンジンは、排気量を1.5Lから1.6Lに拡大して最高出力190ps/最大トルク24.5kgmを発揮する1.6L 直4 DOHCインタークーラーターボを搭載し、6速マニュアルモード付電子制御CVTが組み合わされた。ターボエンジンは、直噴システムと高効率ターボを組み合わせ、さらにCVTC(可変バルブタイミング機構)を吸気側だけでなく、排気側にも搭載。これらの効果によって、力強い加速と俊敏なレスポンス、優れた燃費性能が実現できた。

駆動方式は16GTが2WD(FF)、16GT FOURには電子制御式4WD“ALL MODE 4×4-i”が採用された。ALL MODE 4×4は、状況に応じて前後輪に適正なトルクを配分する、いわゆるスタンバイ方式の4WD。通常は前輪で走行し、前輪が滑り出すと瞬時に後輪に適切なトルク配分を行なう。これにより、雪道などの滑りやすい路面でも空転せずに安定した走行ができるのだ。対するALL MODE 4×4-iは、ハンドル操作や車両挙動など、より高度なセンシング情報を利用して、高精度にトルク制御を行なうALL MODE 4×4の進化版なのだ。

車両価格は、218.925万円(16GT:2WDターボ)/245.175万円(16GT FOUR:4WDターボ)。順調な販売を続けていたジュークだが、ライバルの登場もあり、人気は徐々に低下傾向となった。日本の実用性重視の市場では、個性的で魅力的なスタイリングも室内や荷室空間が狭いことが人気の足かせになったようだ。

2代目は日本では販売せず、e-POWER専用車キックスにバトンを渡す

ジュークは2019年に2代目へモデルチェンジした。パワートレインは、117psの1.0L 直3 DOHCターボを搭載した欧州で人気のダウンサイジングターボコンセプトを採用し、スタイルもよりスポーティになった。しかし、2代目ジュークは人気の高かった欧州や豪州には展開されたが、人気が減速した日本では販売されなかった。欧州では、実用性よりもパーソナルユースを重視するユーザーがまだ多いのだ。

日本でジュークの後を引き継いだのは、2000年に登場したe-POWER専用車のコンパクトなクロスオーバーSUVの「キックス」であり、コンパクトながら余裕の室内空間を実現して、燃費性能と力強い走りを両立させた。キックスも順調に滑り出したが、コンパクト・クロスオーバーSUVは現在日本市場では激戦区であり、苦戦を強いられている。

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尖がったスタイリングで人気となったがジュークだったが、実用性にも優れてハイブリッド車も用意したホンダ「ヴェゼル(2013年~)」やトヨタ「C-HR(2016年~)」の登場がジューク人気低迷の一因となったと思われる。ジュークは、昨今のファミリー志向のSUV市場では、マイナーでマニアックな存在になってしまったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
