”オールハンズ”の掛け声をかけられる自工会

Q:自工会会長就任で、あらためて抱負を。
佐藤恒治会長(以下佐藤):はい。片山前会長からバトン引き継いで、本当に身の引き締まる思いです。自動車業界、激動の、非常に変化の大きい、かつスピードの速い時代になってますので、いろんな取り組みの結果を出していかないといけないと思うんですね。そういう意味において、今の自工会会長をいう役割を与えていただいたということで、責任は非常に大きいと思っています。だからこそ、行動で返していく。とにかく色々議論するよりも、まず行動して、現場で汗かいて何かを変えていくと、ここが自分の個性でもあると思いますので、そういうことをしっかりたいと思ってます。
Q:2026年の経済のキーワードについて書いていただいてもいいでしょうか。
佐藤:はい。『国際競争力』が非常に重要なキーワードかなと思っております。
Q:国際競争力のワードを選ばれた理由は?
佐藤:昨今の政治もそうですけども、いわゆるブロック経済がどんどん進んでいくなかで、自動車産業はどちらかというとこうグローバルスタンダードなものを世界的に展開をしていくビジネスモデルだと思います。ただ、やっぱりエネルギー環境とか政治経済の状況もそれぞれ地域ごとに大きく変化が生まれているなかで、いかにそういう地域への対応をしていくか、かつ、そのなかで日本の価値をどう見つけていくか。単にコスト競争に陥るんではなくて、いかに日本の自動車産業の活性化を促しながら、サステナブルなビジネスモデルにしていくか、ここはやっぱり大事だと思います。そういう意味で、世界の中でやはりの日本の自動車産業がしっかりと役割を果たせるように頑張っていきたいと思っています。


Q:昨年の一番大きな出来事は関税だったと思います。改めて今年どう臨まれていきますか?
佐藤:まず、本当に日本政府並びに関係省庁の皆さんのご尽力によって妥結を見たんですけども、税率そのものは、あとから見れば一定のところに収まったということではあるんですが、やはりこれ決してこの数字自体は、事業の前提として厳しいことに変わりはないですね。だから、さらなる努力を政府にもぜひお願いをしたいですし、我々もそれにしっかりついていくべく努力をしなきゃいけないと思います。
Q:自工会の重点テーマを策定されました。以前とは少し変わったところもあるかと思いますし、新しく追加されたところもあるかと思います。この策定背景を少しお伺いしたいのと、国際競争力ということなので、現状の日本の自動車の競争力をどう見てらっしゃるのかと、こうありたい姿も合わせてお話しいただけますか?
【新7つの課題】
| ① 重要資源・部品の安全保障 |
| ② マルチパスウェイの社会実装 |
| ③ サーキュラーエコノミーの仕組みづくり |
| ④ 人材基盤の強化 |
| ⑤ 自動運転を前提とした交通システム確立 |
| ⑥ 自動車関連税制 抜本改革 |
| ⑦ サプライチェーン全体での競争力向上 |
佐藤:7つの課題そのものは、自工会の会長、副会長で議論をだいぶ繰り返しまして、これまで取り組んできた7つの課題に対して、現状を見た時に、どこにより注力していくべきかということで決めてきました。元々の7つの課題もそうなんですが、やっぱりこの短期間にやっぱり結果を出していかなきゃいけない重要課題いうことで、改めてその世界環境が変わっていくなかで、テーマに対するそのプラオリティ付けをもう一回行なったということです。特に7つそれぞれに大変深い思いがあって決めてはいるんですが、サプライチェーンや、重要資源のところですね、経済安全保障の観点からも非常に短期的に結果を出していかなきゃいけない課題が多くあると思います。そういうところに対して、いわゆる「競争と協調」で、いかに協調を生んでいくかがすごく大事だと思いまして、個社で対応できるところはやはり限界がありますよね。特に重要資源の安定調達みたいなところは、これティア(Tier)の深いところにそのビジネスの取引があるわけですね。そうすると、OEM(自動車メーカー)のところで把握できてる情報レベルにもだいぶ差があったりします。こういうところをしっかりと”見える化”をして、業界としてセキュアしてくことを短期間にも進めていかないといけないという意味で、ある種の協調をしっかり作っていくということが、おそらく重要資源などでは大事でしょうし、サプライチェーンもそうなんですけども、これまでのいわゆる系列ですとか地域の属性に依存したサプライチェーンで本当に日本は世界でどう戦っていけるのか、これを取り直したいと思っています。ある意味、そのスケールを取っていくような大きな連携を生んでいくこと、それでちゃんと国際競争に打ち勝っていくこと、これが大事だと思いますので、そういう意味でも、サプライチェーンの強靭化に対して少しスケールの視点を入れながら取り組んでいきたいと思っています。

