再検証・R32スカイライン GXi
「MFクルマなんでもラウンジ」も前回の20回で節目を迎え、今回で21回目となる。
大急ぎで考えたとはいえ、われながらダサいタイトルをつけたもんだと思うが、いまさらしょうがない。
もうしばらくこのままでいく。
本題に入る。
クルマにはいわゆるグレード分けというものがある。
価格が安いの高いのを用意し、顧客が予算と好みに応じて買えるよう、選択肢をあらかじめ広げているのである。
本来自動車なんてもなぁ丸裸の仕様1台にしておき、豊富な工場オプション、販社オプションをCoCo壱番屋のカレーのトッピングのように選んで完全顧客好みで購入できるのが理想だ。
庶民がクルマに手を伸ばし始めたモータリゼーションの頃はバリエーションをピンキリで用意し、ラジオやヒーターなどの贅沢装備(の時代だった)の有無で細かく分けるその最低位置に、トッピング待ちの簡略モデルを備えていたものだ。
これがいわゆる「スタンダード」というやつで、ラジオもヒーターもホイールカバーも省き、トランスミッションは3速の手動コラム式・・・とにかく何もかもが最低限の位置づけだ。
予算の乏しいひとにも買えるようにという役割もあろうが、元来、欲しいものだけを加えて好みのクルマに仕上げるための素の状態のクルマの意味があった。
だから「STANDARD(標準)」だったのである。
スタンダードにラジオやライターが加わるだけで「DELUXE(豪華)」となり、さらに時計が与えられ、シートが部分的に布貼りになり、それまでゴムマット敷きだった床がカーペット敷きになるだけで「GL(Gland Luxury・グランドラグジュアリー)」に格上げされるといった具合だ。
その横には、エンジンをちょいパワーアップさせ、タコメーターをつけて「GX」「ST」「GT」とするホットモデルを置いていた。
ここでは1979年の4代目カローラを例に、かつてのクルマのワイドバリエーションぶりをお見せしよう。
カローラ写真は他にもあるので、ご覧になりたい方は「ギャラリー」へ。






このスタンダード。
標準状態の素グルマだから、自然と見た目はみすぼらしくなる。
クルマ好きの中には、同じクルマのホットモデル、豪華モデルに対して標準車の見た目の情けなさに心酔歓喜するヤツが多い。
今年の初め、「時代の名車探訪」初代ソアラ解説を全10回でお送りし、たくさんの方に読まれて感謝感謝だが、その中で読まれたトップが最終回の第10回目「いちばん安いソアラ『2000VI(ブイワン)』」だった。
これがいちばん読まれるようにと目論んで書き、果たしてそのとおりになったので密かにほくそ笑みながら、その前の9回の立場をどうしてくれるんだなんて文句をいって遊んでいる。

この「なんでもラウンジ」、さきおとといのNo.18はクルマのLED化の問題を提唱し、おとといのNo.19はフロントガラスへの映り込み対策を披露、昨日のNO.20はホンダ車のフロントガラスの三角マークをテーマに・・・どちらかといえば自動車に関する真面目な話をガラにもなく連続させた。
今回は本来のガラの姿になってお送りいたしましょう、R32スカイラインGXi!
いつしか失われたファミリーカーとしての志
元来スカイラインは、1957(昭和32)年に4気筒のファミリーカーとしてスタートした。



だが、2代目の途中で前輪を前に押しやってホイールベース=エンジンルームを200mm延長し、直列6気筒を搭載した2000GTが追加されてからというもの、代を追うごとにスカイラインの象徴が直6の2000GTに移ってしまい、対比で「ショートノーズ」と呼ばれるようになった本来の4気筒モデルのファミリーカーとしての存在感が薄れてしまった。
薄れるばかりか、4気筒版はどこか6気筒GTに手が届かないひとのためのスカイラインという感じさえ色濃くなっていった。
そもそも私自身がそう解釈していたし、メーカーにだって差別化の意図がなかったとはいえまい。



余談ながら、同じく4気筒1500~1800を主力とするファミリーセダンとして登場したのに、いつしかラリーモデルのWRXに集約させ、その後切り離したスバル・インプレッサも似た道をたどったといえよう。
いまじゃあインプレッサはただの5ドアハッチバックとして、セダンはWRX S4として、それぞれ別の道を歩んでいる。
クローズアップ・GXi !
さて、今回主役のR32スカイラインのGXiである。
R32型スカイライン。
1989(平成元)年5月22日発表・発売。
ただし、GT-Rを含む4WD車の発売は8月21日に先送りされている。
ライバルに翻弄されていつしかポジショニングが揺らぎ、R31=セブンス・スカイラインではついぞ「ローレル・マークII」とまで揶揄されたくやしさから、コンセプトもデザインもイチから仕切り直した。
肥大化していたボディを走りのためにシェイプアップ。
全長を縮小し、凝縮感あるスタイリングになった。
とはいえ、ホイールベースは2615mmのままだ。
走りのスカイラインへの回帰、4WD新設、16年の眠りから目覚めたGT-R・・・新たな神話のスタートに相応しい姿に生まれ変わったR32スカイラインの廉価版が、直列4気筒CA18エンジンを載せた「GXi」だ。
次のR33ではついぞ4気筒エンジン搭載車は消え、すべて直6GTとなるので、このGXiは直6時代最後の4気筒スカイラインであり、初代の思想もここで途絶えることになる。



