1.2Lガソリンエンジンはマイルドハイブリッド付きで22.3km/Lの低燃費

シトロエンC3はシトロエン側の言葉を借りれば、1948年の2CV以来となる「シトロエンの小型車史を現代に受け継ぐアーバンカー」の位置付けとなる。初代C3の登場は2003年。4代目となる最新型は「独特のデザインと広い室内空間、最新の安全・コネクティビティをまとい、ハイブリッドモデルも展開。カスタマイズ性にも優れ、フランス流の個性と使いやすさを今に伝える存在」ということになる。

4代目のシトロエンC3。日本では2025年11月6日から発売が開始された。グレードはベーシックな「PLUS」と上級の「MAX」の2種類。取材車は後者となる。

新しいC3は「OLI(オリ)」で公表したシトロエンの新しいデザインコンセプトを取り入れている。オリは2022年に発表された電気自動車のコンセプトカー。垂直と水平のラインでスパッと切った造形や、太い垂直のラインと薄く上下に2本入った水平のラインで構成するヘッドライトのグラフィックが特徴(リヤライトでも反復)である。

3つのセグメントに分割されたライトシグネチャーが目を惹く。
リヤライトも3つのセグメントで構成される。

歯車(シェブロン)をモチーフとするオーバル形状のエンブレム(芸の細かいことに、歯車の歯にも細かな線が入っている)もC3で初採用となる。この比較的大きなエンブレムをきちんと見せるために、フロントフェースを垂直に切り立ったデザインにしたのだそう(リヤも同様)。

シトロエン創業時のロゴをオマージュしたという最新のシトロエンロゴ。

エンブレムの左右に延びる樹脂の装飾にもシェブロンを反復。SUVライクなたくましさを表現するブラックの樹脂製のホイールアーチにもシェブロンをあしらっている。フロントバンパーのコーナー部やリヤクォーターには、アクセントとしてカラークリップを配している。また、フロントバンパー下部のスキッドプレート風パーツやリヤバンパー下部のパーツは塗装ではなく、樹脂材料にあらかじめ着色して成形する原着樹脂を採用。見た目に新規性があるし、傷つき性に優れている(塗装のように剥げない)のがメリットだ。

ホイールアーチにもシェブロンの文様が刻まれている。
フロントバンパーの左右にはカラークリップを配置。

全長×全幅×全高は4015×1755×1590mmで、先代C3比で20mm長く、5mm幅広く、95mm背が高い。ホイールベースは2540mmで、5mm長くなっている。パッと見そうは感じられないのだけれど、新型C3ハイブリッド、実は背が高い。1550mm以下の制限がある機械式立体駐車場は受け付けない。アンテナは先代と同様にロッド式で、機械式洗車場に入れる際はぐるぐるひねって取り外す必要がある。

全高は従来比+95mmとなり、Bセグメントのコンパクトカーとしては背の高さが際立つ。

プラットフォームは既存のCMPプラットフォームからの派生版だ。ゆえに最新であることに変わりはないが、派生させた狙いは新興市場に対応させるためで、低コスト化を意識している。手ごろな価格で実用性の高いクルマを提供するのが狙いだ。機能・装備面で低コスト化が表に出ているのが、キーをシリンダーに差し込んでひねる形のエンジン始動・停止方式である。それが当たり前だった世代にとっては懐かしい思いをするだろうか。スタート/ストップボタンからクルマとの付き合いが始まった人はどう感じるだろう。新鮮に感じてもらえるだろうか。いずれにせよ、特段それで不便ということはない。

ステアリングコラムにはキーシリンダーが。
物理キーを差し込んで、捻ってエンジン始動。少し前まで、これが当たり前だったわけで、特段不便さは感じない。

コストを意識したからといって衝突安全の面で手を抜いているわけではないので、その点ご心配なく。ADAS(先進運転支援システム)系は衝突被害軽減ブレーキといった最新の機能をそつなくカバーしているいっぽうで、クルーズコントロールはアダプティブ(ACC)ではないので、前走車との車間距離を維持しながら追従走行はしてくれない。ACCのつもりでいると前走車に追突しそうになるケースもあるので、注意が必要だ(試乗時にヒヤッとした口)。

パーキングブレーキは電動だが、欧州系ステランティス車の常で、ブレーキオートホールド(信号待ちなどでブレーキペダルから足を離しておける)機能は搭載していない。

シフトセレクターは小ぶりなレバー式。その手前側(写真だと下側)に電動パーキングブレーキのスイッチがある。

インテリアはすっきりとまとまっており機能的。ダッシュボードにライトグレーのファブリック素材をあしらっていることでやわらかい雰囲気を感じる。メーターはステアリングリムの内側から覗き込む一般的なタイプではなく、プジョー各車と同様にステアリングの上から覗き込むタイプ。そのせいでステアリングホイールが妙に小さいということもないし、メーターを見せるためにステアリング位置が低いということもない。操舵感も軽すぎず適切で、全体に違和感はない。

