MotoGP第21戦ポルトガルGPが、11月7日から9日にかけて、ポルトガルのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベで行われた。Moto3クラスに参戦する古里太陽(ホンダ)が、3位表彰台を獲得した。

マレーシアGP優勝に続く2戦連続の表彰台獲得

古里太陽(ホンダ)は、マレーシアGPで優勝を飾って、ポルトガルGPを迎えた。

古里は、Moto3クラス参戦4年目のシーズンを戦っている。イデミツ・アジア・タレントカップで全戦優勝を飾ってチャンピオンを獲得したのち、多くのライダーがイデミツ・アジア・タレントカップからステップアップする現在のFIMジュニアGP世界選手権やレッドブルMotoGPルーキーズカップといったMotoGPへの登竜門とされる選手権を経ることなく、2022年、ダイレクトにロードレース世界選手権Moto3クラスにデビューした。

2023年にはタイGPで初表彰台を獲得し、今季もカタールGP、カタルーニャGPで表彰台を獲得してきた。特にシーズン後半戦に入って表彰台の可能性を感じさせる週末を見せてきたが、同時にレースでの転倒などもあった。なかなか優勝には手が届かずにいたところ、ついに果たしたマレーシアGPでの優勝だった。

ポルトガルGPが開催されるアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベは、アップダウンが激しく、ブラインドコーナーが多い。攻略の難しい特殊なサーキットだと言われている。Moto3クラス参戦4年目の古里にとって、あまり得意としてこなかったサーキットでもある。これまでの自己ベストリザルトは、17位というものだった。ポイントが付与されるのは15位までなので、2024年まではポイント獲得もできていなかったことになる。

しかし、2025年の古里は違った。初日である金曜日から上位につける。午後のプラクティスで2番手に入ったのである。プラクティスというセッションは、翌日の予選、Q1とQ2を分ける重要なセッションだ。14番手までに入ればQ2に進出できるため、終盤はタイムアタックとなる。

ただ、土曜日のQ2では11番手だった。

「ライディングとしてはよくなっていますが、風がちょっと強かったですね」と、古里は予選を振り返る。11番手というポジションだったものの、古里の表情は落ち着いており、自信のようなものが窺えた。

「昨日よりもいい走りができていると思います。セパン(マレーシア)ほどではないけれど、いつものレースウイークと同じくらい(手応えはある)。うまくいけば、表彰台に乗れるかもしれないですね」

日曜日の決勝レースでは、序盤にフィーリングをつかむまでに少し時間を要した。しかし、そこから徐々にポジションを上げ、7周目を迎えるころには表彰台争いの位置につける。レース中盤には一時トップも走ったが、タイヤが終わってしまって終盤はかなり厳しい状況だったという。最終的に古里は3位でチェッカーを受けた。

優勝も見えた位置を走っただけに悔しい3位かと思いきや、トップ3の囲み取材にやって来た古里の表情はとても明るかった。

「今まででいちばんうれしいです。ほんとにうれしい」

そう声を弾ませる。その理由は、レースの内容にある。これまでは、優勝を目指したレースをしていた。でも今回は、自分とライバルの状況を見て、「今日は3位だ」と現実的に考えた。そして、その現実的な最高の順位を持ち帰るという判断ができ、実際に3位を獲得した。マレーシアGPでの優勝があったからこそだった。

「今回は『3位でもいい』と思いました。いつもなら勝ちにいっていたでしょうね。でも、例えば今日のベストで走ったとしても、今日は3位だった。2位にはなれなかったし、優勝するのはもっと無理だったと思います。それを判断できるようになったのは、よかったです」

そう言って笑顔を浮かべる。

マレーシアGPでの優勝という経験を蓄えた古里は、ポルトガルGPでこれまでとは少し違う意味を持つ表彰台を獲得した。

2戦連続で表彰台を獲得した古里太陽(#72)©Honda