共同開発の背景

旭化成とEAS社は、両社の技術を融合し、ドイツ連邦教育研究省の「HEADLINE」プロジェクトの支援も受け、次世代電池の開発を進めている。両社は本技術を世界中の自動車メーカーや電池メーカーへサブライセンスする取り組みにも合意しており、モビリティ分野への展開も目指している。

EAS社の超高出力リチウムイオン電池

製品性能と用途

旭化成とEAS社は、高出力で長寿命の新型リチウムイオン電池を開発した。本電池(容量22Ah)は、同じ容量でも従来の約1.6倍の出力を実現している。加速時や重機の立ち上げ時など、瞬間的に大電力が必要な場面(2秒間の高負荷放電)でも安定して高いパワーを発揮する。また、電池の寿命(充放電を繰り返せる回数)も優れており、長期間の使用でも性能が落ちにくくなった。さらに、急速充電・急速放電に対応し、内部抵抗が低いため電池の発熱(エネルギーロス)を抑え、エネルギー効率が向上した。

製品性能まとめ

  • 従来比約1.6倍の出力を達成
  • 瞬間的な高負荷放電にも安定して対応
  • 優れた電池寿命
  • 急速充電、急速放電に対応
  • 発熱やエネルギーロスを抑えた高効率設計

旭化成が長年の知見と技術力を活かして開発した高いイオン電導性を持つ電解液により、電池内部の抵抗が低減され、パワーが必要な場面でも安定した出力を維持する。これにより、船舶、鉄道、建設機械など、過酷な環境で高い信頼性が求められる分野での活用が期待される。

本技術の特長

旭化成は、30年以上にわたりリチウムイオン電池の研究開発を続けている。2010年から超イオン伝導性電解液の開発を進め、名誉フェローの吉野彰がアセトニトリルの有用性に着目。2024年6月には、超イオン伝導性電解液を用いたリチウムイオン電池のコンセプト実証(PoC)に成功している。本技術は、溶媒にアセトニトリルを含むことで既存の電解液では実現困難な高いイオン伝導性を有しており、独自の電解液組成調合技術と電極/電解液の界面制御技術により、現行LIBの課題である「低温下での出力向上」と「高温下での耐久性向上」の両立を実現した。また、これらは、出力向上・急速充電などを可能とし、電動自動車等における搭載電池の削減や電極の厚膜化による電池の容量アップおよび低コスト化に貢献する。