一番の売れ筋は290万7300円の「T Premium 4WD DELIMARU Package」
三菱自動車の新型デリカミニはかわいらしさと本格的な走りが同居しているところが魅力だ。決してかわいらしさだけがウリではない。「気軽にアウトドアを楽しみたいご家族」がターゲットでもあるので、キャンプ場への導入路程度の未舗装路なら苦もなく走れるだけの性能は担保している。というのが表向きのセールストークなのだが、十勝アドベンチャートレイル(研究所内にあるオフロードコース)でのテスト風景を見ると、とてもオンロードを主体にちょっとだけオフロードを走る用途を想定しているクルマとは思えない。

本格オフローダー並みの性能を追求しているように見える。道の両側にのり面が迫る区間では、片輪をのり面に載せて車体を傾けながらも危なげなく走り抜けるし、急な下り坂でもヒルディセントコントロール(HDC)があるから安心だ。スイッチを押してオンにすると、ブレーキを踏まなくても車両側が車速を一定に保ってくれる。軽スーパーハイトのカテゴリーでHDCを搭載しているのはデリカミニだけとのこと。従来20km/hまでだった対応車速を30km/hまで拡げたのがポイントだ。未舗装路を下るときだけでなく、ショッピングモールの自走式立体駐車場で見かける急勾配のスロープでも役立ちそうな機能だ。

最低地上高が4WDで160mmあるのも不整路面では心強い(2WDは150mm)。荒れた路面でも底打ちの心配なく走ることができるし、モーグル路で車体が大きく傾いても心配は要らない。
デリカミニは「路面状況を選ばない安心の走破性」を提供するドライブモードを設定。POWER、ECO、NORMAL、GRAVEL、SNOWの5つのモードを切り換えるダイヤル式のセレクターは、シフトレバーの左側にレイアウトされている(中央にHDCのスイッチがある)。ダイヤルを操作してグラベルを選択すると、グリップコントロールが強めに作動するようになる。グリップコントロールとは、駆動輪の片側がスリップした場合に、スリップした駆動輪をブレーキ制御し、グリップしている駆動輪の駆動力を確保することで発進(前進・後退)をサポートする機能だ。

こぶが交互に並んだモーグル路で片輪が浮いた状態でも、デリカミニはまるでタイヤに硬い爪でも生えているかのように、ガシッ、ガシッと地面をつかんで前に進んでいく。ドライバーはただ、普段と同じようなアクセルワークを心がければいい。
砂利道のカーブでは外側にふくらみがちになるものだが、デリカミニは非常に安定した姿勢でクリアするし、うねりのあるアスファルト路面では上下の揺れを抑えながら、まるで地面と車両の間に磁力でも働いているかのようにピタッと路面に張り付き、安定した姿勢で走り抜ける。

と、自分で体験したかのように記しているが、以上はすべてテスト走行時の映像を見た筆者の感想である。メディア向け試乗会では、勾配が適度にあり、タイトなコーナーが連続するカントリーロードを中心に走った。
全高1815mmのいわゆるスーパーハイト系に分類される軽自動車なのに、ハイペースでコーナーに進入しても、グラッと車体が横に傾いてドライバーを(この場合は筆者)不安にさせない。高速道路の本線から出口レーンに車線変更して料金所に向かう際、奥で下りの急カーブが待ち受けていることがある。重心の高いスーパーハイト系は、自分では充分にスピードを落としたつもりでも、高速走行に目が慣れていたせいで若干オーバースピード気味でカーブにアプローチしてしまうことがある。

自分のイメージどおりに向きを変えてくれず、あわててステアリングを切り増したりすると、いきなり上屋が盛大に傾いて(傾いたように感じて)怖い思いをする。ひと昔前のスーパーハイト系のイメージはこんな感じだが、新型デリカミニならそうはならないだろうと、走りながら思った。オフロードを気軽に走れるのはもちろんのこと、オンロードの快適性や運動性能を満足させているのがデリカミニである。
足まわりの設計と仕上げには入念に取り組んだ様子がうかがえる。「ロールは悪だと思っていません」と、デリカミニの開発に携わった技術者は説明する。「ロールは自然にさせつつ、ロールした後に荷重がタイヤに乗り、ハンドルを切るとスムーズに曲がる。その一連の動き、前後のつながりがスムーズになるように狙ってチューニングしました」

