昔の「GS」が思い出される乗り味

「シトロエンC4」。軽くて折り目正しい、これですね。固くてどっしりした車か、さもなければ軽ばかり好まれる日本ではじつに理解されづらいタイプです。
マイナーチェンジ前の1.5リッターディーゼル+8速ATが、ディーゼルエンジンのCセグハッチバックとして限りなく完成度高めだったので、ミラーサイクル化されたガソリン1.2リッターターボに、48VシステムのMHEVが新開発の6速DCTと組み合わされるのって、一体どうなのよ?と、ぶっちゃけ、乗る前は心配しかありませんでした。
ところが、MHEVは優しく踏めば50㎞/h近くまで電気だけで引っ張れて、エンジン側に切り替わっても駆動のダイレクト感が心地よく、何よりディーゼルより鼻先が軽いから動きも軽快。それでいて高速道路を走行中は、低負荷になれば速攻でエンジンが積極的に(よい意味で)サボります。
コースティングの滑らかさはグライダーが滑空するような感覚です。そこにアドバンストコンフォートサスペンション&シートのふわりとしたライド感と、伝統芸ともいうべき粘っこいロードホールディングがオーバーラップすると、なぜか昔の「GS」が思い出され、シトロエンの新時代への攻めっぷりに驚愕します。
従来のガソリン車にはない電動ならではの瞬発力が、軽快さとダイレクト感のリソースになっていて、加えてディーゼルでは望むべくもない軽快さと振動の少なさ。燃費もWLTC値で23km/Lとくれば、果たしてストロングハイブリッドなんて要るの?という強烈なアンチテーゼともいえます。欧州Cセグではベストセラーのひとつですが、日本では非ストロングHVというだけで注目されづらいことが惜しいですね。
卒倒しそうなぐらい柔らかい乗り心地

個人的にCセグSUVの乗り心地大魔王といえば、「DS 7」か「シトロエン C5 エアクロス」で、いずれもお好みで、と思っていたんですが、フルモデルチェンジした「フォルクスワーゲン ティグアン」にはビビりました。「隠れ」で括ったら失礼でしょうけど、可変ダンパーがカヤバの2ソレノイド式になって、ちょっと卒倒しそうなぐらい柔らかい乗り心地もこなせるようになりました。スポーツモードとのメリハリも上手で、硬軟どっちもイケます感が素晴らしい。
惜しむらくは、その柔らかい乗り心地が“味”になっているかどうかでいえば、まだフランス車の方に独自色を感じられて、分があるところ。でもそれは残心とか収束の仕方とか、限りなく好みのレベルなので、気にならない(こだわらない)人にはどうでもいいことです。
賢く見えるズルくて凄いクルマ

もう日本はインフレというよりスタグフレーションでしょう、と言いたくなる昨今ですが、クルマの世界は逆に電動化につれてホント、1PSあたりの価格にデフレが起きてますよね。数年前なら純ICEの12気筒で6万5000円/PSぐらいだったのが、ハイブリッド化で一時は5万円を割りましたから。
でもテスラのプレイドなんて1100PSで1700万円ぐらいと思えば、1PSあたり1万5000円ちょっと。だから1000PSオーバー現象はスペックのインフレに見えて、じつはパワーの価格破壊というか、質的なデフレが起きています。スペック厨とかコスパくんは、こうして絡めとられていくんでしょうけど。
でも見渡せば、スーパーカーだけでなくCセグメントSUVで1PSあたり2万円を切りながら、賢く見えるズルくて凄いクルマもあるんですよ。それがボルボの2025年モデル「EX40ウルトラ ツインモーター」です。ぼくが試乗したのはブラックエディションという、全体的に黒基調のバージョンでした。
全身ブラックのイカつくてカッコいいだろう的仕様って、逆に子どもっぽく見えることが多いんですけど、このEX40はエアロパッケージとかムダに尖った外観をしていなくて、フェンダーやアンダーガードのウレタンを堂々と見せつけている分、いつもリラックスしたカジュアルブラックコーデでまとめている建築家みたいなインテリ風情が漂っています。内装もギラついて黒々しているのでなく、限りなく濃厚なチャコールの起毛素材で、白いパイピングも例外的に上品な、さすがの北欧インテリアです。
ところがいざ走り出すと、いかにもBEVらしい神経質な硬い乗り心地でなく、スムーズで滑らか。少しアクセルを踏み込めば、キビキビどころか恐ろしく速くも走れ、しかもAWDらしいスタビリティをアテにできます。408PSをキチンと御した穏やかなシャシーで、789万円ですから。EX40 は2026年モデルで「クラシック・エディション」、つまり最終仕様が登場してシングルモーターのみとなりますから、このツインモーター仕様は後々、あれこそ狙い目だったというカルトなBEVになるんじゃないかと思います。

