本研究は理化学研究所をはじめとした日本の研究機関と世界第二位の天然ゴム生産国であるインドネシアの研究機関の産官学からなる体制で実施する国際共同研究である。タイヤの原材料を含め⼯業的に使われているほとんどの天然ゴムはパラゴムノキから作られているが、現在、インドネシアを中心に葉枯れ病の感染が拡大し、ゴム生産に深刻な被害を与えている。本研究では殺菌剤による葉枯れ病菌の駆除と病害に耐性をもつクローンの育種基盤構築、人工衛星やドローン画像による感染地域の早期検出といった多角的なアプローチにより、インドネシアの天然ゴム生産の90%以上を担う小規模農園での生産安定化が目指されている。

横浜ゴムはプロジェクトが立ち上げられた2020年より協力会社として本研究に参画し、2024年からはスクリーニングにより選定された殺菌剤が天然ゴムの品質に与える影響の調査を開始。すでに大規模農園でのフィールド評価において、適切に散布・使用すれば殺菌剤がゴムの特性および加硫物性に影響を及ぼさないことが確認されており、現在は本研究がターゲットとする小規模農園での影響調査に協力している。

横浜ゴムは「持続可能な天然ゴムの調達方針」の中で、小規模農家を含むサプライチェーンに関わる方々への支援を掲げており、本研究への参画により、天然ゴムの生産および農家の収入の安定化に貢献。なお、SATREPSの研究課題では天然ゴム種子の有効利用により環境問題解決を目指す「未利用天然ゴムの種の持続的カスケード利用による地球温暖化およびプラスチック問題緩和策に関する研究」にも連携機関として参画している。

葉枯れ病に感染したゴムノキ

研究の概要

研究課題名

ゴムノキ葉枯れ病防除のための複合的技術開発

代表者

松井 南(理化学研究所環境資源科学研究センター 客員主管研究員)
スロソ ラフトモ(インドネシアゴム研究所 所長)

具体的課題

1. ゴムノキ葉枯れ病に対する新規殺菌剤の候補化合物の開発
2. ゴムノキ葉枯れ病に対する新規微生物殺菌剤候補の微生物製剤の開発
3. ゴムノキ葉枯れ病抵抗性クローンの作出
4. 人工衛星およびドローンデータを用いたゴムノキ病害罹患地域検出システムの開発
5. インドネシアの次世代ゴムノキ病害抑制に係わる研究開発および社会実装基盤の構築

共同研究相手国/相手国研究機関

インドネシア/インドネシアゴム研究所、インドネシア大学

国内研究機関

理化学研究所 環境資源科学研究センター、岐阜大学、理化学研究所 光量子研究センター、
前橋工科大学、横浜市立大学