スズキが開発中の多目的電動台車「MITRA」を鉄道業界で初めて採用。段差のある場所や砂利敷きの箇所のような不整地走行に対応するとともに、ロボットアーム等各種部品を搭載

山梨リニア実験線には分岐装置や乗降装置のような特有の機械設備が存在する。これらの設備は実験線内でも点在するため、点検箇所まで作業者が長時間かけてアクセスする必要がある。加えて、例えば分岐装置の下部に設置されている様々な機器を点検する場合は、狭い場所において体に負荷のかかる姿勢で多くの項目を点検しなければならないなど、作業者にも大きな負担がかかっている。

東京〜名古屋間が2034年以降に開業する予定のリニア中央新幹線は開業後、同様の点検業務を沿線各地で広く行う必要があるため、設備の点検には大きな労力がかかることが想定されている。

そこでJR東海は、将来の労働力不足を見据えた業務の効率化を目的に、リニアの機械設備の外観検査に効果的な設備検査ロボットの導入を検討してきた。

提供:JR 東海/デザイン:solve株式会社 代表取締役 森澤有人

このたび発表された設備検査ロボット試作機「ミネルヴァ」は、スズキが開発中の多目的電動台車「MITRA(※)」を鉄道業界で初めて採用。段差のある場所や砂利敷きの箇所のような不整地走行に対応するとともに、ロボットアーム等各種部品を搭載している。
※スズキが長年の電動車いす開発・製造により実現する、走破性・信頼性に優れたモビリティ。自動走行ロボットを段差がある路面などに導入するための「ロボットの足」として提供すべく開発中

PADが提供するソフトウェアパッケージ「@mobi(※)」を鉄道業界で初めて採用し、自律移動が可能だ。さらに、ロボットアーム制御機能および自動充電機能を搭載することにより、外観検査を自動化する。プロダクトデザイナー・森澤有人氏によるカバーデザインは、ドクターイエローをイメージしたものだ。
※自律移動ロボットの各種機能を実現するソフトウェアパッケージ。センサー、コントローラーとアプリケーションをオールインワンパッケージで提供し、移動機構を持つロボットに組み込むことで簡単に自律移動を実現可能

設備検査ロボットはリニア中央新幹線の沿線各地に配置。外観検査を自動で行うことにより、人が現地へ移動する時間や点検にかかる労力や負担を削減することができる。2026年2月からは、3社で山梨リニア実験線において機能性の確認などの現地検証を実施し、今後の設備の点検・保全業務の効率化に繋げていく。