初期受注の53%が4WD、290万円超の全部載せ上級グレードが人気

デリカミニ T Premium DELIMARU Package 4WD(デニムブルーパール/ブラックマイカ)

いよいよ発売された新型デリカミニ。事前情報の段階で、「最上級グレードが300万円近いらしいけど、そんな高価な軽自動車は売れるのか?」といった声もあったようだが、初期受注の数字を見るとそうした心配は杞憂に終わったようだ。

あらためて新型デリカミニのグレード構成と価格帯を整理すると、エンジンはNA(自然吸気)とターボの2種類で、トランスミッションはCVTのみ。駆動方式はFFと4WDを用意するというもの。

エントリーグレードはNAエンジンでFFの「G」となり、そのメーカー希望小売価格は196万4600円。同じくアルファベット一文字のターボグレードが「T」で、FFのメーカー希望小売価格は204万2700円となっている。

先進運転支援システム「マイパイロット」を標準装備する中間グレードはアルファベットの後ろに「Premium」とつく。4WDのメーカー希望小売価格を紹介すれば、NAエンジンの「G Premium」が229万6800円、ターボの「T Premium」は238万7000円となる。

12.3インチ画面のGoogle搭載インフォテイメントシステムを標準装備する最上級グレードが「DELIMARU Package」。こちらも4WDのメーカー希望小売価格を紹介すると「G Premium DELIMARU Package」が281万7100円、最上級グレードとなる「T Premium DELIMARU Package」は290万7300円だ。

シンプルに整理するとアルファベット一文字のベーシックグレード「G」or「T」、先進運転支援システムが標準装備となる「Premium」、そこに12.3インチインフォテイメントシステムも加えた全部載せの「DELIMARU Package」という3タイプに大別されるわけだ。

驚くのは、初期受注において「DELIMARU Package」の比率が67%を占めていることだ(ターボとNAの合計)。そこに続くのが「Premium」系の28%であり、ベーシックグレードは5%に過ぎない。「こんな高価な軽自動車は誰が買うんだ?」という外野の心配をよそに、デリカミニ・ファンは装備の充実した最上級グレードを選んでいる。

さらにデリカミニらしいと感じるのは、初期受注において53%が4WDを選んでいるということ。初代に引き続き、4WDは専用セッティングの足回りを与えられるなど、非常にこだわった仕様となっているが、そうしたポイントを評価するオーナーが多いということだろう。

デリカミニ4WD専用セッティングのサスペンション

つまり、ターボ・4WD・全部載せの「T Premium DELIMARU Package」が、新型デリカミニにおける最人気グレードといえる。まさに、初試乗のパートナーとして相応しい一台のハンドルを握ることにした。

デリカミニ T Premium DELIMARU Package 4WD(デニムブルーパール/ブラックマイカ)

写真からもわかるように、試乗当日は朝から雨が降っていた。通常であれば、ウェット路面は残念に感じるものだが、デリカミニの場合はむしろ歓迎すべき要素。やはり三菱の4WDは雨の中で乗ってこそ本領がわかるだろうからだ。

思い返せば、2年半前の2023年6月に先代デリカミニに初試乗したときも同じくウェット路面だった。奇しくも初試乗も4WDターボ車だったが、その試乗レポートでは『クロスオーバーSUV的な世界観、ワイルドな走り味を実現している。サスペンションについても、4WDは専用ショックアブソーバーを与えられているため、ガツンとなりそうな段差を受け止める能力も高い」と評していた。そして、「デリカミニは、軽スーパーハイトワゴンでありながら、デリカという名前にふさわしい走りのキャラクターを持っている」とまとめていた。

三菱デリカミニを公道初試乗。オンもオフも気持ちいい走りに仕上がっていた!大径タイヤと4WD制御の味付けが絶妙!

2023年の軽自動車界において大注目モデル、三菱デリカミニをついに公道で試乗することができた。三菱伝統の「デリカ」ブランドを軽自動車の中で表現したスタイリングについては文句なし。一方で、メカニズムとしては日産と共同開発している軽自動車アーキテクチャーで、基本的な部分は従来モデルからのキャリーオーバーといえる。はたして「デリカ」らしい走りを実現しているのか、雨中のジャリ道とワインディングで確認した。 REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:井上誠(INOUE Makoto)

はたして、新型デリカミニはどのような走り味を感じさせてくれるのだろうか。

まずは4WD専用にセッティングされたサスペンションの印象を中心にお伝えしよう。

試乗のメインコースとなったのは千葉県富津市の「もみじロード」。紅葉の美しい、低速ワインディングロードだ。

デリカミニ T Premium DELIMARU Package 4WD(デニムブルーパール/ブラックマイカ)

従来のデリカミニと同様に、160mmまで最低地上高をあげているが、その悪影響は感じない。初めて走るワインディングで、コーナーに合わせて右に左にハンドルを切るようなシチュエーションでもロールの大きさやダルさが気になることはない。

