かつてポルシェ911をベースとして開発、997シリーズのポルシェ911を頂点にまで引き上げた「9ff GT9」シリーズだが、そのトップグレードとして発表された「9ff GT9 Vmax」を振り返ろう。
「9ff」とは?
北ドイツ、ヴェストファーレン州の都市ドルトムントに拠点を置く9ffは、Ruf、Brabus、Gunther Werksといった、カリスマ名門チューナーに大きな影響を受けたチューニング会社だ。
9ffを創業し、経営しているのは、正真正銘のポルシェ愛好家、ヤン・ファットハウアーだ。ファットハウアーは自動車工学の学位を取得し、その後、他社のパフォーマンスショップで経験を積んでしる。
同氏は、2001年に自身の事業を立ち上げ、既存のポルシェのローリングシャシーをさらに洗練させ、そして何よりも、はるかに速くすることを目指した。2004年までに、9ffは初の世界記録を樹立、750ps近くを発揮する996シリーズ911で、イタリアの有名なナルドリングで時速231マイル(372km)を記録したのだ。

9ff T6と名付けられたこの超特別な車は、どのチューニング会社にとっても最高の偉業となり、2005年には日本市場にも参入している。そして、まさにその同じ年に、9ffはチューンされた水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載し、驚異の843psを後輪に伝える「V400」を発表した。カーボンファイバー製のボディ、最新の空力パッケージ、そして加速時の力に対応する強化された6速ギアボックスを採用していた。

しかし、V400は9ffへのウォーミングアップに過ぎなかった。というのも、その後に登場したモデルは同じフォーマットを採用しつつ、さらに進化を遂げたからだ。
GT9プロジェクト
そこで登場したのがGT9プロジェクトだ。当時最新だった997プラットフォームを、再び世界最速の称号を争えるマシンへと改造しようと試みたのだ。しかし、最終的にGT9の内部構造は、ポルシェというよりはむしろ9ffらしさを増していいった。ほぼ全ての911の伝統を破り、まず最初に取り組まれたのは、ボクサーエンジンを車体後部から車体中央に移設することだった。

9ff GT9は、997をベースに4.0L水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載し、最高出力987ps・最大トルク964Nmを発揮した。その後R、CS、Vmaxと進化し、究極のGT9となった「Vmax」では、4.2Lの排気量までスープアップされたエンジンブロックと、2.0bar=2.0kg/cm2(29.4psi)までブーストアップされた、さらに大型のギャレット製ターボチャージャーを搭載していた。

クランクシャフトはビレット製で、その他の内部部品はGT9-Rとは別注品だった。当時9ffモデルに搭載された最大のインタークーラー、高流量燃料インジェクター、そして9ffモデルに施された最もアグレッシブなエンジンチューンが特徴的だった。

この4.2L水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載し、最高出力1400ps・最大トルク1160Nmを発揮。また、カーボンファイバー製ボディの採用によりわずか1340kgを実現。最高速度438km/h、0-100km/h加速3.1秒という脅威のパフォーマンスを誇った。

GT9 Vmaxは、時代を超越したポルシェのルックスと、スポーツカーではなく第二次世界大戦の戦闘機に匹敵するパワーを誇るエンジンを積み、あのブガッティ「ヴェイロン」の最高速度431.072km/hを破り、観客を魅了した。

しかし、GT9 Vmaxがデビューした直後、親会社は2013年9月に破産申請をしてしまったのだ。9ffは破産を乗り越え、翌月には新たな経営体制のもとで再建され、すぐに新型991、そして後に992シリーズのポルシェ911に焦点を当て、白紙の状態からデザインを刷新し、今日までドイツで生産を続けている。
9ffは長い間、新型モデルを発表していないが、現在最も権威あるチューニングブランドRUFを超える新型GT9シリーズを開発して欲しいものだ。