MotoGP第22戦バレンシアGPが、11月14日から16日にかけて、スペインのリカルド・トルモ・サーキットで行われた。MotoGPクラスに参戦する小椋藍(アプリリア)は、スプリントレースを9位でゴールし、決勝レースは転倒リタイアで終えた。

「いい方向に予想が外れる」も……

バレンシアGPは、2年ぶりの開催となった。2024年はバレンシアを襲った洪水の被害を受けて、開催地が変更となったからだ。昨年の最終戦は、バルセロナ近郊にあるバルセロナ-カタルーニャ・サーキットで行われた。

ルーキーの小椋藍(アプリリア)は、リカルド・トルモ・サーキットを「どちらかというと嫌いなほう」と、木曜日の囲み取材で語っていた。

「そもそも、あまり得意なサーキットではないのだと思います。ただ、今年はよくも悪くも自分の予想が外れることが多いので、ここでもいい方に外れてくれるといいんですけどね」

金曜日のプラクティスを、小椋は5番手で終えた。これは、「いい方に予想が外れた」ことになる。プラクティスでトップ10に入ることができれば、土曜日の予選をQ2から挑むことができる。Q2は、プラクティスのトップ10とQ1のトップ2を加えた12人によって争われる予選である。プラクティスでトップ10以内に入った時点で、12番手以上のスタートポジションが決まる。というわけで、プラクティス終盤に行われるタイムアタックは予選のように激しい。このセッションを5番手で終えたことは、小椋の土曜日、日曜日のパフォーマンスを期待させるものでもあった。

ただ、土曜日のQ2はタイムが伸び悩んだ。周りがプラクティスよりも上げたほどには、小椋はタイムを詰められなかったのである。小椋としては1分28秒9から29秒0あたりのタイムをねらっていたが、実際に記録したタイムは1分29秒371。Q2で12番手となり、スプリントレースと決勝レースは4列目からのスタートとなった。

土曜日午後に行われたスプリントレースでは、小椋は12番手からスタートしたが1周目で後退し、15番手にポジションダウン。4周目には11番手、5周目には10番手に浮上した。終盤には7番手を争う集団に追いついたが、スプリントレースは周回数が13周と短いため、9位でゴールとなった。

「スタートがよくなかったので、決勝レースでは、スタート(ポジション)と同じか、できれば上げたいですね」と、小椋は決勝レースに向けて語っていた。

日曜日の決勝レース、スタートとしては問題なかった。ただ、4コーナー進入で、ヨハン・ザルコ(ホンダ)がフランチェスコ・バニャイア(ドゥカティ)に接触し、バニャイアが転倒を喫した。このアクシデントが、小椋に影響することになった。

「(ザルコが)あのラインでは止まりきれないスピードで(4コーナーに)進入していって、外側にいたペコ(バニャイア)に当たりました。その二人が接触している真後ろにいたので、僕も後退する形になってしまいました」

小椋は17番手付近まで後退を余儀なくされた。ここから3周目には16番手、5周目には15番手にポジションを回復する。明らかに、さらに前で走ることができるペースがあった。だから、小椋に焦りが生まれた。4コーナーでのアクシデントの影響で後退したといっても、フィーリングはよかったからだ。リカルド・トルモ・サーキットが抜きづらいコース、ということもあったのかもしれない。

「ここで何周もしたらもったいないな、という気持ちがあったんです」

しかし、その焦りがミスを生んだ。7周目、1コーナーで転倒を喫し、リタイアとなった。

「ポジションを上げていこうと頑張っていたところでした。前のライダーを次のコーナーで抜くことを考えて準備したところで転んでしまったんです。2コーナーで抜けたらそれでいいし、前のライダーに接近できればその分チャンスが増えます。だから、まずは近づいておきたかったんですけどね」

小椋は、シーズンの終わり方としては「転倒ですからね」と言って、暗に「残念だ」と表現していた。

2025年シーズン、MotoGPクラスのルーキーとして戦った小椋は、チャンピオンシップのランキングを16位で終えた。決勝レースのベストリザルトは、タイGPの5位である。来季はMotoGPライダーとして、2年目のシーズンが始まる。

2025年シーズンはタイでのセンセーショナルな5位に始まり、負傷欠場もあった。様々な経験を積んだシーズンとなった©Trackhouse Racing