そして路肩の段差を乗り越え、ちょっとした砂利のスペースに入ったとき”デリカ”らしさを感じることができた。

大きな入力があったときにも一発で収束するほどサスペンションの余裕はあり、濡れ落ち葉に覆われた路面でも安心感は高い。こうしたサスペンションはデリカミニのチャームポイントになる。

前述したように、従来モデルの試乗レポートでは「軽スーパーハイトワゴンとして」というカテゴリー内での評価だったが、新型デリカミニにおいては、その領域を超えているように感じた。コンパクトなクロスオーバーSUVの中で評価したくなる余裕を感じられる乗り心地に仕上がっている。

試乗した最上級グレードは290万円を超える価格。たしかに軽自動車としてみれば高価かもしれないが、他に類をみないコンパクトでスライドドアを持つクロスオーバーSUVとして評価すれば妥当といえる…そんな風に思った。

デリカミニ T Premium DELIMARU Package 4WD(デニムブルーパール/ブラックマイカ)

ちなみに、従来モデルはマイルドハイブリッドだったが、新型デリカミニは純エンジン車となった。しかしながらWLTCモード燃費は従来モデルの17.5km/Lから17.8km/Lへと改善している。エンジンスペックは同等だが、細かいブラッシュアップにより環境性能も高めている。

また、モーターアシストがなくなったからといって加速が鈍くなったという印象はない。むしろ鋭い加速を楽しめるようになったと感じる。その理由は、明確に色分けされた5つのドライブモードを新設定したことにある。

5つのドライブモードを設定。SUVらしいグラベルモードも用意

デリカミニ T Premium DELIMARU Package 4WD(デニムブルーパール/ブラックマイカ)

デリカミニの専用アイテムとして設定されたダイヤル式ドライブモードセレクターは、POWER/ECO/NORMAL/GRAVEL/SNOWと5つのモードを選ぶことができる。

それぞれ、エンジンやトランスミッションの制御、ブレーキLSDやトラクションコントロールの介入などを変えることで、シチュエーションにマッチした走りを実現するというものだ。なにより「GRAVEL(グラベル)」モードが用意されているのは三菱らしいところ。

せっかくの機会なので、全モードを味わってみることにした。

加減速のリニアリティが高いのはPOWERモードとGRAVELモード。おそらくエンジンとCVTの制御は同等だろうが、どちらを選んでもターボラグを感じない鋭い加速が味わえ、またアクセルオフでもエンジン回転は高めとなっているので、再加速もスムース。新型デリカミニは残念ながらパドルシフトは備えないが、これらのモードであればアクセルペダルの操作だけでエンジンブレーキの効き具合もコントロールしやすい。

一方、ECOモードはアクセル操作と加速感の乖離が大きく、逆に運転が難しいと感じるものだった。アクセルをオン/オフ操作するようなドライバーを燃費運転へ導くことが狙いのモードといえる。デリカミニの購入層のうち半分近くが50代というが、そうしたベテランドライバーが選ぶ必要はなさそうだ。

そして結論をいえば、筆者はデリカミニの”デリカらしさ”を味わうのならば、NORMALモードがベストだと感じた。

たしかにPOWERやGRAVELといったモードは駆動力のリニアリティは増すが、新型デリカミニの落ち着いた味つけのフットワークと完全にマッチしているとはいえない。具体的には、GRAVELモードのアクセルオフ(高回転維持)状態でコーナーに進入するような走りをするのであれば、もっと軽快感のあるハンドリング特性が欲しい。

ご存知のように、デリカミニは三菱と日産がNMKVという開発会社を通じて協力して生み出している軽自動車のひとつだ。実質的な兄弟車が日産ルークスである。そして、ルークス(プロトタイプ)をクローズドコースで試乗した印象でいえば、もっとキビキビとした挙動を見せていた。このプラットフォームの素性としては、そうした味つけも可能なはずだ。

つまり、デリカミニの余裕を感じさせる、いい意味で「軽自動車離れした」シャシーセッティングは、作り手が狙ったものである。そうであればこそ、軽自動車の枠から脱却した余裕のハンドリング特性が、もっとも味わえるNORMALモードがベストの選択と感じる。POWERモードであっても、ハンドリング特性に合うようアクセルの加減速コントロールを行うと、一気にデリカミニらしさが濃くなったように思えた。

極論すると「デリカミニは、もはや軽スーパーハイトワゴンではない」。デリカミニというひとつのジャンルを確立している。それは価格だけでなく、余裕を感じさせる乗り味においてもである。それが初試乗での偽らざる感想だ。

最低地上高は160mm

デリカミニ主要スペック

デリカミニ T Premium DELIMARU Package (4WD)
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1815mm
ホイールベース:2495mm
車両重量:1050kg
排気量:659cc
エンジン:直列3気筒DOHCガソリンターボ
最高出力:64PS(47kW)/5600rpm
最大トルク:100Nm/2400~4000rpm
トランスミッション:CVT
WLTCモード燃費:17.8km/L
最小回転半径:4.9m
タイヤサイズ:165/60R15
乗車定員:4名
メーカー希望小売価格:290万7300円