カーボンニュートラル社会の実現に向けて、発電側では太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入、また、需要側では電動車の導入が進められている。太陽光発電の発電時間帯が日中に集中することや電動車の充電が帰宅後の夕刻に集中することにより、再エネの有効利用や特定の時間帯の電力系統への負荷集中の回避が課題とされており、今後は蓄電技術の活用や需要時間帯のシフトが不可欠となる。
このような社会課題の解決に向け、本実証では電力需要が多く電力市場価格の高い時間帯に電動車から電力系統や家庭へ電力を放電し、太陽光発電の発電量が多く市場価格の安い時間帯に充電する仕組みを構築することで、再生可能エネルギーの有効活用および電力系統の安定化への貢献が目指される。
本実証では、事業者間のシステム連携により電動車のバッテリー充電量情報や充放電制御指示をリアルタイムで連携する仕組みを構築し、さらにMCリテールエナジーがその仕組みを活用した市場連動型の電気料金プラン※5(以下、市場連動プラン)が開発された。
電動車オーナーは自宅で車両に V2G/V2H 充放電器を接続し、事前にスマートフォン専用アプリ(以下、アプリ)で希望充電完了時間と目標バッテリー充電量を設定することで、自動で設定条件を満たしながら経済的に最適な充放電制御が行われ、市場連動プランを通じて経済的な還元を受けることができる。
実証期間
2025年11月~2026年3月
実証の対象者
東京電力パワーグリッド管内において、ニチコンの V2G/V2H 充放電器の設置およびMCリテールエナジーの提供する市場連動プランに加入した一般家庭の電動車オーナー
充放電制御の仕組み
- 電動車オーナーはアプリを通じて電動車利用の志向(希望の充電完了時間や目標バッテリー充電量)を設定し、Kaluza はその志向情報を取得
- MCリテールエナジーが電力市場価格を日々取得し Kaluza へ連携
- ニチコンは Kaluza に電動車の情報を連携
- Kaluza が①②③を踏まえ、最適な充放電計画を作成
- Kaluza がニチコンを通じて V2G/V2H 充放電器へ指示(MCリテールエナジーは充放電に伴う電力供給/買取を実施)
- 電動車オーナーは最適制御により生まれた経済価値を市場連動プランを通じて享受

各社の役割
| MCリテールエナジー | ・実証に参加する電動車オーナーの募集 ・充放電制御を適用する電力プランの設計と提供 ・小売電気事業者としての電力の供給と買取、システムの開発と提供 |
| ニチコン | ・V2G/V2H 充放電器の提供 ・充放電器メーカーとしてのシステムの開発と提供 |
| 三菱自動車 | ・実証に参加する電動車オーナーの募集⽀援 ・実証対象電動車のデータ分析 |
| Kaluza | ・グローバルに活用実績のある充放電制御システムの開発と提供 ・電動車オーナー向けアプリの開発と提供 |
| Kaluza Japan | ・Kaluza によるシステムの開発⽀援 ・三菱自動車による実証対象電動車のデータ分析の⽀援 |
【注釈】
- CO2などの温室効果ガスの排出削減やクリーンなエネルギーを活用する経済・社会システムへの変革に資する GX(グリーントランスフォーメーション)関連の新たな技術やサービスの社会実装を目指す企業等への⽀援事業
- Vehicle to Grid の略で、電動車から家の需要を超え、電力系統に対して電気を放電すること
- Vehicle to Home の略で、電動車から家の需要に対して電気を放電すること
- 30 分毎に変化する電力市場価格に連動して単価が決定される電力プラン
