近年、生成AIの急速な進化により、データセンター向け半導体にはさらなる高性能化が求められている。従来の半導体パッケージは、ガラエポ基板※5上に、微細配線を形成した中継基板(シリコンインターポーザー)を介して複数チップを搭載する構造が主流だが、チップの高集積化に伴い、基板の大型化と高密度配線が進行している。こうした中、サイズの自由度、平坦性、電気特性に優れるガラスを用いたガラスコア基板が注目され、インターポーザーとパッケージ基板を一体化するニーズが高まっている(図2)。

しかし、ガラスコア基板には課題があり、従来のエポキシ樹脂層などをレーザーで加工※6する方法では再配線層の微細加工が難しく、熱応力によるガラスの割れも問題であった。更に、ガラスコア基板の微細なビア(50μm以下)に銅を充填するには低電流めっきを長時間行う必要があり、プロセスコスト増の一因となっていた。

今回開発したポリイミドシートは、フォトリソグラフィー加工※7による微細配線形成を可能にし、さらにTGVを樹脂で充填することで銅めっきプロセスコストが大幅に削減された。また、独自のポリイミド設計と光架橋反応制御技術により、弾性率を従来比約2/3に低減し、熱応力によるガラス割れを抑制した。また、10μmΦ以下の微細ビア加工に対応し、TGVの壁側のみ銅めっきを施すコンフォーマルめっき※5との組み合わせで、低コスト化が実現される(図3)。現在、サンプル提供を開始しており、2026年度の量産開始を目指して基板メーカーで評価が進めらている。

ネガ型感光性ポリイミドシート
10μmΦビア加工後の断面写真
TGVに樹脂を充填した後のガラスコア基板断面
※ガラスコア基板は国立成功大学、AGCより提供
※コンフォーマルめっきは奥野製薬工業様にて実施
半導体パッケージ構造の技術トレンド

【注釈】

  1. ガラスコア基板:半導体チップをPCB(Printed Circuit Board)基板と接続する為の微細な配線が形成された半導体パッケージ基板の1種であり、コア層にガラスが使用されている基板
  2. 再配線層:半導体チップとPCB基板の間で信号と電力をやり取りする為の高密度な配線層であり、半導体パッケージ基板上に形成される。再配線層は主に、非常に微細な銅配線とポリマーや酸化膜などの絶縁層を多層構造として形成される。絶縁層のポリマーはポリイミドやエポキシ樹脂などが多く採用されている。
  3. TGV:TGV(Through Glass Via)は、ガラス基板に垂直方向の貫通穴を形成し、電気的接続を可能とする技術
  4. コンフォーマルめっき:基材の表面に沿って、銅などの金属めっき被膜を形成する手法であり、複雑な形状の部品でも均一な厚さでめっきすることができる。
  5. ガラエポ基板:ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させて作る硬い多層基板で、絶縁性や機械強度が高く一般的な電子機器のプリント基板や半導体パッケージ基板として使用されている。