水平基調ですっきりとした印象のインパネ。中央には10インチのタッチスクリーンが鎮座する。

センターには10インチのタッチスクリーンが設置されている。AppleCarPlayやAndroidAutoに対応。スクリーンの手前に指を置くスペースが確保されているので、手の支えがきき、操作はしやすい。USB-Cのソケットは助手席側のダッシュボードにある。センターコンソール下部、カップホルダーの前方はスマホのワイヤレス充電器が備わる(MAXグレードのみ)。後席にもUSB-Cのソケットが2口ある。前席シートバックにはスマホを入れるのに適したポケットが付いており、スマホの取り扱いに関しては至れり尽くせりの印象だ。

こうして段差部分に指をかけると、タッチ操作がしやすい。
スマホのワイヤレス充電が可能なのはうれしい。

板チョコ状のクッション部が特徴のシートはデザイン性の高さもさることながら、表層部に採用した厚みのある高密度フォームによる独特の触感が魅力。前席シートの包み込まれる感覚も好印象だったが、圧巻は後席。クッション部は前席に比べて一段とソフトで、フカッとした沈み込み感は感動的ですらある。家族や友人を誘いたくなる座り心地だ。これを確かめるだけが目的でショールームを訪れる価値があると感じているし、後席オブ・ザ・イヤーがあれば差し上げたいくらいだ。車両サイズを考えれば、後席の居住スペースは充分であり、快適に過ごせる。

後席オブ・ザ・イヤーに認定したくなるほど快適な後席。
包みこまれるような座り心地の前席。

インテリアにはかわいい仕掛けもある。種明かししてしまうと(ここから先はネタバレ注意)、リヤウインドウにはエッフェル塔にノートルダム寺院をはじめとするパリの名所や雄鶏がシルクスクリーンで描かれ(写真、撮り忘れました)、グローブボックスを開くと、シトロエンの歴代名車をモチーフにしたイラストが現れる。また、前後席のアームレスには「be cool」や「have fun」などのポジティブな気分になるタグが添えられている。こうした小さな仕掛けが乗車時の気分を軽やかにする。

パワートレーンは最新だ。いわゆるマイルドハイブリッド(MHEV)の部類に入るが、オルタネーターで回生とエンジン始動を行なう簡便なタイプではなく、トランスミッションにもモーターを搭載する手の込んだタイプだ。MHEVながら、100%モーターで走行するEV走行(約30km/hまで)が可能だ。

エンジンはガソリン1.2L直列3気筒ターボ。吸気バルブの閉じタイミングを制御して膨張比>圧縮比を実現するミラーサイクルを適用して効率を高めている。最高出力は74kW/5500rpm、最大トルクは205Nm/1750rpmである。この高効率エンジンに組み合わせるトランスミッションは6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)で、このDCTに最高出力15kW、最大トルク51Nmを発生するモーターを内蔵。助手席下に搭載する48Vバッテリーに蓄える電力で駆動する。

1.2Lガソリンターボエンジン、モーター、6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)で構成されるパワートレイン。
カバーを外すとご覧のとおり。

アクセルを弱く踏み込んだ際など数々の条件はあるものの、基本的に発進はモーター駆動のみで行なう。加速時はモーターがエンジンをアシストして走行。高速での定常走行時はエンジンが発生する力だけで走行(そのほうが効率面で有利なので)。アクセルをオフにするとエンジンを止めて燃料の消費を抑えると同時に、モーターで運動エネルギーを回生してバッテリーに蓄える。ブレーキを踏んだ際もDCT内蔵のモーターでエネルギーを回生。停車中はエンジンを停止。再始動はBSG(ベルトオルタネータースターター)で行なうため、静かでスムーズだ。

MAXは17インチのダイヤモンドカットアロイホイールを履く。タイヤサイズは205/50R17。

WLTCモード燃費は22.3km/Lである。欧州系輸入車の常で、使用ガソリンはプレミアム(ハイオク)指定だ。発進時にEV走行をする条件が厳しいようで、渋滞時にノロノロ運転する以外はEV走行感を味わいづらいかもしれない。加速時も含め、モーターが活躍している様子を感じるのは難しく、ハイブリッドシステムは黒子に徹している印象。ただし、動力性能的には充分だし、短い試乗ではあったが燃費は良さそう、との感触は得ることができた。

なにより、シトロエンC3ハイブリッドは実用的かつ機能的であり、コンパクトなサイズで取り回しがしやすく、おしゃれで、エクステリアからもインテリアからも、新しさを感じられるのがいい。センスの良さが光る一台である。

グレードシトロエンC3 HYBRID MAX
全長4015mm
全幅1755mm
全高11590mm
室内長
室内幅
室内高
乗員人数(名)5
ホイールベース2540mm
最小回転半径
最低地上高
車両重量1270kg
パワーユニット1.2L直列3気筒DOHC+モーター
エンジン最高出力74kW(101PS)/5500rpm
エンジン最大トルク205Nm/1750rpm
燃料(タンク容量)プレミアムガソリン(44L)
モーター種類交流同期電動機
モーター最高出力15kW(20PS)/4264
モーター最大トルク51Nm/750-2499
バッテリー種類リチウムイオン電池
バッテリー総電力量0.876kWh
トランスミッション6速DCT
燃費(WLTCモード)22.3km/L
サスペンション前:マクファーソン式 後:トーションビーム式
ブレーキ前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
タイヤサイズ205/50R17
価格364万円