「何から始めればよいか分からない状態からのスタートでしたが、4カ月間の挑戦を通じて大きく成長できたと感じています」(新入社員チーム「Revs-Lab」

Revs-Labメンバー

自動運転AIチャレンジは、CASE(※1)、MaaS(※2)と呼ばれる新たな技術領域において、これからの自動車業界を牽引する技術者の発掘育成のための新たな取り組みとして実施しているもの。
予選と決勝で構成されるこの大会では、予選はオンラインのシミュレーションで行われ、決勝では各チームが開発するプログラムが搭載されたEVカートを走行させる競技を行う。
大会を通じて、コンピューターサイエンス、AI、ソフトウェアや情報処理に関わる技術者・研究者・学生等にチャレンジの場や、学習の機会を提供し、有機的な繋がりを実現する場を目指す。
※1:自動車業界の未来を左右する4つのキーワード「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェア&サービス)」「Electric(電動化)」の頭文字をとった造語
※2:「Mobility as a Service(サービスとしてのモビリティ)」の略で、複数の交通サービスを統合し、検索、予約、決済までをひとつのアプリなどで一括して行えるようにするサービス

自動運転AIチャレンジ2025は、全国の大学、研究機関、企業から249チームが参加。オンライン予選を通過した15チームが決勝へと進んだ。
決勝では、大会が用意した自動運転EVカートに各チームのアルゴリズムを搭載し、20分間の持ち時間で1周の最速タイムを競った。

同大会への挑戦の背景について、ヤマハ発動機 技術・研究本部 技術開発統括部の大達康弘統括部長はこのように述べている。
「ヤマハ発動機では、研究者が研究対象の技術と真剣に向き合うことはもちろん、技術自体を好きになって楽しむ心を獲得向上できるように、様々な取り組みを行っています。今回の挑戦もそのひとつです。これまで同大会には有志が業務外に参加してきましたが、今年は部門研修の一環として、新入社員チームを技術開発統括部全体でサポートしながら取り組むことにしました。あえて最初からレースという真剣勝負の場に挑戦し大きな成長につなげる考え方は、当社の歴史やDNAにも通じます。新入社員のみならず統括部全体で挑戦し、共に成長しあうことを目指します」

自動運転アタックの様子

同大会に出場した新入社員4名は全員、自動運転の開発は初めて。6月の配属直後にチームを結成し、基礎知識の習得からスタート。
開発ではパラメータ自動最適化(Optuna)やモデル予測制御(MPC)などの手段を用いて性能向上を図った。
その結果、シミュレーションによる予選では堂々の2位を記録。
しかし実機を使った事前練習では思うように動作せず、シミュレーションと実機との違いやロバスト性を考慮した開発の重要性を痛感することとなった。

決勝当日は雨が降ったり止んだりの不安定な天候。
スタート直前から雨脚が強まる難しい環境の中を「Revs-Lab」のカートは力強く走り抜け、ベストタイム48.687秒(トップ+1.874秒)で一般クラス3位を獲得した。
優勝は惜しくも逃したが、確かな手応えを感じる結果となった。

今回の挑戦を終えて、出場した同社 技術・研究本部 技術開発統括部 知能化研究部の木原遼さんと十河宏太さん、そして、同エネルギーマネジメント研究部の鈴木翔太さんと吉田朋弥さんは、共同でこのようにコメントしている。
「自動運転AIチャレンジへの参加は、未知の技術領域への挑戦でした。何から始めればよいか分からない状態からのスタートでしたが、4カ月間の挑戦を通じて大きく成長できたと感じています。
予選ではシミュレーターを用いて試行錯誤を重ねることにより、タイムを短縮しました。ここでは、データ解析に基づく改善や作りこみの重要性を実感しました。
一方、決勝では実機検証の機会が限られており、当日の効率的な調整が求められました。
『準備で9割が決まる』と言われて臨んだ事前練習走行会では思うような走りができず、その重要性を痛感しました。練習走行会で見つかった課題をもとに計画を立て、一つ一つ着実に解決し、“妥協することなく”すべての準備をやり切ることができました。決勝でうまく走行できた瞬間は非常に感動しました。
この後、メンバーそれぞれプロジェクトに配属され、実務がスタートします。
今回の経験を活かし、新たな感動創造に挑戦していきたいと思います」

また、サポーターを務めた同社 知能化研究部 インテグレーションデザイン1Gの西村政哉グリープリーダーはこのように述べている。
「実戦は本人たちの自力に任せ、あくまで主体的な挑戦とする方針をぶれずに貫き、開発の進め方や基礎技術の習得をメインにサポートしました。実践的な開発を進める過程で大きく成長し、好成績を収めたことを誇りに思います。サポート側にとっても今回の挑戦は良い刺激となり、全体を通して多くの学びを得ることができました」