チューニング・カスタムカスタムチューナー伝説パフォーマンスアップシビックタイプR ホンダ

「派手さゼロ、でも完成度100％」歴代シビックに精通した関西の名門が現行タイプRをチューニング！

2025.12.21 15:00

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外観もエンジンも、ほぼノーマル。それでもサーキットでは確かな速さと安定感を見せる。ゼロファイターが目指したのは、過剰な主張を排した“機能美”の追求だった。電子制御を活かした足回りと要点を押さえた補強で、FL5本来の性能を引き出す。静かに完成度を語る一台だ。

ダウンサス仕様でも高いスタビリティを実現！

フルノーマルエンジンで作り上げるファーストステップ仕様！

ゼロファイターは、ホンダ車のチューニングを主力とする名門ショップ。とくに往年のシビック（EF、EG、EKなど）をベースとしたマシンメイクやVTECチューンには定評があり、レーシングファクトリーも運営。JAF戦などへ参戦するカスタマーを数多く抱えている。

今回紹介するFL5型シビックタイプRは、そんなゼロファイターが新たに手掛けたデモカーだ。コンセプトは「サーキットエンジョイ仕様」。サーキット専用マシンの製作を得意とするゼロファイターメイドとは思えないほど、仕上がりはシンプルかつ控えめで、カスタム箇所はごくわずか。しかし、それこそが「FL5に最も合っている」と、ゼロファイターの林さんは語る。

「レーシングマシンを手掛けるプロの目から見ても、このクルマの完成度は非常に高い。ノーマルのままでも十分にサーキットを走れる性能を備えており、チューニングはほとんど必要ないと感じます。必須と言えるのは、せいぜいブレーキと足回りの強化くらいでしょう」。

クルマの“弱点を見抜く力”に長けた林さんがそう言い切るほど、FL5のポテンシャルは高い。サーキットを安全に楽しむためにはチューニングが不可欠だった往年のシビックとは異なり、令和のタイプRは、まず「ライトチューンで純正性能を味わう」のが正解だという。

エンジンは過給圧を含め、完全ノーマル仕様。パワーを確実に使い切るため、クラッチの強化とLSDの装着のみを行っている。パワートレーンは当面、ノーマルを維持する方針だ。

足回りは、純正の電子制御ダンパーを活かしたダウンサス仕様。オリジナルスプリングのレートはフロント5.2kg/mm、リヤ5.5kg/mmで、ダウン量は約30mm。ECUとの整合性を重視しつつ、適度なローダウンとコーナリング時の粘りを両立させている。

フロントのボールジョイントは、オリジナルの調整式タイプに変更。ローダウンによるジオメトリー変化を補正しており、ネガティブキャンバー角はフロント4度、リヤ2度に設定されている。

リヤのトーコントロールアームおよびキャンバーアームには、ゼロファイター製オリジナルパーツを採用。純正電子制御サスでは限られるセッティング幅を、調整式アームで補っている。

ブレーキはパッドのみを強化。中〜高温域まで高いコントロール性を発揮する、制動屋の『RM551＋』を装着している。ABSとのマッチングも良好で、サーキット走行時の安心感は高い。

タイヤ＆ホイールは走行性能を重視した18インチ仕様。軽量なボルクレーシングCE28Nプラスに、ウェット性能と耐久性に優れるディレッツァZIII（265/35R18）を組み合わせる。

ベルトタイプが主流となる中、あえて往年のスタイルを貫くゼロファイターの『トラクションステーフック（牽引フック）』も装着。車種専用品で、わずかな加工で取り付け可能だ。

今回のインプレッションを担当したのは、塩津佑介選手と末廣武士選手の2名。まず塩津選手は、FL5に乗るのは今回が初めてだとしながらも、「ダウンサス仕様とは思えないほど安心感のある足まわりで、適度なロール量と底付き感のなさが印象的。ブレーキも安定した効きで、荷重コントロールが非常にやりやすかった」と評価。さらに、「タイヤ特性も、荷重移動やアクセルワークといったクルマの操作を学ぶにはちょうどよく、ドライビングスキルを磨くにはベストな仕様」と、全体のバランスの良さを強調した。

一方、末廣選手はFL5が持つ素性の良さに着目。「もともとFL5はFFでありながらリヤの粘りがしっかりしていて、サーキットでも安心して走れるクルマ。その特性がローダウンによって、さらに引き出されている印象」と語る。ただし、「ノーマル状態でも十分なパワーがあるため、コーナーでラフにアクセルを踏むとタイヤが空転しやすい」とも指摘し、「タイムを狙うなら、ハイグリップタイヤへ変更するだけでも、目標タイムに大きく近づけるはず」と、今後のアップデートポイントを示した。