Q:ベネズエラのアメリカによる攻撃の受け止めとですね、今後、自動車業界全体、自動車市場は世界経済でも構いませんので、中長期的にですね、今後どのような影響が及ぶと読んでらっしゃるのか。特に地政学リスクの高まりについて、どのように今ご見解をお持ちなのかをお聞かせください。
佐藤:まず、ベネズエラの件については、邦人の安全確保が第一にあるべきだと思いますし、政府そのように動いていただいてると思います。自工会にとっても関係企業の邦人の安全が最優先にされるべきだと思ってますので、我々もしっかりと情報を取って対応していきたい。それとは関係ないというか、それとはまた違った視点で自動車産業についてどのように見ているのかということで、先ほど申し上げたように、ブロック経済がどんどん進展していくなかでいろんなリスクは当然大きくなって、今日も、今朝地震ありましたけども、そういう災害リスクとか、いわゆる”供給力”に対して、我々はものすごくしっかりと構えを取っていかないといけないと思うんですね。国の政策でも、今回色々な総合経済対策のなかでも、いわゆる国内の投資に対する色々な配慮をいただいてます。こういったよことをしっかりと活かしながら、生産あるいは販売の供給力をしっかり保っていく取り組みを進めていくべきだろうと思っています。それが最終的には世界でいろんなリスクが起きた時に対応していくための原動力になるんじゃないかなと、そのように思ってます。
Q:昨年末にまとまった税制改正についてどういうふうに受け止めているか。
佐藤:まず、税制改正大綱の中身で言いますと、これは大原則というか、自工会として常に軸にしてきております。簡素化、それから負担軽減、目的の明確化という、この3つの柱に沿って、我々これからもぶれずに活動していきたい。ただ、税制大綱あるいは直近のいろんな取り組みのなかで、環境性能割り対して廃止の方向性をお示しいただいたこと、あるいは自動車税に対する今後の議論の道筋みたいなことについてお示しいただいたことに対して、我々も積極的にそこに関わりながら前向きに、冒頭申し上げた3つの軸を徹底していきたいと思っています。
Q:昨年、佐藤さんの会長就任が決まった時にコメントをいただいてるもので、2020年に自工会の理事は現役社長が務めるものだと決めた。その意味を考え直してってのは、あれ。どういう意味だったんですか?
佐藤:要は肩書きじゃないんじゃないかなと思ってます。私自身は社長あるいはCEOだから、この自工会の会長、副会長がやれるということではなくて、その社長がやると合意形成をもう一回しっかり考えなきゃいけないなと思ってます。要は、その事業への直結性みたいなことですね。自工会で決めたことに対して、それが実行に移せるかどうかが非常に大事で、話し合いをしててもしょうがないので、いかに実践するかじゃないですか。その実践を考えた時には、そのCEOである、あるいはそのお役目についている人が自工会に関わってることのは、ある種の直結性、事業展開に向けた直結性の裏付けにはなると。そういうことを大事にした上で、そういう議論がなされたのだろうと思います。やは肩書きというよりは、いかに事業に直結させていくかを大事にお役目を果たしていかなきゃいけないなという風に思ってます。ただ一方で、難しいのは、先ほど来申し上げてるように、”競争協調”の競争はいいんですよ、各社の社長として振る舞いは。ただ、自工会の会長として協調領域を作ってこうとした時に、果たして本当にトヨタの社長という肩書きはどうなのかっていうのも一方であるとは思います。要するに、トヨタの社長っていう肩書きをつけて、同時に自工会の会長であるということがポジティブに作用する場合と、やはりそのトヨタに対する同調みたいなことに繋がってしまわないか……みたいなことで、やっぱり私は思いますのは、あの自工会の在り方、今の日本の自動車産業は珍しく14社が本当に多様性を持って存在している業界団体ですね。この多様性が力にならなきゃいけない思うんですよ。多様性をスポイルして同調させていくような会長ではなくて、いかにその多様性が強みになるかっていうことに尽力すべきだと思っています。そう思った時に、そのトヨタの社長である私は、ポジティブな面とネガティブな面を両方持っているんですね。だから、そういうことについては、そこをしっかり自分の中でも考えて、いかに自工会を完成度を上げられる団体にしてるかということはやっぱり考えなきゃいけないだろうなという風に思います。
Q:賃上げについてお聞きしたい。物価上昇は終わりが見えない状況が続いています。ティア(Tier)の深いところへその賃上げの流れを波及させていくか。自工会として、そのTierの深いところまで賃上げの流れを発揮させるために何が必要か、何をやるべきだと考えていますか?
