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今日は何の日?■セダンより背は高いが、ハイトワゴンよりは背の低いMRワゴン

2001(平成13)年12月4日、スズキはトールワゴン「MRワゴン」を発売した。MRワゴンは、セダン「アルト」とハイトワゴン「ワゴンR」の中間的な位置づけで開発され、街並みが似合う柔らかくワンモーションの新鮮なデザインが特徴だった。
人気のワゴンRより45~90mm背の低いMRワゴン

2001年12月のこの日、「MRワゴン」はデビューした。“大人4人がくつろいで座れる広さと心地よさ”をコンセプトにお洒落なタウンカーを目指した。

ちなみに、車名に付いているMRと聞くと、“ミッド(M)シップ・リア(R)ドライブ”を連想する人が多いかもしれないが、実は1999年の東京モーターショーで展示されたコンセプトカー「MRワゴン」は、正真正銘MRだった。市販化される段階でFFとなり、MRは“マジカル・リラックス”の意味となったのだ。

MRワゴンの全長、全幅、ホイールベースは2代目ワゴンRと同じだが、全高が1600mmで2代目ワゴンRの1645mm~1680mmに比べて最大で80mm低いトールワゴンである。スタイリングは、ボンネットからバックドアまで一体となったモノフォルムで、街並みが似合うタウンカーとして新鮮なデザインを採用。ちなみに、MRワゴンは“2001-2002“グッドデザイン賞を受賞した。
パワートレインは、最高出力54ps/最大トルク6.4kgmを発揮する660cc 直3 DOHC VVT(可変バルブ機構)と、同エンジンで60ps/8.5kgmのインタークーラーターボの2種エンジンと、4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFと4WDが用意された。
車両価格は、2WD仕様で97.8万~127.5万円(NA車)/125.0万円(ターボ車)に設定。当時の軽自動車市場はワゴンRが巻き起こしたハイトワゴン旋風が巻き起こっていたので、ちょっと背の低いMRワゴンは十分なアピールができなかった。
MRワゴンには、FCEVもあった
2004年8月には、スズキとGMが共同開発した「MRワゴン・FCV」用の70MPa圧縮水素タンクが日本で初めて高圧ガス保安協会の認可を取得し、年末にはFCVとして国土交通大臣の認定を取得した。

スズキは、2001年から本格的なFCEVの開発をスタートさせ、GMの燃料電池とスズキが開発した高圧水素タンクを組み合わせ、2003年には35MPa高圧水素タンクを搭載した「MRワゴン・FCV」が認可を受けて公道試験を行った。35MPaに続いて70MPaの高圧水素タンクが2004年に高圧ガス保安協会の認可を取得し、年末にはFCEVとして国土交通大臣認可を取得したのだ。
MRワゴン・FCVの最高出力は38kW、最高速度110km/h、満充填時の航続距離は35MPa仕様の2倍に相当する200kmを達成した。ただし市販化はされずに、成果は2008年に認可を受けた小型燃料電池車「SX4-FCV」に繋がった。
2代目と3代目では次々とコンセプトが変更

・2代目(2006年1月~)のメインターゲットは、子育て中のママ
“Mom’s Personal Wagon(ママと子どものためのワゴン)“が開発コンセプト。丸目2灯ヘッドライトとサイドを走る伸びやかなキャラクターライン、フレアしたリアフェンダーなどを取り入れた丸みを帯びたデザインと、機能的で使いやすさを重視した温かみのあるインテリアが特徴だった。
ママの便利さや子どもへの優しさを重視し、キーレススタートシステムや前席ウォークスルーを可能にしたインパネシフト、消臭天井&シートなども採用。パワートレインは、全車オールアルミ製DOHC VVTで、最高出力54psのNAと60psのインタークーラーターボエンジン2種と4速ATの組み合わせ。


・3代目(2011年1月~)のメインターゲットは、若者
若年ユーザーを想定し、“低燃費、広々空間、個性あふれるデザインで新しい価値と魅力を兼ね備えた新感覚軽ワゴン”が開発コンセプト。ラウンドした面構成に半円のヘッドランプを採用したダイナミックなフロントデザインによって、若々しいスタイリングを実現。また、新プラットフォームによって居住性は高められ、インテリアには先進的なデザインの静電容量式タッチパネルオーディオやiPodなども接続可能、バックモニターも装備された。
パワートレインは、新開発したスズキの新世代エンジンDOHC 吸排気VVTで、最高出力54psのNAと64psのインタークーラーターボエンジン2種とCVTの組み合わせ。
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タウンカーでスタートしたMRワゴンだったが、その後2代目は子育てママ、3代目は若者と、ターゲットがコロコロ変わる展開となってしまった。ハイトワゴンブーム、その後スーパーハイトワゴンブームという大波の中では、背がやや低いトールワゴンでは存在感をアピールするのはなかなか難しかったのだろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。