いっとき、必要に迫られてスカイラインの変遷を追ったことがあったが、以来、私は4気筒車こそがスカイラインの本流で、決してプアマンズ・スカイラインではないと思っている次第だ。
だからこそ、セブンス・スカイラインまでは4気筒モデルを複数揃えていたのである。




ところがR32となったら一転、ほとんどの機種をGTとし、4気筒版は当時のU12ブルーバードが主軸にしていたPLASMA・CA18i搭載の「GXi」たった1機種のみ・・・とうとう完全な最廉価機種扱いである。
ただし、格下ブルの主軸をそのまま持ってきたんじゃあスカイラインの名が廃る。
最大トルク14.5kgmはそのままに、最高出力を3psだけ「トッピング」して91psになっていた。

おもしろいのは、最廉価扱いでありながらリヤサスペンションは差別されず、他のGTともGT-Rとも同じ型式のマルチリンクが与えられた点だ。
これまでは常にリヤサスペンションは差別化され、6気筒GTの独立懸架式に対し、4気筒車はリーフ式であれリンク付きであれ、車軸式に徹していた。
GXiは、4気筒車としての立場はただのエントリーモデルになったのに、リヤサスだけは逆に出世した格好だ。
というのも、R32は足まわりも根底から見直して「4輪マルチリンクサスペンション」に一新、GXiにとってはうれしい巻き添えを食ったからなのだった。


だが、開発はバブル期真っ只中。
たった1機種だけのために別の方式を採りたくなかったのはわかるが、ここはひとつ初心に立ち返り、日産にはGXiだけのためにショートノーズボディと角テールを、そして901活動の一環として、90年代の乗用車に向けた、新しいリーフリジッド式リヤサスペンションを専用開発してほしかったところだ。
新開発・真のGXi
というわけで今回、日産自動車に無断で、私がこれまで蓄積してきたノウハウと最新技術を余すところなくフル投入し、私が本来あるべき姿と考えるGXiをいまさら新開発した(Photoshopで)。




R30以降途絶えていたショートノーズを復活。
その前のC210スカイラインの直6ロングノーズと直4ショートノーズの関係をそのまま当てはめ、ホイールベースとフロントオーバーハングを100mmずつ短縮し、全長をトータルで200mm短くした。
計器盤も手直しした。
素の状態にする、または安価に買えるようにするため、ハンドルは2本スポークに格下げし、ラジオはオプションにした。
ただし、喫煙者の義務としてライターを省くことはしていないし、パワーウインドウも残しておいた(本当はどちらもうまく加工できなかっただけ)。
外観写真では他機種同様、ライトにフォグランプを内蔵しているように見えるが実はダミー(本当はつぶすのを忘れただけ)。
したがってメーター脇にフォグランプスイッチはない。
あと、アウターミラーの電動機能もなくしたので、鏡面の角度調整は手でよろしく。
CA18iサウンドの奏でをバックに走るGXi・・・じゃないので、メーターとにらめっこする必要性は薄い。
回転計の場所にはアナログ3針時計を当てはめた。
電圧計と油圧計を指針式からワーニングランプに置き換えてもクレームは来ないだろう。
ついでにトリップメーターもふさいだので、区間距離を知りたければ走行前と後の積算距離計の差で知るか目測で把握してくれ。
さらにATは4速から3速にしたので、レバーにはオーバードライブスイッチはなし。
ついでにいうと、MTはコラム3速になります。
ワイパーからは間欠時間の調整機構をとっ外しましたので、少々ご不便をおかけします。
というわけで、お値段は当時の5MT車141万4000円、4AT車が149万7000円(消費税別)に対し、勉強して価格据え置き&ショートノーズ化&リヤサスリーフ化&装備簡略化&トランスミッション格下げぶんを加味して、税込み138万5000円(3速コラムMT)、145万7000円(3速フロアAT)にしておきましょうか。

これぞ初代スカイライン1500のエッセンスを持ち合わせる真のGXiなのである。
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それにしても、当時16年ぶりの新しいGT-R復活を目指す傍ら、その対極にある最廉価GXiに対し、設計陣、実験部はどんな姿勢で開発に臨んだのか?
スカイラインといえば、漲(みなぎ)るパワーにものいわせ、峠のカーブをマフラーから火ィ噴いてGO! みたいな視点で語られがちなだけに、最廉価モデルの開発秘話こそ聞く機会もなければ、話すひとにも出くわさないが、GT-RやGTS-tタイプMの場合と同じくらい、GXiの開発秘話もいつか聞いてみたいものである。
ここでGXiのスペックなど詳細をごらんいただこう。
R32スカイラインのイメージリーダー「GTS-tタイプM」、そして直列6気筒のツインカム・・・ではなく、シングルカムのRB20E搭載した、これまたマイナーなスカイラインの「GTE」と対比しながらお楽しみいただきたい。












