トヨタGRは新型DKR GRハイラックスを投入して王座奪還を目指す

年の始めのモータースポーツイベントといえば、やはり「ダカールラリー(旧パリ・ダカールラリー)」を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。2026年大会はサウジアラビアを舞台に、1月3日から17日までの2週間で熱い戦いが繰り広げられる。

2020年からサウジアラビアで開催されているダカール・ラリー。写真は2025年大会の様子。

かつては“パリダカ”の愛称で親しまれたラリーの歴史は古く、1978年に第1回大会が開催された。冒険家ティエリー・サビーヌと仲間たちがパリのカフェでの飲み話として語られた構想が実現したとされており、黎明期の大会はより冒険色が強いものであった。

日本勢では、プライベーターとして出場したチームACPが最も古参だが、80年代に入ると三菱や日産などがワークス体制で参戦。そんな中、トヨタのランドクルーザーはチームACP以来、プライベーター参戦を基本としてきた姿勢を受け継いでいる。

1995年のグラナダ〜ダカールラリーに向けて結成された「トヨタ・チームアラコ」はセミワークスチームであったが、トヨタ本社のバックアップはほぼない状態であり、メカニックには地方の販社が協力するという体制だった。

三菱はラリーレイド専用に開発したワークス・パジェロで輝かしい戦績を収める一方で、ランドクルーザーは車体メーカーチームという体制を維持し、あくまでも市販車クラス(2026年よりストッククラスに名称変更)出場にこだわり続けた。

パジェロを擁して通算12勝を達成した三菱。

2005年よりトヨタ・チームアラコはトヨタ車体が受け継ぎ、「チームTLC(TEAM LAND CRUISER TOYOTA AUTO BODY)」として参戦。ここ数年はほぼワークスといっていい体制で大会に臨んでいる。また、2016年からはそれまでナビゲーターを務めることが多かった社員メンバー・三浦昂氏がドライバーとして起用され、2017年以降、目覚ましい活躍を見せているのもファンにはうれしいトピックスだ。

トヨタ車体の社員でもある三浦 昂選手。ダカール・ラリーの市販車部門では、ナビゲーターとして2回、ドライバーとして7回の優勝を遂げている。2026年大会を最後にTLCでの活動の卒業を発表。新たにTOYOTA GAZOO Racing W2RCチームから世界ラリー・レイド選手権(W2RC)に参戦予定だ。

ランドクルーザーの出場マシンも、70系、80系、100系、200系、300系と変化。ここ数年は300GRをベースとしたマシンが使われているが、市販車部門は改造範囲が限られている。電子デバイスも一部をカットしたりはするが、市販車で使われている制御をそのままレースに活かしている部分もある。

ダカール・ラリー2026に参戦するトヨタ車体のラリーチーム「TEAM LAND CRUISER TOYOTA AUTO BODY」。ランドクルーザー300 GR SPORTで、ストッククラスの制覇を狙う。エンジンがこれまでのディーゼルからガソリンに変更されたのが話題となっている。
ランクルーザー300 GR SPORT ダカールラリー2026仕様車 スペック

昨今のランドクルーザーを「電子制御の塊でタフネスさが心配」と言うオールド四駆ファンがいるが、ダカールラリーなどの苛酷な状況下で使用することでデータ取りを行い、その信頼性を向上させているのである。現在では高級車にカテゴライズされがちなランドクルーザーだが、高価だからこそユーザーの信頼を裏切らない耐久性をメーカーも矜持としているのではないだろうか。

2026年大会は、チームTLCの13連覇挑戦の他に、ふたつのトピックスがある。まずトヨタがワークス体制で出場することだ。日本でも人気のハイラックスが、T1+クラスにエントリーする。このチームはTOYOTA GAZOOレーシングのバックアップを受けており、出場マシンはハイラックスといってもバリバリ改造されたプロトマシン「DKR GRハイラックス」となる。

かろうじてハイラックスの面影は残しているものの、トラスフレームでできたレーシングバギーのようなマシンだ。こうしたモンスターマシンが砂漠を疾走するのもまた、ダカールラリーの醍醐味。ことしはサウジアラビアが舞台なので、見所は多いのではないだろうか。

TOYOTA GAZOO Racing W2RC(TGR W2RC)が投入するDKR GRハイラックス。

もうひとつのトピックスが、ランドローバー・ディフェンダーの参戦である。ランドローバーと言えば、長年ランドクルーザーのライバルとして目されてきたクルマで、ダカール・ラリーにも初代レンジローバーや旧ディフェンダーが参戦してきた。しかし、ランドローバーはプライベーターに使われることが多く、これまでワークス体制での参戦例はない。同ブランドは、むしろキャメルトロフィ(四駆で移動する冒険イベント)に注力していたからとも言えるが。

さて、ランドローバーがダカールに参戦させるのは「ディフェンダー・ダカール・D7X-R」というやけに長い名前のマシンだ。ディフェンダー・オクタをベースにしていると言われるが、このマシンがすごくカッコがいい。オーバーフェンダーやシュノーケル、アンダーシルガードなど、すべてがスタイリッシュ。さすがワークスの造ったマシンだ。

ディフェンダーOCTAがベースのディフェンダー・ダカールD7X-R。ラリーの舞台となる乾燥地帯の風景をグラフィカルに表現したカラーリングも目を引く。

さて、多くの人が気になるのは、ディフェンダーの耐久性だろう。ディフェンダーは現行型になってからアルミモノコックボディに構造を変更した。サスペンションも四輪独立懸架式だ。この「D7Xアーキテクチャ」は、往年のランドローバーファンを失望させた。そんなのはディフェンダーではない、と。

さてもう一度、今回の参戦マシンの名称を思い起こしていただきたい。なんと現行型のアーキテクチャの名称なのである。つまりランドローバーとしては、「みんないろいろ言ってるけど、ディフェンダーの実力はすごい」ということをダカールラリーで証明したいわけだ。

ちなみに参戦するクラスは2026年より新設された「ストック」クラスで、まさにランドクルーザーとガチンコになるのである。このクラスで上位入賞、仮にランドクルーザーを上回る結果となれば、ディフェンダーの広告効果は相当なものである。ディフェンダーは2026年早々に商用モデルをリリースする予定となっており、耐久性や信頼性はユーザーへの大きなアピールとなるはずだ。

もちろん、ランドクルーザーとしてはオーセンティックなボディ&サスペンション構造を踏襲していることのアドバンテージを示したいわけで、ダカールラリーはある意味で新旧構造クロカン4WD対決と言ってもいい。

最近はNHKでの放送もなくなり、なかなか情報の入手が難しいダカールラリーだが、公式サイトやTLCの特設サイトにてレース後のレポートが見られるのでチェックしてみてはいかがだろうか。

■ダカール・ラリー公式サイト https://www.dakar.com/en/
■TLC(TEAM LAND CRUISER TOYOTA AUTO BODY)公式サイト https://portal.toyota-body.co.jp/dakar/