ダウンマフラーが標準となる「スクランブラー250」は、アップマフラーの「’71デザートスクランブラー125」とはひと目で見分けられる。ヘッドライトガードの装備も独自のアイキャッチだ。

AJS・スクランブラー250……682,000円

生産国は中国で、もともと合弁会社があったことから高いクオリティの車両を生産できる。そんな経緯もあってエンジンのルーツはスズキ系の空冷SOHC2バルブ単気筒を搭載。

シンプルな中に欲しい機能をシッカリ採用した充実の250ccモデル

信頼性の高いエンジン&車体をベースに、伝統ある英国AJSがまとめたスクランブラースタイル。どんな場所でも絵になるルックスは、SNS映えするキャラクターだ。

オートバイの排気量で、車検のない250ccクラスはランニングコストと実用性、実際に体感できる性能面でバランスに優れている。125ccクラスは経済的ではあるが、高速道路が使えないことやパワーに不満を感じるなど、オートバイの魅力を追求していくとステップアップしたくなるのが実情だ。

これまでAJSからは125ccの魅力的なネオクラシックモデルが日本国内へ届けられていたが、待望の250ccモデルが登場! 第1弾は125ccモデルで人気の「’71デザートスクランブラー125」のスタイリングを踏襲する「スクランブラー250」で、ほぼ同じルックスで250ccモデルが選べるようになった。

実はAJSの本国であるイギリスに「スクランブラー250」は存在せず、2022年に参考モデルがショー向けに製作された程度。今回リリースされた車両は日本向けに仕様をリファインしたもので、いわば日本の250cc人気にフォーカスしてラインアップされた。

車体サイズは125ccモデルも大柄だったため、250ccになっても違いは感じにくい。「’71デザートスクランブラー125」がヤマハ・YBR125系のエンジンだったのに対し「スクランブラー250」はスズキ・グラストラッカー系がベースになっている。

外観はほぼ同じルックスではあるものの、大きく異なるのがマフラー。125がアップマフラーなのに対し、250はダウンタイプを採用する。実用面を考慮すると、排気量とともに熱量の増えたエキゾーストパイプが下を通るのはライダーに配慮したレイアウトで、積載する荷物が熱害を受ける心配もない。ルックス的にアップマフラーが好みというなら、後日リリース予定というオプションのアップマフラーを装着すればいいだけのことだ。

ほかに125と250の異なるポイントは、メーターが電気式になって液晶表示が追加されたこと。A/Bトリップ計や燃料計、ギヤポジションインジケーターもあるので実用性に優れている。ABSが搭載されているのも現行モデルとして信頼できるポイント。FI仕様のエンジンと合わせ、機能的には国産250cc単気筒モデルに比べて遜色のない装備といえるだろう。

ニュートラルなハンドリングと扱いやすいエンジンでオールマイティに楽しめる1台

まずは試乗前に「’71デザートスクランブラー125」と「スクランブラー250」を並べて比較すると、本当にマフラー以外に大きな違いは感じられない。車格も同じなので、125から250へステップアップするのは容易なことだと想像される。細かく見れば250にはヘッドライトガードもあったりするが、細部は購入後のカスタムで自由にできる部分。250のダウンマフラー以外をお望みなら、後日に発売予定のアップマフラーに交換すればいい。

オンロード寄りのタイヤなので、ダート走行は軽くこなす程度に。ABSの効きは良く、フロントブレーキを握っても姿勢が破綻することはなかった。

ここからは「スクランブラー250」のインプレッションだ。身長165cmで跨った印象は、一般的な国産シングルネイキッドと変わらないボリューム感。足つきも良く、取り回しもワイドなハンドルで扱いやすい。エンジンはFIなので冬の朝でも始動性が良く、セル一発で軽やかなアイドリングを始めてくれた。ポジションはアップライトで、前傾せずにハンドル操作できる楽チンな姿勢。タンデムもしやすそうなので、街乗りのアシとしても活躍できそうだ。

ダート走行でスタンディングポジションをとると、ややハンドルが低く感じた。オンロード走行がメインのバイクなので、オフロード性能を求めるのは酷なようだ。

走り出すと、そのスムーズさに拍子抜けする。輸入車という先入観から何かしら“クセ”を感じそうだが、エンジンとフレームのルーツには海外スズキ系がベースとなっているということもあって、さすがの性能。何ら違和感を感じないのだ。低速からトルクがあり、回せば相応に加速して5速まで軽快にシフトアップできる。ブンブンと高回転が回るエンジンではないので、高速道路を走るならオーバードライブ的に6速があってもいいと感じさせるエンジンフィールだ。

