MotoGP第21戦ポルトガルGPは11月7日から9日にかけて、ポルトガルのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベで行われた。現地の雰囲気などをお伝えする。

丘陵のなかにあるサーキット

MotoGPポルトガルGPは、ポルトガルのアウトドローモ・インターナショナル・アルガルベで行われる。サーキットがあるのは、ポルトガル南部のポルティマオ。首都リスボンからは道のりにして約280km南下したところにある。

今回、筆者は成田空港からポルティマオに最も近いファロ空港まで飛んだ。といっても、ファロはあまり大きな空港ではないので、3度の乗り継ぎを挟んだけれども。というわけで、今回は日本からファロまで31時間かかった。リスボンからレンタカーを走らせる選択肢もあるのだが、リスボンの空港付近の道は比較的混み合うので、あまり走りたくはないのである。レンタカーで道を走っていて「後ろのクルマからプレッシャーを感じる」のは、イタリア、そしてポルトガルなのだ……。

宿はアルヴォルという街にとった。地元の人曰く、アルヴォルは「小さな“村”」であるらしい。ポルティマオの市街地にはショッピングモールなどの商業施設があってそれなりににぎわっているのだが、アルヴォルは静かなリゾート地、といった風情である。街の商店街はぎゅっとコンパクト。入り江がすぐ近くにあって、とても落ち着いて過ごすことができる。

もう少し西にはラゴスという街があって、こちらは大きなリゾート地。2018年のスーパーバイク世界選手権(SBK)ポルトガルラウンドの取材で訪れたことがあるのだが、ビーチやシーフードなど、「外国人観光客」として楽しめる場所だった。今となってはアルヴォルのような街のほうが落ち着くし楽しいのだけど、これは好みの問題だろう。レース観戦として滞在するなら、観光もできるしレストランも多いので、ラゴスのほうがおすすめだ。

ちなみに、日本とポルトガルの時差は9時間。隣国のスペインは8時間だが、ポルトガルではロンドンと同じくグリニッジ標準時なので、1時間の時差が生じている。筆者はポルトガルGPのあと、翌週に行われたバレンシアGPを取材するためにスペインに移動した。ここで腕時計やパソコンの時間を1時間修正することが、移動の間はけっこう重要だったりする。過去に失敗しそうになったことがあるのだけど、「まだ1時間、余裕があるな」と勘違いして、飛行機に乗り遅れないようにするためだ。

アウトドローモ・インターナショナル・アルガルベは、丘陵のなかにつくられたサーキットだ。そのレイアウトは地形を利用したもので、アップダウンが激しく、ブラインドコーナーも多い。特殊なレイアウトのコースだと言われている。

サーキットの入り口©Eri Ito

そんなサーキットだから、周りは山に囲まれているし、到着するまではしばらくワインディングが続く。南ヨーロッパでよく見られる赤茶の土と濃い緑の背の低い木々が、サーキットから見晴らすとよく見える。そこに、サーキットという人口建造物がおさまっていて、MotoGPマシンが甲高いエキゾーストノートを上げて走り抜ける。個人的に、風景としてとても美しいと思うサーキットの一つだ。

今年のポルトガルGPは、ポルトガル人ライダー、ミゲール・オリベイラがMotoGPライダーとして母国を走る最後のレースだった。オリベイラは、2026年にSBKに参戦するのである。MotoGPライダーとしてはオリベイラが唯一のポルトガル人だった。

MotoGPライダーとしては最後の母国グランプリとなったオリベイラ©Eri Ito

ポルトガルGPの週末に取材をしていると、観客席から熱心な拍手や歓声がオリベイラに送られていた。日曜日の決勝レース前には、メインストレート上でオリベイラにとって最後のレースのセレモニーが行われた。このときの歓声はひときわ大きく、オリベイラの功績を感じさせた。

では、ポルトガルでMotoGPが非常に人気かといえば、そうでもないらしい。過去に泊まったホテルのスタッフの女性たちに尋ねたとき、「ニッチだよね」ということだった。といっても、ポルトガルの通信会社の広告にオリベイラが起用されていたので、「(サッカーに比べたら)ニッチだよね」ということなのだろうと思う。

筆者は国々で、チャンスがあれば「MotoGPを知っていますか?」「この国で人気のスポーツは何ですか?」と聞いて回っているのだけど、その度にサッカーの人気を感じる。イギリスでも、スペインでも、イタリアでも、そしてポルトガルでも。なにしろ、UEFA EURO 2024がドイツGPの週末に開催されていたとき、夕方にメディアセンターのテレビのチャンネルが、ドイツ対スペインの試合に合わされたくらいなのだ。メディアセンターで大いに自国を応援したドイツ人とスペイン人のジャーナリストやフォトグラファーたちは、試合が終わるとさっさと帰っていった……ということもあった。

さて、2026年シーズン、ポルトガルGPは今季と同じく第21戦に予定されている。雰囲気の変化が気になるところだ。

左がグランドスタンド。特に決勝レース前には大きな歓声が上がっていた©Eri Ito
丸い建物付近は難しいと言われる5コーナーあたり©Eri Ito
サーキットのなかにあるプール。優勝したライダーなどがよく飛び込むが、それ以外の用途は不明©Eri Ito