高級車として機能させるためのショーファー

2025年はロールス・ロイスのフラッグシップである「ファントム」の誕生から100周年にあたる記念すべき年であった。グッドウッドでリスタートを切った新生ロールス・ロイスが、その第1弾として2003年に発表したのがファントム……ということからも、いかにその存在が特別であるかわかるというもの。
現行モデルはすでに発表から7年が経った8世代目。「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」と呼ばれるアルミ・スペースフレーム・シャシー、8速AT、6.75リッターV12ツインターボ、後輪操舵などメカニズム的にはゴーストなどとも同じだし、特に新味はないだろうと久々に乗ってみてビックリ。とにかくすべての動作がスローで普通に運転しようとするとギクシャクする。そこで意識を運転席ではなく、後席に移して運転すると、あ〜ら不思議。直接気味のドラポジも、ステアリングやアクセルの「溜め」も良い方向に作用して俄然スムーズに動き出す。
ただデカかったり、豪華だったりすれば高級……というのではなく、ショーファーが相応の所作をして初めて高級車として機能する。それを知って、なぜロールス・ロイスが世界一の高級車であり続けているのかを知ったと共に、世界中のメーカーが100年経っても追いつけない理由がちょっとわかった気がした。
素性の良さからハイブリッドの噂に期待

ロータス党の端くれとして言わせてもらうと、「エレトレ」をロータスと呼ぶのは正直にいって抵抗があった。やっぱロータスの王道はレーシングカー由来の軽くて小さいスポーツカー。そういう意味でエレトレは2.5tオーバーのSUVとは思えないほど速く、快活に走ってくれるのだけれど、やはり大きく重い躯体はトゥーマッチというのが第一印象だった。
その後しばらく触れる機会がなかったのだが、先日「LOTUS 77th Anniversary Track Day」のために、都心から富士スピードウェイまで往復する機会に恵まれた。ドライブしたのは603HPのエレトレS。久々に乗ってまず思ったのはパワーデリバリーのナチュラルさ、そしてキレが良くも決してナーバスではないハンドリングの気持ちよさだった。その気持ちよさが活きるのは街中やワインディングよりも高速主体のロングツーリングで、静粛性の高さ、長いホイールベースゆえの安定感と、そのデメリットを打ち消す後輪操舵の秀逸さで驚くほどストレスフリーだった。
しかも都心からFSWへの往復でまだ48%も充電が残っている足の長さにまたビックリ。この素性の良さがあれば、この後出てくるという噂のハイブリッドバージョンにはかなり期待が持てるかもしれない!
自動車としてのマトモさ

3台目は敢えて“反則”を承知で1990年式の「ユーノス・ロードスターVスペシャル」。某誌の取材のためにマツダで借りた広報車だったのだけれど、ひと転がしした瞬間にノックアウト。というのも、バババーっと頭の中に初めてその存在を知った1989年の出来事が蘇るとともに、「自動車としてのマトモさ」に改めて感服したからだ。
とにかく素晴らしいのがドライビングポジション。しっかりとサポートしながらも座り心地のいいシート、細身のステアリング、位置も操作感も抜群のシフトとペダルは、まさにスポーツカーの基本中の基本というべきもの。加えて軽やかな1.6リッター直4DOHCエンジン、前後ダブルウイッシュボーンのサスペンション、そしてオープンにもかかわらず剛性感の高いシャシーが織りなす軽快でシュアな走りは、今の世に出しても遜色のない素晴らしい仕上がりをみせる。
加えて素晴らしいと思ったのは、ドライバーに「コントロールする余地」を残したスポーティな仕立ての一方で、タイトにし過ぎずに余裕をもって楽しめる「ロードスター」としてのキャラクターもしっかりと両立させる、往時の「ポルシェ 356 カブリオレ」や「MGB」のような“味わい”が色濃く感じられるところだ。この“ゆとり”は今のND型にもないNA型だけの美点。今猛烈に欲しくなって売り物を探しています。