シート前方に軽く着座してニーグリップすると、ダート走行時のコントロール性が良くなった。フラットダートを走る場合は、このポジションがハンドル操作もしやすい。

しばらく走ると、少しシートの硬さが気になるようになった。お尻が痛いほどではないが、長距離のツーリングだと辛く感じるかもしれない。これは座面に体重が集中するポジションの影響もあるだろうから、マメな休憩やクッション系のカスタムで対応すればいいだろう。総じて乗り味はニュートラルで扱いやすく、ギヤポジインジケーターなどの充実したメーター表示も大変便利だった。

オンロード走行では、ニーグリップして車体を倒せばニュートラルなハンドリングでコーナーをクリアできる。トルクフルで扱いやすいエンジンなので、ビギナーからベテランまで空冷シングルの走りが楽しめる。

撮影のために河川敷のダートを少し走ってみると、ABSがちゃんと効いているのに気づく。フロントブレーキを強く握ってもロックせず、安定した姿勢のまま安全に止まってくれるのだ。リヤブレーキをロックさせてブレーキングターン! みたいな操作ができないのは残念ではあるが、それは本格的なオフ車で楽しむ領分。スタンディングポジションだとハンドル位置が低く感じるので、ダートでは軽く着座するポジションがコントローラブルで楽しめた。

オートバイの世界で、丸目ネイキッドは普遍のスタイル。今も性能は現行モデルとしつつ、ネオレトロとして往年のクラシックスタイルが人気を博している。この「スクランブラー250」は、まさにそんなニーズに応えるAJSからの回答といえるだろう。スクランブラーが好評なら、カフェレーサーモデルの追加だってあるかもしれない。

足つきチェック(ライダー身長165cm)

ディテール解説

搭載する空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒エンジンは、FI仕様なので始動性も良い。低振動で心地いい鼓動感を楽しませてくれる。ミッションは5速リターン式。
フロントタイヤのサイズは100/90-18で、ティムソンのTS-823を装着。ABS装備のシングルディスクブレーキは、効き・タッチともに扱いやすいものだ。
リヤタイヤのサイズは130/80-17。リヤのディスクブレーキもABS付きだ。ダウンマフラーはステンレス製のメガホンタイプで、高い質感に仕上げられている。
オーソドックスなリヤの2本サスは、5段階のプリロード調整が可能。取材時は最弱から2段目の設定だった。カスタムするなら汎用ショックや流用パーツから豊富にセレクトできそうだ。
リヤ左サイドには車載工具を搭載。飾り気のない簡易な樹脂製ケースが、良い意味で存在感を消している。2本のボルトで固定されているだけなので、外したり別のケースに変更するのも簡単だ。
バーハンドルはトラッカー的ポジションのワイドなもの。スイッチ類の配置はオーソドックスなレイアウトで、違和感なく操作できる。ミラーの視認性も良く、安全にライディングできた。
アナログ2眼タイプのスピード&タコメーターを装備。電気式を採用しており、液晶表示部にはオドメーターと切り替え表示のA/Bトリップメーター、燃料計、ギヤポジションインジケーター(走行すると表示)が盛り込まれる。
ヘッドライトはポジション用のライトバーを含め、フルにLEDを採用。ヘッドライトガード付きで、125モデルと差別化している。
小型の丸型テールランプもLED仕様。ナンバーステーにボルトオンされるシンプルな固定方法だ。ステーさえ工夫すれば、簡単にカスタムできそう。
タックロールタイプのダブルシートは、スリムで足つき性に優れる。スポンジは薄めで車両の挙動を感じやすく、見た目よりもフィーリングはスポーティだ。

主要諸元

全長:2,060mm
全幅:860mm
全高:1,150mm
シート高:810mm
乗車定員:2人
排気量:249cc
車両重量:130kg
エンジン:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
最高出力:13kW (17.2ps)
最大トルク:18Nm
トランスミッション:5速リターン式
フューエルタンク:13L
ブレーキ:前 ディスク、後 ディスク
タイヤサイズ:前 100/90-18、後 130/80-17

メーカー希望小売価格(消費税10%を含む):¥682,000