原付二種で扱いやすい“本格派”オン・オフモデルとして登場
ヤマハ発動機販売は2025年12月18日、原付二種クラスのオン・オフモデル「WR125R ABS」を発表した。発売は2026年1月30日を予定している。本モデルは「オフロードの世界に飛び込める青い相棒」をキーワードに掲げ、オンロードから未舗装路までをシームレスにつなぐマルチパーパスなキャラクターを特徴とする。免許取得直後のライダーでも扱いやすく、それでいて本格的なオフロード体験への入り口となる一台として位置づけられている。

WR125Rは、ヤマハのオフロードモデルが長年培ってきた思想を原付二種クラスに凝縮した存在だ。日常の通勤・通学といったタウンユースに適応する実用性と、週末に舗装路を離れて自然の中へ踏み込む楽しさを両立させることを狙いとしている。単なる入門用にとどまらず、オフロードの世界観や仲間とのつながりといった体験価値まで含めて提案する点が、このモデルの大きな特徴である。
VVA搭載124ccエンジンが実現する扱いやすさと走りの余裕
心臓部には、水冷SOHC4バルブの124cm³単気筒エンジンを搭載する。可変バルブ機構であるVVAを採用し、低速域と中高速域で吸気側カムを切り替えることで、全回転域にわたって扱いやすい出力特性を実現した。最高出力は11kW(15PS)を1万回転で発生し、最大トルクは11Nmを6500回転で発揮する。オフロードで求められる粘り強さと、オンロードで交通の流れに乗るための余裕を高い次元で両立している点が注目される。

このエンジン特性に、低速トルクを重視した二次減速比が組み合わされることで、発進と停止を繰り返す市街地走行でもストレスの少ないフィーリングを実現している。また、WMTCモード値で40km/Lを超える燃費性能と8.1Lの燃料タンクにより、航続距離にも余裕がある。日常使いからツーリングまで幅広い用途を想定した設計であることがうかがえる。
フルサイズ譲りの足まわりと、自由度の高いライディングポジション
足まわりは、原付二種クラスでありながらフルサイズのオフロード車を思わせる構成を採用する。フロントにはインナーチューブ径41mmのサスペンションを装備し、215mmのストローク量を確保した。アウターチューブ下部にはオイルロックピースを備え、優れたクッション性と底付き抑制を両立している。リアにはリンク式モノクロスサスペンションを採用し、ホイールトラベルは187mm。路面からの入力をしなやかに受け止めつつ、高荷重時には踏ん張りを発揮する設定とされている。


制動系には前後ディスクブレーキを採用し、フロントにはABSを標準装備した。フロントは267mm径ディスクと2ポットキャリパー、リアは220mm径ディスクとシングルポットキャリパーの組み合わせで、オフロードからオンロードまで幅広いシーンでコントロール性に優れた制動力を発揮する。過度に効きを強めるのではなく、操作入力に対してリニアに反応するバランスが重視されている。

ライディングポジションにも工夫が凝らされている。前後左右に自由に体重移動しやすいフラットシートを採用し、外装も凹凸を抑えた形状とすることで、スタンディングとシッティングの移行をスムーズにした。左右幅の広いフットレストは、ステップワークを積極的に使うオフロード走行時に安定した操作感をもたらす。

ヤマハのオフロードスピリットを凝縮したデザインと先進装備
デザイン面では、「Feel the YAMAHA offroad spirit!」をコンセプトに、水平基調のプロポーションと大胆な面構成を採用した。エンジンの腰上部をブラック塗装とし、ヘッドランプとポジションランプを上下二分割としたヘッドライトカウルによって、凝縮感のあるフロントマスクを形成している。LEDヘッドランプはコンパクトながら高い視認性を確保し、実用面にも配慮がなされている。

装備面では、LCDマルチファンクションメーターを採用し、速度計やタコメーターに加え、燃費表示やギアインジケーター、VVA作動表示などを集約した。さらに専用アプリ「Y-Connect」とスマートフォンを連携させることで、着信通知やバッテリー残量などの情報をメーター上で確認できる。原付二種クラスでありながら、現代的なコネクティッド機能を備えている点も見逃せない。

WR125Rは、単に排気量を抑えたオフロードバイクではない。ヤマハが長年築いてきたオフロードスピリットを、これからその世界に足を踏み入れるライダーに向けて分かりやすく、かつ本格的に提示するモデルである。日常から非日常へ、舗装路から土の上へ。その一歩を後押しする存在として、WR125Rは新たな役割を担うことになりそうだ。
