まずは貢献して仲間になる、電気自動車で地域と連携。

「ヒョンデは販売という点ではまだ大きなプレゼンスを見せることができていないが、我々が(22年に)日本に戻ってきた目的はそこではない。ヒョンデというクルマをご理解いただき、お使いいただいて、その結果、いろいろな場所で日本の皆さまに貢献していく。日本の皆さまのお役に立ち、そして仲間として迎え入れていただきたい、というのが大きな目的だ」
12月15日、木更津市役所で行われた「電気自動車を活用したまちづくり連携協定」の締結式で、Hyundai Mobility Japan(以下ヒョンデ)の七五三木敏幸社長はこう語った。

近年、自動車メーカーや販売店と地方自治体との連携協定が全国に広まってきた。その多くは災害時にBEVやPHEV、FCEVを電源として貸し出す、もしくはそれに備えて公用車として貸与/贈与するという災害対応を主眼とした連携だが、都市づくり/まちづくりに範囲を拡大する例も増えている。
ヒョンデは2024年以降、豊橋市、富山県舟橋村、横浜市、滋賀県の大津市と栗東市、鹿児島県屋久島町と連携協定を結んできた。今回の木更津市との協定はそれに続くものだ。
木更津市は2016年に「オーガニックなまちづくり条例」を施行し、「オーガニックシティ」をキーワードに、人と自然が調和した持続可能なまちづくりを推進してきている。
ちょうどいい使い勝手が話題のインスターを寄贈
市のホームページによれば、オーガニックとは「持続可能な未来を創るため、地域、社会、環境等に配慮し、主体的に行動する」こと。その一環で公用車にBEVを導入してきた。2025年度当初の時点で、65台の公用車のうち8台がBEV。今後は毎年4台ずつ入れ替えるが、新規の公用車はすべてBEVにするという。
さらに今回の連携協定の締結にともなって、ヒョンデから1台のインスターが寄贈された。木更津市の渡辺芳邦市長は締結式でヒョンデに謝辞を述べた上で、その意義を次のように指摘した。
「公用車への電気自動車導入は温室効果ガスの排出削減に直結するだけでなく、市民の環境意識の啓発にもなる。災害時には避難所等で活用するが、これまでも市のイベントの多くは電気自動車を使うことで発電機なしで行っているので、今後はインスターをそれに全面的に活用したい。今回の協定締結を契機に、持続可能な社会づくりに向けてヒョンデと共に進んでいく」
災害時ではない平時の市民イベントでBEVを電源供給車に使うのは、なるほど環境意識の啓発に役立ちそうな施策だ。

次は限界集落への貢献、10人乗りぐらいのミニバンを導入?

その一方、ヒョンデの七五三木社長は記者とのQ&Aのなかで、同社の自治体連携の新しい可能性に言及した。
「限界集落など公共交通の維持が難しい地域にヒョンデの本社が持っている乗り合い車両を導入し、地域の足として使っていただくことを考えている」
4月に締結した屋久島町では、ヒュンダイが中型バスのELEC CITY TOWNを地元の交通事業者に5台納入しているが、これは全長9m。七五三木社長は「そういう地域に9mは大きすぎる。それではなく10人か11人乗りの、ミニバンに近いものでお役に立ちたい。まだ日本には導入していない車両だ」と語った。
ヒョンデのミニバンと言えばスターリア。豊富なシートバリエーションを揃え、4列11人乗りもある。ただしスターリアは現状、ハイブリッドがあるとはいえエンジン搭載車だ。ゼロエミッション車だけを日本導入するヒョンデの方針に合致しない。ネット検索するとBEV仕様が韓国メディアにスクープされているようだが・・、果たして?
