■カスタマイズ前提のネイキッド

1999(平成11)年11月4日、ダイハツはカスタマイズすることを前提にしたユニークな軽セミハイトワゴン「ネイキッド」を発売した。ネイキッドは、クルマを道具として捉え、ユーザーが自分の好みでカスタマイズできる着せ替え感覚の斬新なコンセプトの軽自動車である。
ユーザーが自分好みに仕立てられるネイキッド

1999年11月のこの日、“裸の、剥き出しの”という意味を持つ車名の「ネイキッド」がデビューした。開発テーマは“大人の遊び道具”、不要な飾りを無くしてユーザーが簡単に好みのスタイルに変えられる、ユーザーが自由にカスタマイズできることが最大の特徴だ。

外観は見るからにユニークで、丸型ヘッドライトを採用した直線基調のボクシーで武骨なスタイリングで、ドアのヒンジをあえて露出させるなど機能優先。パワートレインは、最高出力64ps/最大トルク6.5kgmを発揮する660cc直3 DOHC、64ps/10.9kgmのそのターボ仕様の2種エンジンと、5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式はFFと4WDが用意された。

ネイキッド(裸の)という車名だが、実用性については十分に配慮され、パワステ、パワーウインドウ、エアコンが標準装備され、ハイグレードを選べばデュアルSRSエアバッグ、プライバシーガラス、キーレスエントリーなどが追加できた。


車両価格は、91.9万円~160.7万円に設定。当時の大卒初任給は19.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約108万円~221万円に相当する。
ネイキッドでどんなカスタマイズができる

ネイキッドは、実用性については十分な配慮が図られていた。地上高490mmの超低床フロア、余裕の最大室内高1260mm、またシート座面は前後席とも620mmとしてスムースな乗降性を実現。さらに、左右独立の後席は折り畳むだけでなく簡単な操作で脱着でき、後席を外せば自転車がそのまま搭載できるスペースが確保された。

外装のバンパーコーナーやグリルは、トルクスネジが露出しており、このネジを外すことによってユーザー自身でバンパーが交換可能。簡単に取り外しができるので、万一傷ついた場合でも交換できるのだ。また一部グレードではカラーパネルの着せ替えが可能で、より自由なカスタマイズができた。

一方、内装については工具箱のようなインパネデザインで無塗装風の素材を使ってDIY感を演出。Cピラー内側のトリム部には多くのネジ穴が開けられてフックが利用でき、またインナールーフサイドには突っ張り棒を差して使える穴も開けられていた。
ネイキッドは、DIY志向のユーザーに歓迎されて多くのカスタムパーツも用意された。当時としては、チャレンジングな着せ替え型モデルだったが、2003年に生産を終えた。
ネイキッドを進化させたコペンのDRESS-FORMATION

ダイハツは、着せ替えカーへのこだわりが強かったのか、2014年に登場した2代目「コペン」では、ボディパネル各部を交換可能な“DRESS-FORMATION”という着せ替えコンセプトを採用した。

2代目コペンは、樹脂製のボディパネルを脱着できる構造とし、フロントバンパー、リアバンパー、ボンネットフード、トランクフード、フロントフェンダー、リアフェンダー、ドアパネル、サイドシルの計12ヶ所を自由に選ぶことができ、購入後も着せ替えができるというユニークなシステムである。

ちなみに、1986年には日産からクーペとワゴンに着せ替え出来る2代目「エクサ」が登場したが、日本ではボディの外形変更は別車種扱いになるため、同一車両での載せ替えはできず、クーペとキャノピーのどちらか一方を指定して購入するしかなかった。
2代目コペンが採用したDRESS FORMATIONは、車体の形状が変わらないので車検証の記載変更が不要なため交換可能となったのだ。
・・・・・・・・・
ネイキッドは、元祖着せ替えカーとしてユーザーが自ら手を加える楽しさを提供した、当時としては画期的なクルマだったが、注目を集めたものの人気は限定的だった。1999年時点では、遊び心を意識した軽自動車が今ほど脚光を浴びていなかった、またDIYがブームも起こっていなかったなど、登場が早すぎた感がある。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。


