常識を超えたランドローバー

2025年の自動車シーンはこれまで以上に混沌としていたと思う。欧米におけるBEVの成長率の鈍化が、自動車業界全体に影響を及ぼしたのである。このためニュースに耳を傾けていると、「BEV専用として開発していたプラットフォームにやっぱり内燃機積みます!」的な内容も散見されたのである。
とはいえテーマが「個人的」ということなら、電動化は重要なファクターとはいえない。楽しいか、楽しくないか。ブランドの伝統に沿っているのか否か。そのあたりが評価の分かれ目になってくる。そこで2025年に個人的に気になったモデルを3つ挙げてみた。
1台目は「ディフェンダーオクタ」である。ワイドな見た目もいいけれど、特に感動したのは路面の凹凸が大きくなるほど乗り心地が良くなるようなアシ捌きだった。これは4本の電子制御ダンパーが油圧経路でリンクする「6Dダイナミックサスペンション」の恩恵。だが結果的にそれが「ドイツ的最新技術の積」ではなく「ブランドの昇華」として感じられるあたりにイギリス車の強さを実感した。
以前は牧歌的だったディフェンダーだが、代変わりしてチューニングされ、まるで別物に。とはいえそこに「ダカールラリーのベース車両として」という肩書きがあるのですんなりと呑み込める。ランドローバーブランドの勢いは今年も続くと確信している。
電動こそ本来の姿(?)

クラシック・ミニとの付き合いが深かったこともあって、デビュー当時からBMWミニを上手く咀嚼できないでいた。クラシック・ミニは、最終期こそ親しみを込めて「クラシック」という懐かしめの称号が追加されていたが、1959年に登場した当時は革新的な構造を持った最先端モデルだった。だからこそ40年以上のモデルライフをまっとうできたのである。では2001年にデビューしたBMWミニはどうか? 革新的な構造というよりも、可愛らしさの部分を抽出して作りあげたマーケティング主導のクルマと筆者の眼には写ったのである。
ところが2024年に本邦デビューし、昨年になってようやくステアリングを握ることができたミニのBEV版「ミニ クーパーSE」は、意匠と電動パワートレイン由来の走行フィールの整合性が良いことに感心させられた。
日本で売れるかどうかは別にして、ブランドの精神をきちんと反映させるなら、ミニはひと世代前にBEVに進化しているべきだったのでは? とも思った。このクルマがそれなりのアップデートを受けつつ、30年後くらいに「クラシック」と呼ばれ愛されていても、不思議ではないような気がした。
スタイルがあることの強み

今年個人的に感動したクルマの3台目はモーガンである。自動車世界の化石などとも呼ばれ、敢えて進化に背を向けることで熱心なファンを喜ばせてきたイギリスの古豪である。かつては最新のエンジンを大手メーカーから入手することで環境性能を満たし、あとはイギリスの少数生産車のための法律によって守られていた。だが昨今はさすがにそれだけでは生き残ることができず、21世紀に入って以降、着実に進化を繰り返している。
その最新版が、もうすぐ日本の路上を走りはじめる最新モデル「スーパースポーツ」なのだが、筆者が感動したのは4気筒エンジンを搭載した現行の「プラスフォー」だった。例えば操作部を完全に隠しつつ、スマホの音を美しく響かせるブルートゥースシステムが仕込まれていたり、安定したロードホールディングを誇るサスペンションが与えられているのだが、それでも見た目や素材感は慣れ親しんだモーガンそのもの。進化させ過ぎることなく、厚い支持が得られる理由は、伝統というひな型が存在しているからだろう。
そしてこの事実は今回の他の2台にも言えるかもしれない。最先端の機能を網羅していることよりもブランドの魅力が勝る。混沌とした時代にイギリス車が光り輝いて見える理由はそんなところにあるのだと思う。

