免許不要の「特定小型原動機付自転車」「特例特定小型原動機付自転車」とは?

自動車のEV化が進むとともに、「何だかヘンな乗りもんが出てきたな」と思うのが、電気キックボードというやつである。
地方での普及度はまだ低いようだが、免許不要の手軽さ(?)もあってか、東京都内ではかなり見かけるようになった。
幼少時、路面を蹴って走るやつを見かけたものだが、その電気モーター版が電動キックボードである。

自動車用品老舗のカーメイトが、昨年2024年1月から発売中の「e-FREE(イーフリー)」シリーズを展示していた。
e-FREEは、法規上はこれまでの電動キックボードと同じ「特定小型原動機付自転車」のカテゴリーに属する乗りものだが、出来上がった姿は自転車の変形版のような姿をしている。

ところでそもそも「特定小型原動機付自転車」とは何ぞや?
ここで道路交通法上でのルールを示しておく。

カーメイト「e-FREE」シリーズのうちの先発モデル「e-FREE 01(イーフリー ゼロイチ)」。

【特定小型原動機付自転車】

・車両サイズ:全長190cm以下、全幅60cm以下であること。
・原動機としての定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること。
・時速20キロを超える速度を出すことができないこと。
・走行中に最高速度の設定を変更できないこと。
・オートマチックトランスミッション(AT)機構であること。
・最高速度表示灯が備えられていること。

他に

・道路運送車両法上の保安基準に適合していること。
・自動車損賠賠償責任保険(共済)の契約をしていること。
・標識(ナンバープレート)を取り付けていること。

がある。

【特例特定小型原動機付自転車】

そしてこの「特定小型原動機付自転車」は、もうひとつの基準「特例特定小型原動機付自転車」を包含している。

・最高速度表示灯を点滅させること。
・時速6キロを超える速度を出せないこと。

これら基準を満たしてさえいれば、車輪が2つであろうと3つであろうと4つであろうと、最高速20km/hまでの車道路側の走行が認められる「特定小型原動機付自転車」であり、さらに「特例特定小型原動機付自転車」の条件を満たしていれば、「普通自転車等及び歩行者等専用」の標識のある歩道を、6km/hを上限に走ることが可能となる。
そして最近どこも造るのをやめた50ccバイクと異なり、免許不要なのも大きな特徴に挙げられる。
50ccバイクは「一般原動機付自転車」にカテゴライズされる乗りもので、免許が必要だ。

「e-FREE」と「特定小型原動機付自転車」を説明するパネル。

同じ6km/h上限なら・・・例えばスズキのセニアカーなどは「特例特定小型原動機付自転車」に入りそうな気がするが、あちらは法規上、乗っているひとはそもそも「歩行者」として扱われるから、「特定小型原動機付自転車」はもちろんのこと、「特例特定小型原動機付自転車」にも含まれない。
「特定小型原動機付自転車」の呼称のとおり、こちらe-FREEは、あくまでも「自転車」なのである。
もっと厳密にいえば「特例特定小型原動機付自転車」の要件も満たす「特定小型原動機付自転車」だ。
ただ、操作に関してはバイクに近く、実際、メーカーもバイクと思って乗ってほしいという。

スズキ「セニアカー」。

初の自転車スタイル「e-FREE 01」

いまでこそ自転車ライクな姿の「特定小型原動機付自転車」が各社から販売されているが、この「e-FREE」は昨年の発売時点、「特定小型原動機付自転車」の性能等確認制度適合に、サドル付き=自転車タイプとしては日本で一番乗りを遂げた電動モビリティだ。
ついでにいうと、e-FREEの発表・発売(2024年1月23日発表・同26日発売)が2年前のJMSの直後だったため、世の中に大々的にお披露目するのは今回のJMS2025が初めてなのだそうな。

ブース展示されていたe-FREEは2種。
メイン展示はいま販売中の「e-FREE 01(イーフリー ゼロイチ)」だった。
もう1種は後述するとして、まずは「01」をさっさとお見せしましょうか。
こと、筆者はこの種の電動モバイルを間近で見るのは初めてのことだ。
せっかくだからと目につくところを写真に撮っておいた。

・外観

自転車スタイルといっても、弓なり形状の1本フレームにハンドルやサドルのバーを貫通させたデザインで、ペダルがないから自転車とはひと味違う。
フレームの、サイド文字「e-FREE」の部分にはキーロック付きのバッテリーが埋め込まれ、足置き部分に制御ユニットが内蔵される。

e-FREE 01 外観。
e-FREE 01 後ろ姿。

・アクセルグリップ

「自転車」でありながら「バイク」的なのは発進方法。
折りたたみ可能なバーハンドルは、右の握りがアクセルグリップになっている。
右手で握って手前まわしで発進だ。

アクセルグリップ。

・ライト

スパッと切り落としたような形のフレーム先端にLEDのヘッドライトがある。
ハイビームはなし。

フレーム先端のライト。

・ブレーキ

e-FREE 01は後ろの車輪をモーター駆動する後輪駆動。
で、いっちょ前にも、e-FREE 01は高性能スポーツカーのように前後ともディスクブレーキを備える。
筆者のクルマはパートタイム4駆で、平素後輪で走っているが、後輪はドラムブレーキだ。
負けた。

