ホンダ車オーナー以外もウェルカムな一大イベント

この「Hondaモーターサイクルホームカミング熊本」が初めて開催されたのは、今から7年前の2018年。およそ2,500人が熊本県大津町にあるHonda熊本製作所に来場した。2020年と2021年はコロナ禍による感染拡大防止のために開催を自粛し、2022年に再開。昨年は台風接近に伴う雷注意報発令のため急遽中止となり、今年は2年ぶり、通算5回目の開催となった。当日は8時ごろまで雨が降っていたものの、ライダーが訪れはじめる時間帯には徐々に天候が回復。駐輪場を埋め尽くしたバイクの台数は2,299台、来場者数は4,779人と発表された。

今回の会場は、熊本製作所に隣接する「Honda KUMAMOTO WELCOME PARK」。2025年3月にオープンしたばかりのこの施設は、従業員の福利厚生施設として建設されたもので、これまでにホンダがチャレンジして生み出したさまざまな製品を展示しており、一般にも開放されている。メインステージはこの施設の正面に設けられた。

当日の集合写真。左側に見える建物がHonda KUMAMOTO WELCOME PARKだ。
ホンダ車を中心に、たくさんのバイクが工場敷地内の広大な駐輪スペースを埋め尽くした。
出展ブース、キッチンカーも充実していた。
熊本製作所の正面出入口にあるフォトスポット。これは台湾からやってきたグループだ。

コンテンツ盛り沢山! 今年の主役はやはりCB1000Fだ

このイベントは、ホンダ車オーナーやホンダファンはもちろんのこと、まだ二輪免許を取得していないけれどもバイクに興味のある人や、小さなお子さんがいる家族連れまでもが1日中楽しめるように、多彩なプログラムで構成されているのが特徴だ。以下、主だったものを列挙する。

【CB1000Fコンセプト スペシャルプログラム】
話題の「CB1000F」が発売される前月に開催されたこともあり、今年はこの大型ロードスポーツに関するコンテンツが目白押しだった。中でも一番の話題は、CB1000Fのメインカラーであるウルフシルバーメタリック(ブルーストライプ)、その元ネタとなった「CB750Fデイトナレーサー」の展示と、それを駆った世界GP王者であるフレディ・スペンサー氏の来日だ。

スペンサー氏は前日、熊本製作所に隣接するサーキット「HSR九州」でCB1000Fに試乗。トークショーでは、「当時のレトロな雰囲気とモダンなテクノロジーが融合した素晴らしいバイクだね!」と絶賛。「アメリカでも乗りたいよ。もちろん発売されるよね?」と、開発者に質問するシーンもあった。

全長約2,350mのHSR九州サーキットコースを発売前のCB1000Fで快走するスペンサー氏。
白いシャツがスペンサー氏。左端はCBアンバサダーでモータージャーナリストの丸山 浩さん。右の二人はCB1000Fの開発者だ。
CB1000Fのメインカラーの元ネタであるCB750Fデイトナレーサー。ホンダコレクションホールの外へ持ち出されるのはこの日が初めてとのこと。ステージではエンジン始動も行われた。
CB1000Fの開発者によるトークショー。このイベントが開催された翌週からCB1000Fの量産が熊本製作所で開始されると発表された。
熊本製作所には大型機種の開発部門も在籍していることから、デザイナーによるCB1000Fのスケッチの製作過程やクレイモデリングのデモンストレーションも行われた。
「Honda KUMAMOTO WELCOME PARK」の入り口に展示されていたCB1000Fレーサーは、HSR九州で開催されたイベントレース「鉄馬(てつうま)」で丸山氏が駆ったマシンだ。彼はアイアンスポーツクラスにおいて、5周のセミファイナル、7周のファイナルとも見事にトップでチェッカーを受けている。
メイン会場にはまたがることのできるCB1000Fを展示。足着き性やライディングポジションを確認する人で常ににぎわっていた。
開発を主導した本田技研工業の坂本順一氏によると、「中型バイクからのステップアップを考慮し、車体の軽さと足着き性にはこだわった」とのこと。

【GOLD WING 50周年記念 歴代車両展示】
1975年に初代GoldWing(GL1000)が登場してから今年でちょうど50周年にあたることから、歴代モデルを集めたコーナーが設けられた。

初代GL1000から最新のGL1800までを一堂に展示。現行モデルは熊本製作所にて生産されている。

【GP500 & GP250 ダブルチャンピオン40周年記念】
1961年生まれのフレディ・スペンサー氏は、1982年にホンダワークスから世界GPフル参戦を開始し、翌1983年にGP500クラスで初チャンピオンに。1985年にはGP500とGP250の両クラスでタイトルを獲得している。今年はその偉業から40周年にあたることから、当時の貴重なグランプリマシンがホンダコレクションホールから持ち込まれた。

ゼッケン4のマシンがNSR500(NV0B)、左側のゼッケン19がRS250R-W(NV1A)。スクリーンに「FREDDIE」の文字が確認できる。

【二輪車世界累計生産5億台記念展示】
1949年に本格的な二輪車の第一号である「ドリームD型」の量産を開始してから、今年で76年目となるホンダ。2025年5月には二輪車の生産台数が世界累計で5億台を突破し、インド・グジャラート州の第4工場にて記念式典が開催された。ホームカミング熊本では、5億台に至るまでに生産した代表的なモデルの展示や、記念ムービーの上映などが行われた。

世界12の国・地域と、37拠点で生産されているホンダの二輪車。

【熊本製作所・工場見学】
このイベントにおける最も“ホームカミング”らしい体験プログラムは、熊本製作所の工場見学だろう。事前予約の申込枠がすぐに埋まってしまうほどの人気ぶりで、当日受付のキャンセル枠には長蛇の列ができるほど。少しずつ形になっていく二輪車の生産ラインを間近に見られるほか、ホンダ従業員の解説とともに見られる展示もあることから、特にホンダ車ユーザーにとっては有意義なコンテンツと言えるだろう。

工場見学の様子。来場者の目も真剣だ。
ホンダの従業員が普段利用している社員食堂を開放。当日提供されたのは、全国のホンダ事業所の名物メニューとなっているカツカレーうどんだ。揚げたてサクサクのカツはしっかりと下味がついており、麺には適度なコシがあって非常に美味。なお、事業所ごとにカレーうどんの味は異なるとのこと。

「おかえりなさい」が合言葉の温かいイベント

「Hondaモーターサイクルホームカミング熊本2025」は、ホンダファンだけでなく、バイクを愛するすべての人に向けて、ホンダの生産拠点を“帰る場所”とする温かさが魅力的なイベントだ。ホンダ車オーナーにとっては聖地巡礼とも言える内容であり、またそれ以外のライダーにとっても、あらためてホンダの企業姿勢に感銘を受けたはずだ。

関東や関西など遠方からの来場者が少なくなかったのも、このイベントの特徴だろう。やまなみハイウェイやミルクロードなど、ライダーの聖地・阿蘇へも近いことから、そこをツーリングすることも目的として熊本へやってくる人が多かったのも事実。来年の開催日程については今のところ未定だが、決まり次第お知らせしたい。