佐藤:ずばり、適正取引と価格反映もこれに尽きると思います。自動車OEMがサプライチェーンの深いところまで、特にトヨタで言うと、自分が社長としていろんな取り組みをやってきて、やっぱりOEMがサプライチェーン全体に波及するようないろんな総合的な投資をしてくると。これ初年度はなかなか水を流しても流れなかったんですね、実効性に不安があると。これを継続していくと、なんとなくそういう環境なんだなっていうことが認知されて、少しずつそういう動きが見えてくる。ただ、これはサステナブルではありませんので、深いところでしっかりと賃上げにつなげるためのエネルギーをもたらすためには、これも間違いなく適正に取引をして、色々なコスト上昇分を価格に反映して、それを確実に実行すると。そのリアルなビジネスのなかで健全な環境を作っていって、Teirの深いところまでエネルギーを届けていくと、これに尽きると思うんですよ。賃上げの話でした。まず、経済原理わかります。やっぱり実質賃金に対して、その物価上昇を超えるために、超えるレベルの賃上があるっていうのは、多分経済原理として理解した上でいいんですが、単純化しすぎだと思ってます。今の自動車産業、労働集約型の産業がこれからもサステナブルな産業であり続けるためには、単純な賃金の話で終わらせてはいけないと思うんですよ。労働環境だとか人への相互投資というのが総合的に行なわれて、で、雇用と成長と分配が多分バランスしないといけないんです。自動車産業は、昨今のこの短期的な動きの前に、安定的に雇用を守りながら賃上げをずっと続けてるんですよ。その雇用と賃上げのバランスを取ってきてるのが自動車産業ですね。この大前提をやっぱり忘れていただきたくない。そのバランスのなかでどうするかで、かつ、労使の話し合いが最も大切にすべきことだと思うんです。やっぱり労使がどうやってその会社の発展、従業員の幸せを願ってお互いに努力していくのかいうことを徹底的に話し合うところが本質なはずで、それを、なんとなくね、何%の賃上げなんだって単純化することが僕は正直、違和感を覚えています。自動車産業の仲間にはぜひともそういう議論をしてほしいし、実は組合に加入できてないお会社さん、要するに組合が存在しない会社さんっは7割存在するわけです。そこまで含めてちゃんと賃金を上げていくためには、その単純化された大企業の賃上げがどうなるかっていうことをと全く違う次元で深い議論がいるはずなんです。適正取引で体力をつけて、自分たちがちゃんとそれに報いる賃金を払えるようなビジネス環境を作っていくことが一番大事だと思ってますので、そうなっていくように努力をしていきたいなと思います。
Q:先ほどの自工会で掲げられた国際競争力について、日本の新たなものづくりの強みとして、現場のデータと、AIとロボティックを掲げられていました。こちらの新たな勝ち筋、新たな日本のものづくりに賭けるお考えについて、もう少しご説明いただけますでしょうか。
佐藤:昨今、ヒューマノイドって言った方がいいのかもしれないですけど、ロボティックスの議論ってすごくいろんなところで活発になされていて、これからのものづくりの景色を変えると、言われてるわけですけど、そんな簡単なもんじゃないと思ってます。いわゆるそのヒューマノイドがなんとなく人間的な動きをするって、これは決してね、そのモノづくりの直接的な支援につながることではなくて、モノづくり、そんな舐めてもらっちゃ困るというふうに思ってまして。どれだけその品質を保証する作業を現場でひとり一人がやってるかで、こういうことが、いわゆるヒューマノイドではなくて、フィジカルAIとして現場にロボティクスを入れてこうとした時に一番大事なのは、ハードじゃなくてソフトですよ。
データなんですよ。冒頭のご挨拶申し上げたように、AIって結局食べているデータで育つわけで、どんなデータを食べてるかで育ち方が変わるわけですよ。実態のない世界なんで。日本のものづくりの現場にはものすごく尊い暗黙知がうわっとあるわけですよ。我々の勝ち筋は、今ここにある日本のものづくりの無形の価値を今こそデータ化してAIに食わせようとすると、同じような技術だったとしても、日本でしか食べられないデータがあるよね、と。そのデータを食べて育ったフィジカルAIは、日本のハイクオリティなものづくりを将来変えてくれるはずです。
Q:自工会会長として日本車を海外にどうアピールしていきたいのか、また、海外からは日本の車っていうのはどういところを評価されているのか、また、それをこう、どこが今足りないと見られているのか、それをどう改善していきたいのか、その点、お伺いできますでしょうか?
