Audi RS e-tron GT performance
×
Porsche Taycan GTS
どこまでも質感の高いアウディRS e-tron

今回の特集タイトルを見て、私が真っ先に思い浮かんだのはBEVだった。というのも、一般的にエンジンを高性能化すると、ノイズが大きくなってトルク特性も変わる。それこそが高性能エンジンの醍醐味でもあるのだが、それゆえ日常にはそぐわなくなるケースも多い。一方、BEVは、基本的に静かなサウンドも超フラットなトルク特性もそのまま、出力だけを上げられる。日常と非日常を同居させる“デイリースーパーカー”には、これこそが打ってつけのソリューションと思えたからだ。
……そんなことを思いながら、今回連れ出したのは「アウディe-tron GT」と「ポルシェ タイカン」である。いうまでもなく、基本ハードウエアを共有するBEVである。
e-tron GTとタイカンが、GTスポーツカーでありながら4ドアなのは、これがポルシェとして初、アウディとしても2例目の市販BEVゆえ、客層を限定したくなかったという背景もあろう。GTやスポーツカーは2ドアであるべしとの意見もあるだろうが、少なくともデイリー用途なら、4ドアの方が心地よいのは論を待たない。しかも、後席足もと部分に電池を置かず、スリークなデザインと成人男性4人が快適に座れる空間を両立しているパッケージレイアウトは、あらためて見事だ。
世界初公開からすでに5〜6年が経つe-tron GTとタイカンだが、最新型は、ともに本国では2024年前半に発表されたマイナーチェンジモデルだ。好評だった内外装デザインに大きな変化はないものの、中身は別物というくらいに進化している。最初に目につくのは総電力量93.4kWhから105kWhに増量されたリチウムイオン電池だが、その上で車重はわずかながらも軽くなっているのが、BEVがまだ急速な発展途上であることを痛感する。
剛性感溢れる走りを披露するタイカンGTS

さらに、駆動モーターとインバーターも新しく、高性能化にはBEVでも欠かせない冷却系も見直されている。また、いわゆるブーストモード機能が追加されたり、アクティブサスペンション(これはアウディでの呼称。ポルシェではアクティブライドサスペンション)が新たに用意されるなど、シャシー面の進化も著しい。J1プラットフォームの基本構造はこれまでどおりだが、聞けば、それも「J1-II」に呼称変更されているという。ここまでくれば、実質的にはフルモデルチェンジに近い。
そんなe-tron GTとタイカンは、ラインナップもさらに拡充している。現時点での最速版はタイカンに用意される「ターボGTヴァイザッハパッケージ」で、前後2基のモーターを合わせたシステム最高出力(ローンチコントロール作動時。以下同)は1108PS! 0-100km/h加速2.2秒、最高速305km/h(!!)というすさまじさだ。
対するアウディ版の新トップモデルは、今回の試乗車でもあるRS e-tron GTパフォーマンス。動力性能はターボGTにわずかに譲るが、それでもシステム出力925PS、ゼロヒャク2.5秒だから、いずれも完全なスーパーカー級どころか、“スーパースーパーカー”と呼びたいレベル。ちなみに、この性能は、タイカンでいうと、ターボとターボSの中間に位置づけられる。
エンターテイメント性に富むバーチャルコクピットプラス



一方、今回のタイカンは前記のターボGTではなく、GTSとした。動力性能はトップではないが、シャシーに妥協なしの、いわば“アシのいいヤツ”的なモデルだ。動力性能は“中の上”だが、システム出力700PS、ゼロヒャク3.3秒。しつこいようだが、これもスーパーカーと呼ぶに相応しい。
まずはアウディのドアを開けると、車高がスッと7cm以上持ち上がり、まったく実用セダンのように楽々と乗り込めた。そしてドアを閉めると、即座にローダウンして、GTスポーツカーらしいスタンスに戻った。降車時も同じ屈伸運動をしてくれる。これは新たにオプション設定された前記のアクティブサスペンションに付帯する機能である。
同サスペンションは4つのタイヤを独立アクティブ制御することで、これまでにない高度なダイナミクス性能を実現するが、50代後半の筆者には、この「エレベーテッドエントリー」機能がなによりありがたい。そのデイリーな実用性はまさにスーパーと申し上げたい。今回のタイカンに乗降時屈伸機能はなかったが、同様のアクティブライドサスペンションは、タイカンGTSでもオプション装着可能である。個人的には、e-tron GTやタイカンを購入するなら、これはなによりも優先させてトッピングしたいと思った。
スポーティかつ上質なタイカンのコクピット



