本実証では、既設の太陽光発電設備およびアイシンのペロブスカイト太陽電池で生み出した電気を水電解装置及び周辺機器に活用し、生成された水素を水素タンクに貯蔵する。そして貯蔵した水素を、アイシンのSOFCで発電することで港湾施設の照明等への電力供給が実施される。これにより、長期貯蔵が可能である水素の特徴を活かした防災用途としてのグリーン水素※3の製造と電力供給の有効性をが実証される。なお本実証の運用管理は、気象観測付きエネルギーマネジメントシステム(エノア)が行う。

ペロブスカイト太陽電池は、薄型・軽量・曲がるという特徴がある次世代型太陽電池である。建物の壁面や耐荷重に制限がある屋根など、従来のシリコン太陽電池では設置が難しい場所にも適用できることから、再生可能エネルギー普及への貢献が期待されている。アイシンは、20年以上にわたる有機系太陽電池の研究開発で構築された技術を活かした高い発電効率と、薄ガラスを用いた独自のフィルム構造による高い耐久性の実現をめざし、湾港環境での稼働状態の確認等を検証する。

舞鶴港国際埠頭に設置されたペロブスカイト太陽電池

SOFCは、水素と酸素を化学反応させることで発電し、発電時にCO2を排出せず、高い発電効率が得られるクリーンなエネルギーシステムである。これまで家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファームtype S」の開発・製造で培われたSOFCの熱マネジメント技術や燃料利用率向上技術を応用することで、高効率発電、高耐久、長期の定格連続運転の実現をめざし、実用性の検証が進められる。

舞鶴港国際埠頭に設置されたSOFC
機器仕様機能純水素発電(10kW級)
発電効率60%以上
本体寸法W1,700×D780×H1,800

【注釈】

  1. 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業(JPNP21052)の成果を活用
  2. 環境省の地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業の成果を活用
  3. グリーン水素:製造過程においてCO2を排出しない水素