
コンチネンタルタイヤはドイツを本拠地とするだけに、「スポーツコンタクト7」を含むその製品の多くがヨーロッパを主眼に設計されている。だが「ウルトラコンタクトUX7」は、アジアパシフィック地域特有のニーズを汲んで開発されたタイヤなのだという。

果たしてヨーロッパ向けのタイヤとアジアパシフィック地域向けのタイヤとで、何が大きく異なるのだろうか? 技術サービス&トレーニングマネージャーの小川直人さんに聞くと、こんな答えが返ってきた。
「ヨーロッパ向けのタイヤは安全性、特に直進時の排水性が重視されます。ドイツでは豪雨の中を200km/hで走れる道路が存在するため、大人の男性の指がスポッと入るほど太い主溝が入ることが多いですね。その代わりにノイズは多く出る傾向にあります。一方、アジアパシフィック地域、とりわけ日本向けのタイヤは、静粛性と乗り心地に関しては譲れないですね。もっとも、合法的に200km/hで走れる公道が存在しないので、直進時の排水性はある程度犠牲にできます」

そうしたことから「ウルトラコンタクトUX7」は、音波を分散しノイズの蓄積を防ぐ微細な凹凸「ノイズブレーカー3.0」を主溝の中に入れることで、車内に伝わる振動やノイズを低減。またスチールベルトをより密にすることで路面からの衝撃を吸収しつつ、サイドウォールのカーカスの強度を高めることで、中国の郊外などに多い砂利や岩などによる裂傷=パンクのリスクを抑えている。

だが、ウェット路での排水性をおろそかにしているかといえば、実際はその逆だ。4本の主溝はいずれも太く、かつ各ブロックの面積が大きいトレッドパターンを採用。またお互いに結合して塊になりやすい傾向にあるシリカを混ざりにくくする生産技術を用いた「アダプティブ・ダイヤモンド・コンパウンド」によって、ドライ・ウェット路ともグリップを向上させた。

その結果、従来モデルにあたる「ウルトラコンタクトUC6 SUV」との比較では、静粛性とウェットブレーキング性能が特に大きくアップ。そして、「大きく重いバッテリーを搭載、モーターが大トルクを発生、指定空気圧も高めに設定される電動SUVにも対応できる、バランスの良いタイヤになりました」と小川マネージャーは胸を張る。

では、実際の走りはどうか。テスト車両として用意されたのは、トヨタ・ハリアーハイブリッドで、タイヤサイズは235/65R17 108V XL。路面はセミウェットだった。
デビュー直後に225/55R19 99Vタイヤを装着する車両に試乗した際は、概ねすべてにおいてそつがなく、モーター走行時の静粛性も高い一方、人工的なステアフィールに終始する、という印象だったと記憶している。
しかし、「ウルトラコンタクトUX7」を装着した今回のテスト車両は、そんな「そつがない」走りのレベルが一段階レベルアップしたものだった。

富士スピードウェイの構内路は、アップダウンやコーナーの大小はもちろん、凹凸やひび割れもバリエーション豊かで、今回のようにごく限られた試乗時間の中でもクルマやタイヤの特性が比較的分かりやすい。
まず低速でAパドック内を走行すると、大小問わず路面の凹凸を綺麗にいなし、かつ衝撃のピークを上手く丸め込んでいるのが体感できる。
その後構内路へ出ると、偏平率65%の17インチタイヤにもかかわらず、下りのタイトコーナーでもサイドウォールが腰砕けになる兆候は見られず、かつ舵角も一定のまま安心して走れる。タイヤの接地感もステアリングにしっかり伝わってくるため、ドライとウェットが入り混じった路面コンディションの中でも
そしてウェット路、またハイブリッドカーではむしろ目立ちやすいタイヤノイズも、一段と押さえ込まれている印象。粗粒路でのロードノイズ・パターンノイズ、大きな凹凸でのドラミングノイズとも少なく、終始快適な走りを楽しめた。

ではもう一つのスポーツコンタクト7はどうか。テスト車両はメルセデス・ベンツCLE 200クーペスポーツ(ISG)。タイヤサイズはフロントが245/35R20 95Y XL、リヤが275/30R20 97Y XLだった。


テスト車両にはオプションの電子制御ダンパーや後輪操舵機構が20インチアルミホイールとともに装着されていたこともあり、やや不自然にクイックなステアフィールと、大きな凹凸でのやや強い突き上げを、否応なしに感じさせられたというのが率直な本音。
だが、旋回時に舵角を当てすぎたり、修正舵を入れたりすることはなく、意外にも操りやすい印象。また突き上げも、そのピークは丸められているため、首や腰に堪えるほど不快ではなかったことは、付け加えておきたい。

そして、ドライ・ウェット路を問わず豊富なグリップとステアリングインフォメーションは「ウルトラコンタクトUX7」以上の水準。
ターゲットとする装着車両の性格や市場に合わせ、重視する性能はタイヤの銘柄ごとに変えるものの、全体的には特定の性能のみを極端に尖らせることなく、あくまでもバランスを重視したタイヤ作りを志向する。そんなコンチネンタルタイヤの真価を垣間見る試乗となった。

