目の前の研究活動だけでなく、さまざまな事柄に関心を持ち、それを探求していくヤマハ発動機 研究部門の風土は確実に受け継がれている

研究部門に配属された新入社員が「自動運転AIチャレンジ2025」に出場。一般クラスで見事3位に入賞

「よくやったと思います。ライブ中継で見守っていた会社の人たちも、声を上げて応援していました。彼らの熱量がまわりを引き込んで、そういう気持ちにさせたのだと思います。(彼らが)一つひとつひたむきに積み上げてきたものが、決勝の舞台で現場対応力として発揮された。それが一番、うれしかったですね」

笑顔でそう振り返るのは、ヤマハ発動機 知能化研究部の小林謙太さんと羽部安史さん。おふたりは「自動運転AIチャレンジ2025」の一般クラスで3位に入賞した「Revs-Lab」のサポーターとして、約4カ月間にわたって4人のメンバーの活動を支えてきた。

「Revs-Lab」は、同社研究部門に配属された新入社員によるチーム。研究者としてのベースを築き、成長の糧を得る修練の場として、「自動運転AIチャレンジ」へのエントリーが決定したのは今年6月。企業や大学180チームが参加した一般クラスで、「3位入賞? いや優勝!」という高い目標を掲げて出場することとなった。

とはいえ、メンバーのうち3人は機械工学系の人材。もちろん、AIの基礎知識や、企業の一員としてプロジェクトを推進した経験もない。行き詰ったときの相談役として、先輩にあたる中堅研究者の小林さんと羽部さんが寄り添いながらのチャレンジだった。

「”準備で9割が決まる”という指導を受けて、すべての準備をやりきった」、「それが決勝の走りでできた時は感動した」と、声をそろえる新入社員たち

「4人は新入社員同士の横並び。意思決定のプロセスにも苦悩が見えた」と小林さん。しかし、オンラインシミュレーションによる予選を見事2位で通過するなど、目標とする優勝も次第に現実味を帯びていった。

予選上位7チームが参加した一般クラスの決勝は、レーシングカートを自動運転で走らせラップタイムを競うもの。当日は本降りの雨となり、「シミュレーション上ではうまくいっていても、実機ではそうはいかない。雨ならさらに難しくなる」と小林さん。

しかし、「スピンを起こす場面もありましたが、周回ごと、コーナーごとに挙動を見て、彼らは適切にパラメーターを変更していった。パニックを起こしてもおかしくないシーンで冷静に対応できたのは、十分な引き出しを準備して、どんな状況でもコントロールできるシステムを用意していたことに尽きると思います」と、羽部さんも手放しの賛辞を贈る内容で3位に入賞した。

経路の追従性とコーナーごとの適切な制御で他をリードした「Revs-Lab」。「私たちがアドバイスしたのは、停滞した時の論点整理など最小限のことだけ」(小林さん)、「寄り添った私たちにとっても、4人を同時にOJT(※)するようなチャレンジがあった。そういう意味で、互いに学び、成長のあった密度の濃い4カ月間になりました」(羽部さん)
※オン・ザ・ジョブ・トレーニングの略。職場での実際の仕事を通じて、先輩や上司が部下や後輩に知識やスキルを教え習得させる育成手法

「Revs-Lab」チームの強みは、精度の高い経路の追従性と、コーナーごとに分割した繊細な制御。レインコンディションでも、その強みを発揮した

チームが開く「朝会」にも、小林さんと羽部さんは毎朝参加。開発の進捗状況を見守りながら、ときには中堅研究者ならではの視野で、「ここは大丈夫か?」と転ばぬ先の杖の役も担った。業務に直結する目の前の研究活動だけでなく、さまざまな事柄に関心を持ち、それを探求していくヤマハ発動機 研究部門の風土は、先輩から後輩へ確実に受け継がれている。