新型デリカミニも初代と同様に4WD推しで、確かに完成度は高い

新型デリカミニの「T Premium DELIMARU Package」の4WDは、290万7300円と300万円に迫る。乗り出し価格は320万円程度になるだろう。同社でいえば、エクリプス クロスのガソリン4WDモデルで、最廉価「M」の299万3100円に迫る設定。もちろん、ランニングコストも含めると、軽自動車の優位性はあるものの、最近の軽はこんなにするのか……と驚く方も少なくないはず。

新型デリカミニのエクステリア

初代と同様に、新型デリカミニは、4WDモデルの走りを磨きあげている。2025年10月28日時点で4WDが53%となっていて、4WDが半数を超えているのは、ほかの軽ではあまり見られないデータだ。

三菱が推す4WDの走りはデリカの名にふさわしい

4WDモデルは、三菱、日産の両テストコースで走り込みを行ったそうで、そこには日産の開発陣も参加。デザインも含めて初代デリカミニのヒットで、三菱の意見により耳を傾けてもらえるようになった模様だ。

リヤビューもタフな印象を増している

その4WDは、フルタイム4WDとセンタークラスターに配されたデリカミニ専用のダイヤルで操作する5つのドライブモード(2WDにも標準装備)を用意。「パワー」、「エコ」、「ノーマル」、「グラベル」、「スノー」の5つから状況に応じて選択できる。ダイヤル式ドライブモードによりセンタークラスターのデザインが変わっただけでなく、内部の基板も変わっているため、コストが掛けられたことになる。

新型デリカミニのダイヤル式ドライブモード

動力性能は、流れが比較的速い郊外路であっても1人乗車であれば「エコ」で普通に走行でき、山道も含めて「ノーマル」にしておけば不満はない。林道などの未舗装路を走破する機会はなかった。また、新型はマイルドハイブリッドが廃止されたがターボ車に乗る限り、低速域のトルク不足とは無縁だった。

さらに、エンジンのフリクション低減、CVT変速プログラムの改良も盛り込んだというとおり、とくにCVTならではの加速感(加速音)の先走り感が先代よりも減ったのも朗報だ。

グラベルモードは十分に使えそう

また、試乗会では、前輪片側をローラーにのせて脱出を試みることができた。「ノーマル」では少し深くアクセルを踏み込み、少し遅れて前進できたが、「グラベル」ではあっけなく脱出。

2WD(FF)も含めてグリップコントロールの全車標準化もデリカミニの美点だが、同機能と5つのドライブモード、4〜35km/h内で下り坂を一定速でクリアできるヒルディセントコントロール、登り坂での発進時にずり下がりを防ぐヒルスタートアシストももちろん用意する。山道だけでなく、大型ショッピングモールなどの立体駐車場でも安心して走行できそうだ。

新型デリカミニのインパネ

徹底的に磨きあげられた4WDモデルは、しっかりした足腰が印象的で、軽ハイトワゴンにありがちな腰高感はほとんど抱かせない。道幅が狭く、タイトなコーナーが連続する山道でもコントロールしやすく、ライントレース性も高い。

足は引き締まっている。初採用されたカヤバ製ダンパーの「Prosmooth(プロスムース)」は、極低速域の摩擦力と減衰力調整によって、入力の遮断感とバネ上の安定性向上を図っているそうだが、荒れた路面の多い郊外路でも姿勢が終始安定しているのと、低速域の揺すぶられる感覚は、先代よりも明らかに減っている。

3Dマルチアラウンドビューモニター(移動物検知機能付)

パワーステアリングの手応えは、しっかりした足腰の割に軽く感じられた。パワステは、スムーズな操舵感で、レスポンスも良好そのもので完成度は高い。鍛え上げられたシャーシなので、もう少し重い方がコーナリングとハンドリングの整合性がとれるように感じられた。このあたりは、日産との協業という事情もあるかもしれない。

10年間無償でGoogleが使える最上級車種

そのほか、「T Premium DELIMARU Package」には、モダンになったインパネに12.3インチディスプレイのGoogle搭載インフォテイメントシステムがビルトインされるのをはじめ、ビルトインETC2.0ユニット、3Dマルチアラウンドビューモニター(移動物検知機能付)、デジタルルームミラー、前後ドライブレコーダーなども備わる。まさに、トッピング全部のせ状態で、至れり尽くせりといったところ。

助手席背もたれのレバー

とくにGoogleは、Google アシスタント、Google マップ、Goolge Playが10年間無償で使えるという太っ腹ぶり。標準装備ではないのは、アクティブLEDヘッドライト、フロントワイパーデアイサー、スタートアップヒーター、ルーフレールくらい。4WDモデルの290万円超という価格設定も「まぁ、そうなるよね」とうなずける。

シートや操作性の変化は小さいが、快適性を向上

新型デリカミニの後席スライド量320mmなど、キャビンやラゲッジの基本的な設計や使い勝手は大きく変わっていない。

後席は320mmのスライドが可能

さらに、シートフラット時の段差を減らしたり、後席のショルダー部(土手)を高くして座り心地を改善したりしているが、この点だけでは、乗り替えポイントになる人は少ないかもしれない。

デリ丸に似た顔つきが気に入ったのなら、ターボ車の2WDであれば「T Premium」にすれば221万9800円まで下がる。Googleや3Dマルチアラウンドビューモニターなどはオプションになるものの、装備的には十分という方も多いはず。

先代と同様に、後席は荷室側からもスライドとリクライニングが可能

1人乗車が多く、デザインが気に入って乗り替え、あるいはほかのクルマからの買い替えであれば、「G Premium(2WD)」は212万9600円で手に入る。デリカミニは、メーカーも4WD推しではあるが、顔つきなどデザインが好きという層も少なくないはずで、非降雪地域で街乗り中心であれば、2WDを選択するのもひとつの手。

もちろん、降雪地域やアウトドア派であれば、三菱自慢の4WDを選択してアクティブに乗る。「アクティブな頼れる相棒」というキャッチコピーを最も体現しているのが4WDモデルなのは間違いない。

今回のテーマをまとめると、新型は先進安全装備のアップデート、装備の充実化と最新化、さらにブラッシュアップされた4WDモデルの走り、そしてなにより「デリ丸」に似た顔つきなど、デザインの変化が大きい。新旧乗り比べると、新型の良さはオーナーならすぐに気がつくはずで、乗り替えればきっと満足できるだろう。