ご存じかどうか、デリカミニは基本設計を日産ルークスと共有する。2WD(FF)の足まわりの味つけはルークスと共通。4WDは三菱自動車専用の味つけだ。日産には日産の思想があり、三菱には三菱の思想がある。三菱はオフロード性能を求めるところがあるので、とくに4WDに関しては、脚をスムーズに動かして止めることにこだわったという。
デリカミニの背は高いので、ロールはどうしても強めに出てしまう。これを抑えるにはばね(コイルスプリング)を硬くするか、ダンパーの減衰力を上げるのが一般論として考えられる。しかし、背反として乗り心地が悪くなる。
この背反をブレイクスルーし、操安性と乗り心地を両立したのが、Prosmooth(プロスムース)という商品名のカヤバ製ダンパーだ。ダンパーの動き出し部分をスムーズに立ち上げて、シームレスな減衰特性とするのが特徴。技術者の言葉を借りれば、「静止している状態でゆらゆらするような状態を止めながらも、いったん動き出してからはきちんと脚が動いていなす。ばね下の動きを抑え、乗り心地を良くする」ダンパーということになる。静止状態から、動き出しの極微低速領域に移行し、オリフィス領域に入ってバルブ領域に移行する。「そのつながりがスムーズ」との評価だ。
ルークスとも共通しているが、先代では鋳鉄製だったフロントのナックルを日産側からの提案により軽量・高剛性なアルミ鋳物に変更した。また、中実だったアンチロールバー(スタビライザー)は中空構造とすることで軽量化を図ると同時に断面係数を上げ、20%程度の剛性アップを図った。アンチロールバーの剛性を上げれば当然、ロールは抑える方向に働く。そのぶん、フロントのばねは先代に対してワンランク定数を落とすことができたという。これは乗り心地に効く。

3リンクリジッド式のリヤサスペンションは、トレーリングリンクのブッシュに入れているすぐりの位置を変更した。後輪で段差を乗り上げる際、すぐりの位置によって入力に耐えるか、逃げるかのチューニングを行なうことができる。今回は逃げる、すなわち乗り心地に対して有利になるように位置を変更したという。

新型デリカミニはお値段もそれなりにするが、初期受注の売れ筋は最上級グレードのT Premium 4WD DELIMARU Package(メーカー希望小売価格290万7300円)だという。三菱らしさがより反映された4WD比率は5割を超えており、スーパーハイト系ワゴンとしては異例の高さだそう。ただ愚直に走りの質を高めただけではなく、思わず頬が緩むような遊び心がそこかしこに感じられるのが、デリカミニのいいところだ。
エンジンを始動すると、メーターとセンターディスプレイにデリカミニのヘッドライトをイメージした目が現れてキョロキョロしたり、アイドリングストップ時はメーターの丸いグラフィックが魂動のように動いたりする。ホイールはデリ丸。の足の裏?と思ったが、トレッキングシューズのソールをイメージしたそう(デリ丸。のぬいぐるみの足の裏には肉球ありませんでした)。

実際、軽自動車と知らずにデリカミニを買いに来るお客さんもいるそうだが、外でクルマを眺めても、室内に乗り込んでも、走らせても、軽自動車離れした完成度であることを感じる。デリカミニは「デリカミニ」という、かわいらしくて頼もしい乗り物だ。
| グレード | 三菱デリカミニ T Premium(4WD) | ||
| 全長 | 3395mm | ||
| 全幅 | 1475mm | ||
| 全高 | 1815mm(ルーフレール付き車は1830mm) | ||
| 室内長 | 2315mm | ||
| 室内幅 | 1335mm | ||
| 室内高 | 1400mm | ||
| 乗員人数(名) | 4 | ||
| ホイールベース | 2495mm | ||
| 最小回転半径 | 4.9m | ||
| 最低地上高 | 160mm | ||
| 車両重量 | 1050kg(ルーフレール付き車は1060kg) | ||
| パワーユニット | 659cc直列3気筒DOHCターボ | ||
| エンジン最高出力 | 47kW(64PS)/5600rpm | ||
| エンジン最大トルク | 100Nm(10.2kgm)/2400-4000rpm | ||
| 燃料(タンク容量) | レギュラー(27L) | ||
| トランスミッション | CVT | ||
| 燃費(WLTCモード) | 17.8km/L | ||
| サスペンション | 前:マクファーソン式 後:トルクアーム式3リンク | ||
| ブレーキ | 前:ベンチレーテッドディスク 後:ドラム | ||
| タイヤサイズ | 165/60R15 | ||
| 価格 | 238万7000円 | ||