程度の差こそあれ、その速さに文句のつけようがないのは、アウディもポルシェも同じである。
RS e-tron GTパフォーマンスにも、近年のアウディRSでお馴染みの「RS」ボタン(任意セッティングを記憶できるショートカット機能)と、すべての性能を全解放する「RSパフォーマンス」モードが用意される。同モードにセットしたe-tron GTは、フル加速ではまさに記憶が飛びそうな加速Gをお見舞いしてくるのだが、そのマナーはショックレス。また、路面に吸いつくようなフラット感はこれまでの美点でもあったが、超扁平タイヤ特有のゴツゴツがウソにように消え失せているのは、新しいアクティブサスに加えて、ハードウェア部分の熟成と思われる。それにしても、乗り心地や手応え、さらにサウンドまでが威嚇感ゼロのデイリー感のまま、スピードだけが尋常ならざる……という、このクルマが提示するBEVスーパーカーの世界は今も新鮮である。
これに乗った後だと、ゼロヒャク3.3秒のタイカンGTSの加速がやけに控えめに感じられるから慣れというのは恐ろしい。とはいえ、右のステアリングパドルを引くと、「プッシュtoパス」という、一般的にいうブーストモードが起動して、10秒間だけパワーとトルクが上乗せされる。高速ゲートからの再加速や追い越しなど、ちょっとしたデイリーなストレスを解消できるワープ機能だ。
それにしても、タイカンのアウディよりあからさまにタイトなステアリングや身の詰まった剛性感は、いかにもポルシェというほかなく、逆にアウディの肌ざわりは、良くも悪くももう少し穏当だ。前後とも駆動系のハードウエアも共通のはずなのに、アクセルを踏み込んだ時には、タイカンGTSの方がリヤタイヤの蹴り感も明らかに強い。この共同開発BEVスーパーカーはブランドごとの機微の部分でも、これまでにないほど熟成が進んでいる。
両車の強烈な個性に魅了された

BEVといえば、どうしても気になるのが航続距離だが、ともに改良前の500km台前半から600km台前半になった。その延び幅は、バッテリー単体の総電力量から想像するより、あからさまに大きいのは、各部の効率が飛躍的に向上したからだろう。いずれにしても、これだけの航続距離があれば、自宅ガレージに充電設備をお持ちであれば、デイリーな生活に困ることはまずなく、少なくとも日帰りなら、出先で電力を使い切るケースもまれのはずだ。やはり、デイリースーパーカーという世界観は、BEVとの相性がいい。
REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
MAGAZINE/GENROQ 2026年2月号
SPECIFICATIONS
アウディRS e-tron GTパフォーマンス
ボディサイズ:全長4995 全幅1965 全高1380mm
ホイールベース:2900mm
車両重量:2340kg
システム最高出力:680kW(925PS)
システム最大トルク:1027Nm(104.7kgm)
トランスミッション:1速固定
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
車両本体価格 2469万円
ポルシェ・タイカンGTS
ボディサイズ:全長4965 全幅1965 全高1380mm
ホイールベース:2900mm
車両重量:2310kg
システム最高出力:515kW(700PS)※ローンチコントロール時
システム最大トルク:790Nm(80.6kgm)
トランスミッション:1速固定
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
車両本体価格 1990万円
【問い合わせ】
アウディ コミュニケーションセンター
TEL 0120-598-106
https://www.audi.co.jp/
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