佐藤:やっぱり車の本質的な価値っていうのは絶対に失われないと思っています。心に訴えかけるものがあって、楽しいとか感動するとか、そういうような、人間の感性に訴えかけるような価値ってクルマのみならずいろんなものにあるじゃないですか。音楽だってそうだし、そのひとつがクルマだと僕は思っています。今どうしてもその機能的価値にみんな注目をして例えばBEVもそうなんですけど、いわゆるカーボンニュートラルにならなければいけない。そのソリューションとしてBEVがある。BEVへのトランジッションが遅れてる人たちは事業転換が遅れていると。こういう方程式で物事が見られてるけども、一番大事な本質的な価値っていうのは、クルマが人をワクワクさせるとか、所有することに喜びがあるっていうとこなので、そこに繋がる価値をどうやって日本のクルマで作っていくか。これが大事だと思うんですよ。だからBEVも、当初の競争っていうのは、バッテリー容量とモーター出力の2軸で評価するような論調があったじゃないですか。お客さんそこにいないですよね。資源の循環どうやって考えるんですか。だから、BEVが、例えば、今、大体普及率が日本で2%切ってますね。一番進んでる中国でも半分いってない、30%ぐらいだったかな。アジアが大体15%ぐらいだと思います。そのぐらい普及率になってるのは、これ、過剰なそのBEVトランジションを煽るような長期的な動きというか、そういう、そういう政策誘導的なものではなくて、やっぱお客様を見ないといけないと思うんです。お客様の心が動くバッテリービューを作らないといけで、だんだんと日本のメーカーはそれをできるようになってきてると思う。僕自身も数年前によって売れると。これ最近開発したクルマに乗ってるなかで感じ方全然違います。そういう価値を見失わないようにしながら、ちゃんとカーボンニュートラルでもあるこういうもの作りをですよ。やっぱりハイクオリティであるっていう本物の良さ。しっかりと安全安心が担保されて乗れること。日頃気づかないですけど、最も大事なことだと。安全で安心であると。それってものすごく訴求が難しいですよ。安全で安心ですって当たり前じゃないか。その当たり前を守っていくことが一番大事で、その努力を日本の各メーカーはそれぞれやってきてると思います。かつ各社がブランドアイデンティティを大事にしてると思うんですよね。値段で、機能で切れるようなものではなく、お金出して買いたいって思えるような個性のあるものを各社で作って、まず冒頭申し上げた多様性が強みになる自動車産業を目指していかなきゃいけない。
Q:今年のトピックで、アメリカとの関係を踏まえて逆輸入っていうのを自動車メーカーさん何社か前向きに検討してらっしゃる。トヨタさんはすでにやりますという風におっしゃってますけれども。国の認証制度も今回前向きにこう変更の方に向かって動いてまして、こういったことは、その自動車メーカー全体にとって、国内のメーカーにとって、どういった意味があることだという風に受け止めていらっしゃるでしょうか。
佐藤:トヨタはご案内の通りですね。他社については私自身は報道ベースでしか聞いてませんけども、他2社動きがあるという風に聞いてます。逆輸入そのものに大きな経済的意味があるということではなくて、やっぱり一番大事なのは、開かれた自由な貿易環境をいかに作るかっていうことだと思っています。
やっぱりアメリカは、独自の規格を持ってますから、アメリカで販売してるクルマをそのまま日本に持ってきて受け入れるためには、認証の簡素化というか、見直しをしていく必要があります。日本は、皆さんご存知かわかりませんけども、いわゆるUNの国連法規、WP29の枠組みにおいては副議長国なんですよ。だから、世界においてグローバル基準を作っていくためのリード国であるんですね。ただ残念ながらアメリカ、中国はその国連法規の外側にいると。国連法規が目指してるものは、やっぱりその自動車産業全体の安定的な発展のためには、やっぱりそれはグローバルの規格が統一されていくべきだろうと思いますので、そういったようなことにつなげていく。そのために我々もやっぱりしっかり努力をしないといけないと思うんですね。アメリカのクルマを日本に入れられるようなクルマの作り方をこれからもしっかり考えていかないといけないと思うし、そういう規制緩和を今後働きかけていく必要があるから、逆に、そのものというよりは、それがもたらすそのグローバルな規格の将来に向けていい方向に繋げていければ、そんな思いです。
