連載
今日は何の日?■タイ生産の小型セダン・フィットアリアを日本で輸入販売

2002(平成14)年12月20日、ホンダは2001年にデビューして大ヒット中のコンパクトカー「フィット」をベースにしたコンパクトな3BOXセダン「フィットアリア」を発売した。フィットアリアは、タイのアユタヤ工場で生産し、日本には輸入車の形で投入された。
ホンダ伝統のMMコンセプトで大ヒットしたフィット


1999年にデビューして大ヒット中だったトヨタのコンパクトカー「ヴィッツ」に対抗したのが、ホンダの「フィット」である。ホンダ伝統の“MM(マンマキシマム・メカミニマム)思想”、すなわち“人のためにスペースは最大に、メカは最小”に基づいて開発された。
最大の特徴は、コンパクトカーでありながら圧倒的なスペースユーティリティを実現したこと。通常は後席下に配置する燃料タンクを、前席下の車両中央に配置したセンタータンクレイアウトを採用して、ワンクラス上の低床の室内空間を生み出したのだ。
パワートレインは、新開発の1.3L 直4 SOHC i-DSIエンジンとホンダマチックS-CVTの組み合わせ。i-DSIは、1気筒の燃焼室に2つの点火プラグを対角に配置し、点火タイミングをずらすことで急速燃焼を実現する方式。これにより、燃費はクラストップの23km/L(10-15モード)が達成された。
車両価格は、ローグレード(2WD)で106.5万円からハイグレード(4WD)144.0万円に設定。2001年の販売は、半年足らずで10万台を超え、翌2002年は25万台を記録。2年目でカローラを凌ぎ、ホンダとして初の登録車トップの座を獲得したのだ。
タイ生まれのフィットアリアはマルチユースなコンパクトセダン

フィットアリアは、5ドアハッチバックのフィットをベースにトランク部を伸ばして3BOXスタイルに仕上げられた。ボディサイズは、フィットよりも全長が480mm長く、全幅は15mm広く、全高は40mm低く、ホイールベースは同じだった。

フィットアリアのセールスポイントは、広い室内空間と圧倒的なユーティリティだった。フィットと同様に、センタータンクレイアウトの採用によって、シートアレンジも可能な広い後席空間とクラストップレベルのトランク容量が実現された。
スタイリングは、個性的な縦長形状のヘッドライトと、リアウインドウを寝かしたスムーズなラインで構成。インテリアについては、室内基調色を明るいベージュで統一し、インパネやコンソール部に木目パネルを配し上質さのアピールも忘れていなかった。

パワートレインは、最高出力90ps/最大トルク13.4kgmの1.5L 直4 SOHC、86ps/12.1kgmの1.3L 直4 SOHCの2種エンジンとCVTの組み合わせ。駆動方式はFFと4WDが用意された。
車両価格は、2WD仕様で119.8万円(1.3L車)/139.8万円(1.5L車)に設定。セダン人気がまだ高いアジア市場では人気を獲得したが、日本ではフィット人気に埋もれて存在感を示すことはできなかった。
2000年以降、タイ生産の輸入車が急増
2000年以降、日本メーカーはタイで生産したクルマ、特にコンパクトカーを日本に輸入して販売するケースが増えている。2010年に発売された日産自動車の4代目「マーチ」、2012年に発売された三菱自動車の6代目「ミラージュ」がその例である。マーチもミラージュも、低価格をアピールポイントのひとつとしていた。

その背景にあるのは、タイの生産品質の向上やタイ政府の自動車産業育成対策による優遇措置、アジア市場におけるコンパクトカー需要の増加などである。
タイは、“アジアのデトロイト”を目指して、積極的に自動車産業の育成に注力して優遇税制措を行なうなど、海外メーカーの進出を奨励してきた。これによって、ほとんどの日本メーカーがタイに進出し、タイに工場を建設して現地生産を始めた。また2000年以降は、タイやインドなどでモータリゼーションが爆発的に進展して、特にエントリーモデルとしてのコンパクトカーや小型ピックアップが人気を集めて、市場が活況を呈していた。
タイからの輸入車は輸入関税がかからず、タイの人件費や原材料が比較的安価であるため価格を抑えることができる。初期には不安視されていた品質についても長年の経験から問題とはならず、さらにタイ政府からの支援もあることから、タイ生産車の日本への輸入が増えているのだ。
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コンパクトハッチバックをベースにしたセダンには、トヨタ「プラッツ&ベルタ(「ヴィッツ」ベース)」やスズキ「SX4セダン(ベース「SX4」)」、スズキ「エリオセダン(ベース「エリオ」)」などがあった。ベースのハッチバックモデルが人気モデルで印象が強いため、日本市場ではセダン人気が低迷していることもあり人気はイマイチだった。さらに、ハッチバックの後部にトランクをつけ足したようなデザインになることが多いのもマイナスイメージになる。
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