「2025グランツーリスモD1GPシリーズ」最後の2連戦となる第9戦/第10戦TOKYO DRIFTは、東京・お台場の特設コースで11月15、16日の週末に開催された。この場所は、ふだんは駐車場として利用されていて、サーキットなどとは舗装が異なり、もともとグリップが低いうえに、路面の凹凸も大きい。そして季節は11月中旬で、冷え込む朝のチェック走行と陽がさすお昼ごろとでは路面温度も大きく変わる。タイヤにとってはシビアなコンディションで競技が行われた。

ダンロップ勢は、広島トヨタ team DROO-PのHT・DUNLOP・86 (ZN8・ドライバー石川隼也)、HT・DUNLOP・85 (AE85・ドライバー松川和也)の2台と、URAS RACINGのDUNLOP CUSCO SKYLINE(ER34・ドライバー野村圭市)の計3台が出走した。いずれの車両も、シーズン終盤で仕様が完成されてきていること、また前戦から3週間という短いインターバルだったこともあり、これといったアップデートはないままTOKYO DRIFTを迎えている。

金曜日の公式練習では、松川車のリヤサスペンションのコントロールアームが破損したり、エビスでのクラッシュの後遺症でブーストのかかりが悪くなったりといったトラブルはあったが、いずれも深刻なものではなく、ほかの2台は順調にスケジュールをこなした。

練習日は、松川車のみ小さいトラブルに見舞われたが、すぐに対処でき、問題は残らなかった。

このコースは石川が過去に単走優勝もしている得意なコース。また様々な路面コンディションや天候に対応できるダンロップタイヤの強みが発揮しやすいコースだ。

単走決勝ではまずAグループで出走した石川が1本目からまずまずの振り出しとアクセルONの時間が長い安定したドリフトを見せて98.21点という高得点を獲得。2本目はよりするどい振りとアクセルの踏みっぷりを見せたが、ヘアピンでコースリミット超過をしてしまい減点。1本目の得点を超えることはできなかった。

このコースでは毎年好成績を残している石川。ドライバーもタイヤもお台場とは相性がいい。

Dグループで走行した松川は1本目にいまひとつキレのある振りができず、角度も浅くなってしまうなどして96.31点。2本目は最後のセクターで失敗してしまって点が伸びなかった。松川は「2本目は途中まではよかったと思います。最後ハーフスピンみたいになっちゃった。なんだろう? 後ろが追い越していっちゃった感じですね」とのコメント。

同じくDグループで出走した野村の1本目は振り出し後に姿勢が決まるのも早く、安定したドリフトを見せたが、振りの鋭さが足りず96.20点にとどまる。2本目はクイックな振り出しを見せたものの、角度をつけすぎて姿勢が戻され、得点は低くなってしまった。

石川は8位で追走進出を決めたものの、松川と野村は単走敗退となってしまった。

エビスでのクラッシュのあと、クルマがリフレッシュしたのか松川のドリフトもメリハリを増してきた。

追走トーナメントでは、石川は今季3勝を挙げている目桑と対戦。1本目は目桑に近い距離で合わせられ、8ポイントリードされた。2本目は目桑が先行。石川は加速で目桑をとらえきれなかったこともあり、ヘアピンに向けて距離を詰めたもののインには入れず、2.5ポイントのリードにとどまり、合計ポイントで敗れてベスト16敗退となった。石川の第9戦の順位は12位だった。

ベスト16。石川もミスのないいい走りを見せたが、対戦相手の目桑にそれ以上の走りをやられてしまった。

第10戦は翌日に行われた。コースは前日と同じだ。野村は車両に若干のセッティング変更を施していた。「昨日は2本目に進入で失敗したので、残りのセクターはもう途中から翌日に向けての練習と思ってやったんですけど、けっこう思いっきり振り返しても点が伸びなかったので、大幅に変えて試してみます」とのことで、より素早い振りができるようにウイングを外し、リヤのトレッドも狭めたのだ。また、石川車も、車速によってターボのブースト圧が変わるような設定をほどこした。低速域ではブーストを低めにしてホイールスピンを抑制し、高速域ではブーストを高めてパワーを上げるという設定だ。これでドライバーのアクセルワークを楽にして加速力を高めようという狙いだ。

