復活ラリーアートの2度目の栄冠

三菱は長らくワークスでのモータースポーツ活動から遠ざかっていたが、2021年に三菱のモータースポーツブランドである「RALLIART(ラリーアート)」を復活させ、その活動としてチーム三菱ラリーアートが2022年のAXCRに参戦。先代モデルのトライトンで見事総合優勝を成し遂げ、ラリーアート復活に華を添えた。

AXCR2022で優勝した仙台モデルの三菱トライトン。ウィナーはチャヤポン・ヨーター/ピーラポン・ソムバットウォン組。

2023年からはいよいよフルモデルチェンジされた新型トライトンを投入。しかし、開発と熟成に時間がかかり、2023年、2024年と惜敗。特に2024年はラリー終盤で首位に立ったところでエンジントラブルによりリタイヤと悔しい結果となった。

AXCR2024の三菱最上位(5位)は田口勝彦/保井隆宏組の日本人ペアとなった。

その雪辱を期したAXCR2025は第30回の記念開催としてラオスなどの複数国コースも想定されたが、最終的には例年通りタイ国内で開催。2025年8月8日〜16日の8日間、8LEG総走行距離3247.72kmで争われた。

AXCR2025ルートマップ。

チーム三菱ラリーアートは2022年のウィナーであるチャヤポン・ヨーター/ピーラポン・ソムバットウォン組のステディなレース運びと一丸となったチーム力でチーム三菱ラリーアートと自身の3年ぶり、新型トライトンとしては初の優勝を成し遂げ、見事雪辱を果たした。

チーム三菱ラリーアートのAXCR2025総合優勝。
チーム三菱ラリーアート・増岡浩総監督が3年ぶりとなる「アジアクロスカントリーラリー」優勝を報告! | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

3年ぶりのAXCR総合優勝 2025年8月6日(金)〜16日(日)にタイで開催されたAXCR2025は記念すべき30回目の開催となった。当初は30回大会としてラオスやカンボジアも含む3000kmのコースも構想されたが、タ […]

https://motor-fan.jp/headline/1277257/
チーム三菱ラリーアート・増岡浩総監督と優勝ペア、チャヤポン・ヨーター/ピーラポン・ソムバットウォンによる優勝報告会。

初の実戦マシン展示はAXCR2025優勝車両

これまで、チーム三菱ラリーアートのAXCR参戦車両は、参戦体制発表会や結果報告、レース終了後の各種イベントでも実戦マシンが展示されることはなかった。体制発表会の際は実戦マシンはすでに現地でテスト中であり、結果報告ではまだ現地から戻っていないという事情もあった。

AXCR2025優勝報告会の際に三菱本社ショールームに展示された参戦車両のレプリカ。

これまでの展示もテスト車両であったり、外装のみのレプリカであったりと、実戦車両を見ることはできなかったが、JMS2025ではついに実戦車両、しかもAXCR2025の優勝車両が展示された。しかも、ステージ上などの手が届かないところではなく、ベルトパーティションこそあれどまさに間近に見ることができたのだ。

JMS2025の三菱ブースで展示されたトライトンのAXCR優勝車両。会期初日のプレスデーは一切の仕切り無しで公開された。

確かに、実戦を戦い抜いたマシンの凄みを各所から滲ませるものの、3000km以上の難コースを走破した車両としては驚くほど綺麗だ。もちろん、展示にあたって洗車はされてはいるのだが、実戦終了後のラリーカーとしては非常に傷が少なく見えた。

JMS2025の三菱ブースに展示されたトライトンAXCR2025優勝車両。

そのことについて、会場で増岡浩総監督に訊いたところ、ひとえにチャヤポン・ヨーターの慎重で繊細なドライビングによるもの、とのことだった。もちろん、各所に細かい傷はあるものの、比較的大きなものは右ボディサイド程度。これは、スタックした車両を路外からパスしようとした際にチャヤポン・ヨーターもスタックして岩にヒットした際に付いたものだとか。

スタックとその後の脱出の際に付いたボディ右サイドの傷。車体に残る大きな傷はこのくらい。
実はフロントバンパーは一度まるまる交換されており、フロントフェンダー前端にはバンパーを留めるためのリベットが見える。

そのスタックもサポートカーの迅速なヘルプによりタイムロスを最小限に留め、優勝戦戦に残ることができた。AXCR2025はタイ国内開催ながらルートの難易度はもとより、ラリー期間中は雨が多く非常にマディな難コースとなった。そのような状況で、熟成が進んだトライトンと向上したチーム力が遺憾無く発揮され、3年ぶり2度目の栄冠を手にすることになったわけだ。

チーム三菱ラリーアート総監督の増岡 浩氏。2002年、2003年の『ダカールラリー』を連覇した三菱のレジェンドドライバー。
トライトンとともに展示されたAXCR2025総合優勝のトロフィー。他にもT1Dクラス優勝とチームアワードも獲得している。

三菱トライトンAXCR2025優勝車両展示は優勝報告会には帰国が間に合わず、JMS2025の開催時期でようやくといったところ。今後、『東京オートサロン2026』(2026年1月9日〜11日)などのイベント展示されるかは未定だけに、かなり貴重な機会となった。多数の取材写真を掲載するので、見逃してしまった人はぜひチェックして、AXCRの戦いに思いを馳せてみてほしい。

ボディサイズ全長5070mm×全幅1995mm
※全高は非公開
ホイールベース3130mm
トレッド1730mm
エンジン型式4N16型直列4気筒ターボディーゼル
燃料噴射装置高圧コモンレール
排気量2439cc
ターボチャージャー三菱重工エンジ&ターボチャージャ製VGターボチャージャー
最高出力160kW以上
最大トルク500Nm以上
エキゾーストシステムHKS製 AXCRコンペティションモデル
変速機6速シーケンシャルトランスミッション 
Moty’s製ギヤオイル
4WDシステムフルタイム4WD
フロント/リヤデフCUSCO製 差動制限装置付
フロントサスペンションダブルウィッシュボーン式コイルスプリング独立懸架 
リヤサスペンション4リンクリジッド式コイルスプリング
ショックアブソーバーCUSCO製減衰力調整式ツインダンパー
バンプストッパー油圧式
ステアリング形式ラック&ピニオン(パワーステアリング)
ブレーキENDLESS製モノブロックブレーキキャリパー、ベンチレーテッドディスク、パッド
FORTEC製競技用ブレーキフルード
ホイールWORK製アルミホイール (17インチ×7J)
タイヤ横浜ゴム製ジオランダーM/T G003(245/ 75R17)
その他カーボン製:フード、フロントフェンダー、前後ドアパネル、カーゴアウターパネル
チーム三菱ラリーアートAXCR参戦車両・トライトン(T1Dクラス)スペック(112号車、118号車)
DATA:MITSUBISHI
三菱の地元とも言える岡崎の『おかざきクルまつり2025』では優勝車両ではないが、デモランが披露されていた。