前輪も・・・
後輪もディスクブレーキだ。

・LEDディスプレイ

いちばん大きなスペースを占めているのは速度計、その右下にはバッテリー残量計がある。
速度計下の数字は区間距離計で、右のMと書かれたファンクションキー(Mでもファンクションキーなのだ)長押しで、バッテリー電圧、エラーコード(エラー発生時)、積算距離計へと切り替わる。

このMキー短押し(たぶんMODE のM)で走行モードが切替わり、その状態を速度計直下に表示。
「MODE 1」が「特例特定小型原動機付自転車」となる「歩道通行モード」で、車速の上限が6km/hとなる。
「MODE 3」が「特定小型原動機付自転車」速度をフル発揮する「車道通行モード」で、最高速度20km/hのモード。

もうひとつ、「MODE 1」と「MODE 3」の中間モードとして、20km/hのちょい手前の15km/hを上限とする「MODE 2」がある。
これも6km超だから「特定小型原動機付自転車」の範疇にあるが、e-FREE独自のモードだ。
モード切替は「MODE 1」「MODE 2」「MODE 3」の順で行なわれるが、停車中でないとできない。

LEDディスプレイ。

・最高速度表示灯兼ターンシグナル

この緑ランプが、法規で取り付けが定められている最高速度表示灯だ。
前後に2つずつ備えている。
「あのe-FREEがいまどのモードで走っているか」を傍から見てわかるようにするために義務付けたのだろう。
筆者はこれを見て、かつての大型トラックのフロントガラス上についていた速度表示灯を思い出した。
同じく緑色だったっけ。

前項で述べた「MODE 1」は「特例特定小型原動機付自転車」で、最高速6キロだから、左右の緑ランプは「点滅」する。

速度表示灯の点滅状態。
速度表示灯の点滅状態。
速度表示灯は後ろにも。 これは点滅状態。
点滅。

「MODE 2」「MODE 3」は6km/h超となる「車道通行モード」だから左右の緑ランプは「点灯」・・・つまり、点灯状態で歩道を走っていれば、それが許可された歩道であろうとなかろうと違反であることが遠くからでも一目瞭然なわけだ。

速度表示灯の点灯状態。。
点灯。

この「点滅」「点灯」も法基準の定めによる。

この速度表示灯は(トラックじゃなく、e-FREEの)、ターンシグナルを兼ねている。
ここもさきのアクセルグリップとともにバイク的なところで、スイッチはハンドル左にあり、当然灯体色はオレンジ。
同じ灯体のまま緑からオレンジに変わるのは、LEDでなければできない芸当だ。

右ターンシグナル。
左ターンシグナル。
左ターンシグナル。
右ターンシグナル。

・ナンバープレート

「特定小型原動機付自転車」にはナンバープレートの装着が義務付けられている。
サイズは10cm × 10cmで正方形・・・バイクとも異なる形をしている。

10×10cmのライセンスプレート。

航続距離にお値段は?

バッテリーはリチウムイオン式で、空っ欠からフル充電までの充填時間は3~4時間、フル充電での航続可能距離は30kmだそうな。
お値段は税込み16万8000円也。
安くはないが、じゃあペダルで漕ぐ電動アシスト自転車はいかほどかといえば、街乗り用途に限定すれば、おおよそ12万~18万といったところ。
なかなか悩ましいが、その価格帯にあるe-FREE 01&カーメイトは、他社電動アシスト自転車勢の価格を多分に意識して値付けしたのだろう。

コンセプトモデル「e-FREE 02」

ところでここまでにお見せしたのはe-FREEの「01(ゼロイチ)」。
ブースにはコンセプトモデルとして、「e-FREE 02(ゼロニ)」が展示されていた。

コンセプトモデル「e-FREE 02(イーフリー ゼロニ)」。


「02」は明らかに「01」の進化版で、後輪側にサスペンションを設けて乗り心地を向上させ、ハンドルばかりかフレームも折りたたむことができる。

サスペンションで乗り心地が向上。
「01」に対してフレームも折れ、小さくたためるようになった。

説明パネルにはわざわざ「大容量バッテリー」を記載しているから、おそらく「01」より航続距離を延長するものと思われる。

「e-FREE 02」の説明パネル。

コンセプトモデルとはいっているが、見れば「さーて、あとは発売日はいつにしましょうかね」とでもいいたげな仕上がりで、楽屋裏どころか舞台袖で出番待ちの状態。
ステージ上に姿を現す日もそう遠くはなさそうだ。