Q:また人事の話に戻って恐縮なんですが、昨年、今回のトップ人事が決まった後に片山会長が、選考過程についてで今の課題を進めておく上でどこの企業から会長を出すのがいいかと、そういうことを議論した結果として全会一致でトヨタ自動車になったという話をされてたと思うんです。確かに前回豊田会長が務められて2年ほどしか経ってない状況なんですが、改めてトヨタにそのリーダーシップを発揮してもらいたいっていう業界の声をどう受け止められて、実際にどのようにリーダーシップを発揮していくのかについてお聞かせください。
佐藤:私自身も副会長としてその次期会長についての議論には、部分的かもしれませんけど加わっていたなかで、自分の認識ではトヨタあきの議論ではなかったと思います。本当に純粋にその7つの課題に取り組んできた。今、自動車産業がどのような課題に取り組んでいくか、それを先に決めて、そこから誰がリード役をやるべきかっていうことを決めようよと、こういうプロセスでした。だからトヨタだっていうことを決め打ちするんじゃなくて、むしろ僕言ってんのはもう”オールハンズ”なんですよね。船の世界詳しい方はわかってわかるかもしれないですけど、嵐に出会った時には船長が掛けられる掛け声に”オールハンズ”っていうのがあるんですよ。要は甲板に出て、全員でこの嵐を乗り切ろうっていうことなんですね。そのオールハンズの掛け声がかけられる自工会に今はなってると思います。なので、正直誰がリーダーやってもオールハンズなんです。だから僕がとか、トヨタが会長会社だからトヨタ色に染めた自工会にしようともまったく思ってないです。
Q:日本自動車工業会の会長として、BEV戦略をどのように組み立てていくか、引っ張っていくか?
佐藤:まず根っこにエネルギーセキュリティの問題があると思っています。だから、その今の日本のエネルギー環境の下で、本当にどれぐらいのトランジションスピードでBEVを普及させていくべきなのかって、これは慎重に考える必要があると思います。エネルギーセキュリティが原点にあって、モビリティは進化があると。これまで石油が基幹エネルギーだったから、あの内燃機関がどんどんそのエネルギーに寄り添って発展してきた。今、エネルギーそのものがトランジションをしようとしてるので、多様なエネルギーの可能性があるなかでは多様なソリューションを持つべきだ。これがマルチパスウェイの前提ですから。BEVだけに固執するつもりもないですし、カーボンニュートラルの道筋っていうのは色々ある。かつCO₂を現実的に減らしていくことの方が大事だ。だから、目の前にあるやれる努力をどんどんやりながら実行し、実行力を上げていくっていうのが一番大事だと思いますね。そういう意味では、非常にロングレンジになってる水素の取り組みは非常に重要だと思ってます。それはまた別の機会でお話できるいいと思います。
一方でBEVもソリューションのひとつであるのは間違いなくて、ある一定量はBEVとして我々もしっかりとクルマを作ってお届けしていかないといけない。今までのBEVトランジションは、どちらかというと、先ほど申し上げたように政策運動的なところが強くて、そこでお客様がいらっしゃらないんです。だから、各国の販売の状況をこうやってこうグラフに書いてもらうとわかるんですけど、政策の転換点と売れ行きの転換点が一致しちゃってんですよ。これは、これ健全なビジネスにならない。だから、まずはお客様にしっかりと向き合う、お客様の価値を損なわないように、どんなBEVだったら持っていただけるのかっていうのを見極めて、これは大事な、さっき言ったように、クルマの本質価値を失った、ただの電通化された乗り物はお客様の心を動かさない。そういうものをしっかり考えて作る。
もうひとつはインフラです。当たり前のように近くにガソリンスタンドがあるから、そこを心配せずにクルマを買えるわけですね。当たり前のように充電ができる環境がないとBEVの普及はないんです。だから、インフラをしっかり考えていく。これはひとつ大事だと思います。そのインフラの進捗がなかなか思うように進んでない。これがBEVトランジションを少しずつスロースピードにさせているようだと。もうひとつは、しっかり循環させる仕組みを作ってく、あるいはバッテリーそのものがコストの半分を占める原価構成になるようなものをそのままにしといて、ビジネスが健全などになるわけがないんですよ。だから特に電池のサーキュラーのところは、これは業界を 挙げてやっていかないといけない。これは自工会の7つの課題のなかでも取り上げていく話だと思うんですね。そういう複合的な政策、あるいは企業の努力が重なっていって初めて市場はできてくると思うので、もちろんメーカーとしては、乗るべき価値のある気持ちのいいBEVを作っていかないといけない。一方では、あるいはインフラというところを、OEMだから知らないようではなくて、我々が手を突っ込んで、そこのその改善というか場を作っていかないといけないんじゃないかなと思います。