野村車はGTウイングを外し、リヤのトレッドも狭めて第10戦に臨んだ。

そして第10戦の単走。この日もAグループで出走した石川は1本目からするどい振りと早い姿勢づくり、そして大きな角度で98.35点をマーク。2本目はさらに勢いのある振りを見せたが、そこから少しふらついたほか、コースリミット超過もあって点は伸びなかった。同じAグループで走行した松川は、1本目に高い安定性や大きな角度を見せたものの、通過指定ゾーンの部分不通過等の減点が大きく点が伸びない。2本目もゾーン外しなどがあって93.86点にとどまった。Cグループで走行した野村はやはり振りで点が稼げず、ゾーン外しの減点もあって1本目は94.15点。2本目も95.36点で大きく点を伸ばすことができなかった。石川は12位で追走に進出。松川と野村は単走敗退となった。

野村は2本ともゾーン3をとりきれず、得点を落としてしまった。

走行後、野村は「ベースの得点でいうと、この3日間通していちばん高かったんですけど、ゾーン減点がなかったとしても、やっぱりボーダーの点数にちょっと届いてなかったんで、来年に向けて、技術の向上とマシンセットアップの見直しが必要かなと思いました。でも、ダンロップタイヤは、どのコースに行っても基本は扱いやすくて、ほしいときにグリップしてくれるんですけど、特にこのお台場の路面が悪くてけっこう滑りやすいところでも、シンプルにゴムのグリップがかなり高くて、しっかり路面を噛んでくれて、しっかり進ませれるので、安心して走れました」と語った。

野村は、お台場では、角度や安定性では点を稼いだが、振りの鋭さを出せず、点が伸びなかった。

今シーズン最後のラウンドの追走トーナメントは同日の午後に行われた。石川の対戦相手はルーキーの中村龍だ。1本目は中村が先行。石川は加速区間で少し離されてしまい、コーナリングで差を縮めたものの、とらえきれない。ポイントは1.7のリードにとどまった。2本目は石川が先行。石川はゾーン外しとコースリミット超過があり、また中村が近い距離で合わせてきたこともあって、14.6ポイントのリードを取られてベスト16敗退となった。

石川は第10戦を13位で終え、2戦連続でポイントを獲得してシーズンを終えた。

GR86を駆り、2戦とも追走に進出した石川だったが、ベスト8進出は果たせなかった。

大会後、広島トヨタ team DROO-Pの松岡監督は「今回は、ひとことでいうと『来年は覚えとけよ!』みたいな悔しさしかない1日ではあった。ただ、まったく落ち込んでいるわけではなくて、まず松川の単走が、ゾーンを外した減点はあったけど、DOSSの点だけだと98点台についに入ってて、あのエビスでの事故をきっかけにすごいよくなったというのがあった。それから石川も本人は悔しい思いをしたと思うし、まだできることはあったんじゃないのかってすごい悔しさをあらわにしてたので、これからまだまだやってくれると思う。

ダンロップタイヤは対応できる温度域の広さと路面を選ばないところが確認できたし、今回はポテンシャルをぜんぶ引き出してやろうということで、リヤにもタイヤウォーマーを巻いて準備して、1本目から点を出せた。そこはやっぱりタイヤのポテンシャルが、この気温の低い中でもプラスに働いて、期待どおりに機能してくれたことは間違いないですね。

なので、この体制で来年この場に帰ってこれるんであれば、これはもう昨日、今日の戦いが間違いなく来年の戦闘力につながるだろうと思える2日間だったと思います」と語った。

大きなトラブルもなく、組み立ても順調だっただけに、非常に悔しそうな松岡監督。しかし進化の手応えは感じている。

天候の変化こそなかったものの、気温の変化は大きく、路面のグリップも低いお台場特設コースで石川は2戦連続ポイントを獲得。今年もダンロップタイヤの安定した性能を証明して2025年シーズンを終えることができた。