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今日は何の日?■タクシー用クラウンのマスターがデビュー

1955(昭和30)年1月7日、トヨタは初代クラウン「トヨペットクラウン」と同時に、タクシー用として「トヨペットマスター」を発売した。当時需要が高かったタクシー用に開発されたマスターは、過酷な使用状況に耐えるため、トラック用シャシーを採用した点がクラウンとは大きく異なる。
マスターの前身にあたるトヨペットスーパー

トヨタは、戦前の1936年にトヨタ初の乗用車「トヨダAA型」を発売して、その後第二次世界大戦で長く乗用車の開発は中断したが、戦後になって乗用車の開発を再開。1947年には、「トヨペットSA型」を世に送り出し、その後も新型乗用車を世に送り出し、改良を進めた。

1953年9月に小型車の規格変更に合わせて登場したのが、当時乗用車の需要の大半を占めていたタクシー用に開発された「トヨペットスーパー」である。ボディ製造は、中日本重工業(現、三菱重工)が担当した「RHN型」と関東自動車が担当した「RHK型」の2種類があった。
未舗装路の多かった当時の道路を長期間走るタクシーの過酷な使用環境に耐えられるように、シャシーはラダーフレームに、サスペンションは前後ともリーフスプリングで吊ったリジッドアクスルという、トラック同様の頑強な方式が採用された。
エンジンは、小型車規格が1.0Lから1.5Lまでに引き上げられたのに合わせて新たに開発した1.5L 直4 OHV(R型エンジン)を搭載。最高出力は48ps/最大トルク10.0kgmと、輸入車に引けを取らないパワーを発揮した。
トヨペットスーパーは、タクシーとして評価されてトヨタの主力モデルとなった。

初代クラウンと同時にデビューした「トヨペットマスター」

トヨタは1955年1月、満を持して完全オリジナルの本格的な乗用車「トヨペットクラウン(RS型)」を世に送り出した。世界レベルを目指したトヨペットクラウンには多くの先進的な技術が投入され、X型フレームにフロントサスペンションはダブルウィッシュボーンの独立懸架、リアは改良型リジッドリーフ、ドアは後席の乗降性を向上させるために観音開きが採用された。

クラウンと同時にデビューしたのが、「トヨペットマスター(RR型)」で、「トヨペットスーパー(RH型)」の後継車で、イタリア風のシンプルなデザインに一新したほか、シャシーにも改良が施された。タクシー向けであることから、スーパーと同じラダーフレームに、リーフスプリングのサスペンションを採用したが、リーフ枚数はフロントが8→6枚、リアが9枚→5枚に変更された。
パワートレインは、クラウンと同じ最高出力48p/最大トルク10.0kgmの1.5L 直4 OHV(R3エンジン)と3速ATの組み合わせ。
車両価格は、89.5万円で販売。クラウンが101.486万円だったので、クラウンより12万円ほど廉価だった。自家用クラウンと営業用マスターという棲み分けで同時に登場した両モデルだったが、クラウンの人気が高く、タクシー業者の多くがクラウンを選んだためマスターの存在は薄れてしまい、1956年11月に1代限りで生産を終えた。
マスター派生の商用車バン、ピックアップのマスターライン登場

1955年11月には、マスターをベースにした商用車の「マスターライン・バン」と「マスターライン・ピックアップトラック」が追加された。エンジンは同じR型だが、最高出力が55psに向上したが基本的な機能はベースのマスターと同じだ。

ベースの乗用車マスターの人気は今ひとつだったが、商用車のマスターライン・バン/ピックアップは乗用車並みの乗り心地を備えた商用車として人気を集めた。

マスターラインは、1967年9月にモデルチェンジでデビューした3代目からは、ベースをクラウンとして車名も「クラウンバン/ピックアップ」に変更された。充実した装備となり、パーソナルカーとしても使える2ドアハードトップモデルも登場するなど、一気に近代化を果たした。
エンジンは、2.0L 直6の4機種(最高出力100ps/105ps/110ps/125ps)と2.0L 直4(93ps)の5機種が用意され、商用車ながら個人ユーザーも増えて人気モデルとなった。
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トヨタとしては、クラウンは豪華で高額だからタクシー業界は好まないだろうと考えて、タクシー専用のマスターを投入したのだろう。しかし、蓋を開けるとクラウンの人気が絶大でタクシー業界もこぞってクラウンを購入したのだ。その後、クラウンでもタクシー用途に耐えることが明らかになり、マスターは1代限りで終焉を迎えた。これは、クラウンが耐久信頼性においても優れていたことを物語っている。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
