階段を登れる、四本脚で歩く新感覚モビリティ

トヨタwalk meは階段を登ることもできる

「センチュリー」のブランド化、スタイリッシュに大変身した次期カローラなど話題には事欠かないトヨタグループ。その中で、筆者がひときわ注目したのが、まさに「歩く車椅子」といえる新感覚モビリティだった。

その名前は「walk me」。ターゲットは足の不自由な方や、足腰の弱った高齢者だ。

車椅子のウィークポイントである階段を、気軽に昇り降りできるパーソナルモビリティとして生まれたという。とくに古い日本家屋では階段が狭いことも多く、そうした階段をスムースに昇り降りするために4本の脚で移動するというアイデアが生まれたということだ。

開発者によれば、車椅子のウィークポイントはまだまだある。真横に動くのが難しい点もあげられるが、walk meはそうした悩みを解決することもできる。

具体的なシチュエーションを挙げれば、足の不自由な方が台所で料理を作っている場合、包丁で刻んだ食材を、鍋に投入するといったシーンにおいて、いったん後方に下がって移動していることが多いのだという。4本の脚で自由に動けるwalk meであれば、そのまま真横に移動して、スムースに調理を進められるはずだ。

walk meの脚部は伸びたり縮んだりすることで座面の高さを変えることができる。もっとも上のポジションにすると、立ち姿勢と同じくらいの高さとなる。台所仕事でいえば、シンクで皿を洗うといったときにも適切な高さで作業することができるという。

逆に、脚部をおりたたむことで座椅子くらいの高さまで座面を下げることもできる。自由自在にポジションを変えることができるのだ。

家の中での移動における車椅子のウィークポイントを解決するパーソナルモビリティであり、高齢化が進む日本市場では、そのニーズも高まりそうだ。

座った状態のTOYOTA walk me

ちょこちょこと歩く姿が単純にかわいい

ただし、筆者がwalk meに着目したのは、そうした社会課題を解決するソリューションとしてだけではない。

4本の脚で歩く様子のデモンストレーションをしている様子が、とにかくかわいいのだ。

階段を昇り降りするときはヒザに当たる関節を大きく曲げるようだが、平坦な環境では股関節に当たる部分を動かして移動する。そのちょこちょことした動作は、機械でありながらどこかキュートだ。

家庭内で利用するモビリティとしては、こうしたフレンドリーさは重要なファクターといえるだろう。

現時点では、移動するときに座面が揺れるように見えるため、水平を維持する機能の追加が必要にも見える。このように、足腰の弱い方が座るにはカイゼンすべき点もあると思うが、段差をものともせずに移動できるパーソナルモビリティとしての可能性を大いに感じさせられた。

座ったままクルマに乗り込み、そのまま運転席になる!

walk meのドライビングモード

自動車メーカーらしいのは、walk meに座ったままクルマに乗り込めることも考えている点。しかも、運転席として機能することも想定されている。

足腰の弱った方や、足の不自由な方こそ自由な移動権を求めている。

そうしたニーズを実現するソリューションを提供することは「TO YOU TOYOTA」をキャッチフレーズとするトヨタらしい。

コンセプトカー「KAYOIBAKO」のスロープ仕様

今回の展示では商用車「KAYOIBAKO」のサイドスロープ仕様とwalk meのコンビネーションによる提案も展示されていた。

また、walk meがそのまま乗り込めるクルマとのセットで考えれば、足腰が弱ってもドライバーとして仕事ができるかもしれない。

そこまでして労働しなければいけない社会もどうかと思う部分もあるが、労働人口が減っていく日本の課題を解決するためには、機械によって体力をカバーするというのもアプローチのひとつであるだろう。

はたして、walk meがリアルワールドに飛び出す日がいつになるのかは、まったく予想できないが、こうしたパーソナルモビリティが実現すれば、よい過ごしやすい社会になることは間違いない。一日も早い実用化を期待したい。