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今日は何の日?■初代の魅力をさらに高めた2代目タント

2007(平成19)年12月17日、ダイハツは人気の軽「タント」をモデルチェンジして2代目を発売した。タントは、2003年11月にデビューして、圧倒的な広い室内スペースを実現するスーパーハイトワゴンという新たな軽のジャンルを開拓。2代目は、さらに広く、また画期的なミラクルオープンドアの採用で使いやすさも追求した。
元祖スーパーハイトワゴンのタント誕生

スズキ「ワゴンR」が火付け役となったハイトワゴンブームで軽市場が盛り上がる中、2003年11月にダイハツは独自のパッケージングでさらに車高を高め、クラス最大級の室内スペースを実現したスーパーハイトワゴン「タント」を発売した。

ボディサイズは、標準グレードで全長3395mm×全幅1475mm×全高1725mm(ムーヴより105mm高い)、またホイールベースは軽最大の2440mmにして、フラットで圧倒的な室内スペースを達成。ボディ骨格には、進化版衝突安全ボディ“TAF”を採用し、左右分轄でロングスライドできるリクライニングの格納機構付きリアシート、大きな開口部のリアゲートなどで利便性が高められた。

スタイリングは、エンジンフードを極端に短縮し角を丸めたボクシーなフォルムで、直角に近いAピラーと大きなウインドウガラスが特徴。パワートレインは、最高出力58ps/最大トルク6.5kgmを発揮する660cc 直3 DOHCと64psの同エンジンインタークーラーターボエンジンの2種エンジンと、2WD(FF)が4速AT、4WDが3速ATまたは4速ATの組み合わせである。
タントは、圧倒的に広い室内スペースと使いやすさが子育てファミリー層の支持を集め、発売1ヶ月で1万台を超える受注を記録し、その後も月販台数で8000台をキープする大ヒットモデルとなり、スーパーハイトワゴンという新たな軽自動車のジャンルを開拓した。
ミラクルオープンドアで利便性をアピールした2代目タント

2007年12月のこの日にモデルチェンジした2代目は、軽自動車として初となるセンターピラーレスとスライドドアで構成される“ミラクルオープンドア”が大きな注目を集めた。

初代よりもホイールベースを2440mm→2490mmに拡大し、初代はヒンジドアだったものを助手席側後席はスライドドアに変更し、さらにセンターピラーをなくした。これにより、フロントドアとリアスライドドアを全開すると、幅1480mm×高さ1355mmの圧倒的な広さの開口部を実現。このミラクルドアによって、初代にも増して広い室内スペースと楽々の乗降性ができるようになったのだ。

2代目タントのデザインは先代のイメージを踏襲しつつ、メインターゲットであるママ層をより意識して、可愛らしさを強調して女性志向を強めた。インテリアについても、低くワイドなセンターメータークラスターと、浮き上がったように見えるシルバーセンタークラスターの採用により、機能性とお洒落感が演出された。

パワートレインは、最高出力52ps/最大トルク6.1kgmを発揮する660cc 直3 DOHC DVVT(可変動弁機構)と4速ATおよびCVTの組み合わせ。駆動方式は、FFと4WDが用意された。ターボエンジンも設定されたが、「タントカスタム」用だった。


安全性能については、衝突安全ボディ“TAF”の採用によって、衝撃分散式ボディ構造や高張力鋼板・差圧鋼板を使って、優れた衝撃吸収性能と軽量化の両立に成功した。

車両価格は、108.15万~140.7万円(2WD)/120.225万~133.875万円(4WD)だった。
ピラーレスドアでも側突試験は最高ランク

2代目タントのピラーレス構造は、一見すると側突安全性が劣るようにみえるが、他と比べて決して劣っているわけではない。ピラーレス構造ながら、ドアに通常の5倍の強度を持つハイテン材(超高張力鋼板)を使ったピラーを内蔵し、側面衝突の衝撃を分散する構造、さらにドアロック数を増やすなどして、車体剛性と衝突安全性を高めている。

その結果、タントはNASVA(自動車事故対策機構)の側突試験で、最高ランクのレベル5を獲得し、ピラーレスでも衝突安全性に問題ないことが実証されている。ちなみに側突試験とは、試験車(タント)のピラーレス側に90度方向から1.3トンの台車を時速55km/hで衝突させて、助手席のダミー(人形)の被害状況から乗員保護性能を評価する方法である。
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2代目タントのミラクルオープンドアによる広い開口部は、特に子供の乗り降りや買い物時の荷物の出し入れなどに大変便利で、タントの人気上昇に大いに貢献した。ただし、3代目タントでは、両側スライドドアが採用されたため、ミラクルオープンドアは廃止された。利便性の高いシステムだが、強度アップのためのコストアップや車重増しといった課題が払拭できないのも事実である。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
