軸受トルクは適用されるアプリケーションのパフォーマンスや省エネルギー性などに大きく関わる性能で、顧客のアプリケーションに軸受を適用した際の軸受トルクは、通常、軸受メーカーが自社で開発した計算プログラムを用いて行われる。
近年、EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)の省エネルギー化が進められる中、これらの車両のモーターや減速機に使用される軸受の低トルク化は普遍的な課題となる。これらの軸受は従来よりも高速回転性能が求められるために、高速回転条件下でもより高精度にトルクを計算する手法の開発が求められていた。
新たに開発したトルク計算手法は、軸受のボールが通過する軌道面に着目し、ボールと軌道面の接触域と非接触域を分離して計算するものである。従来は接触域のみが計算対象とされていたが、新たに非接触域も計算対象とすることで、トルクを発生させる要因をより細かく計算でき、各要因がトルク増加につながるメカニズムを明らかにすることに成功。本手法により高速回転条件におけるトルク計算の精度を従来比で最大50%向上させることに成功した。本手法を幅広い条件下で用いることができる計算式を作成し、社内の計算プログラムへの適用が完了されている。
本手法はトルク増加に影響を与える要因を明らかにしたことにより、これまで軸受の内部設計面でトルク減少に有効とされていたアプローチの妥当性の説明や、各使用条件においてどのような低トルク化の内部設計が有効であるかを短時間で明らかにすることも可能となる。本手法を用いて将来的には、潤滑油や保持器など軸受を構成するさまざまな要素における軸受の低トルク化技術の開発にも応用されていく。
加えて、高速回転条件下におけるトルク計算の精度向上により、NTN社内の工数削減も可能で、今後さらなる需要拡大が見込まれるEV用軸受の検討・提案スピードの向上にもつなげられていく。

