外見は当時風、中身は最新スペックを意識!
4スロの5.5A-Gをフルコン制御する令和仕様
改造範囲が厳しく制限されたN1カテゴリーに対し、排気量をキープする限り、エアロパーツの装着やワイドボディ化、エンジンチューンなど多彩な改造が認められていたN2カテゴリー。
昭和後期のレーシングカーといえば、全日本ツーリングカー選手権のグループAマシンが象徴的だが、チューニング好きの記憶を刺激するのは、オーバーフェンダーを纏い、富士や鈴鹿を駆け抜けたN2マシンの姿だろう。

ここに登場するのは、そのN2マシンを代表する一台、AE86。だが、巨大なGTウイングやエアロミラー、エアダクト付きオーバーフェンダーを備えたその佇まいは、当時のN2ハチロクとは少し趣が異なる。
理由は明確だ。ドリフトキング・土屋圭市が立ち上げた『AE86富士N2決戦』を戦うため、最新技術を惜しみなく注ぎ込んだ“スーパーN2”仕様として再構築されているからである。

「若い頃は資金面の制約もあってN1に参戦していましたが、N2はずっと憧れの存在でした。『AE86富士N2決戦』で、レジェンドドライバーの土屋さんと同じ舞台で走りたいという想いもありましたね。そんなとき、N2仕様のハチロクが売りに出ているのを見つけて、これならスーパーN2に出られると思い即決しました。ボディのレストアから始めたばかりで、まだ進化の途中ですが、先日開催されたAE86富士N2決戦2025で無事デビューを果たしました」。
そう語るのは、和歌山県で旧車パーツの製造・販売を手がけるファイン代表の松岡さんだ。

入手時のN2ハチロクは、ウェーバーキャブを使ったドライサンプ仕様のエンジンを搭載していた。しかし、テスト走行でのエンジンブローや、セットアップの自由度に課題を感じたことから、現在は4連スロットル+フルコン制御の5.5A-Gへとスイッチ。スーパーN2のレギュレーションでは7A-Gやシーケンシャルミッションの使用も認められているが、まずは2025年シーズンのレースデビューを最優先し、短期間で仕上げたパッケージとなっている。
ドライサンプ仕様の5.5A-Gは、運動性能向上を狙って低く、かつフロントミッドに搭載。戸田レーシング製4連スロットルやダイレクトイグニッション化を施し、最高出力210ps、最大トルク20kgmを発揮する。

レースデビューを急いだ関係で、ドライサンプ用オイルタンクは車両入手時のままラジエター横に配置。今後はフロント荷重の軽減を目的に、タンク位置やホースレイアウトの見直しが検討されている。

キャブから4スロへの変更に合わせ、マネージメントシステムにはモーテックM800を採用。スーパーN2のレギュレーション内で、より緻密なセットアップを追い込める環境が整えられた。

今回の取材に合わせて、次なるアップデートとして予定していたアルテッツァ用6速MTを使ったフルクロス化も完了。レーシングカーらしい操作性を追求するべく、オルガン式ペダルへの変更も視野に入れているという。


足回りは各部ブッシュをピロボール化し、リヤにはコイルオーバー式のビルズ車高調を投入。シバタイヤのスリックモデルR60を組み合わせ、スプリングレートはフロント11kg/mm、リヤ8kg/mmでセットアップされる。

ホイールはボルクレーシングTE37V。AE86富士N2決戦・スーパーN2クラス向けに開発されたシバタイヤR60を、フロント9.5Jマイナス20、リヤ10Jマイナス25に240/45R15サイズで履きこなす。

安全タンクや消火器など、必要最小限の装備に留めたインテリアは、ストイックなレーシングカーのオーラを放つ。助手席側にはクールスーツ用の冷却ボックスを設置。GTウイングの効果を最大限に引き出すためフロア直付けとしながら、リヤゲートの開閉性も確保するという、実戦的な工夫も見逃せない。

視認性を重視してレイアウトされたインパネやフロントアンダーパネルは、製作期間の都合からアルミ板にカーボンシートを貼って仕上げられている。規定重量820kgに対して約10kgの余裕があるため、今後はカーボン化によるさらなる軽量化も計画中だ。



エアブラシで描かれたダミーヘッドライトや、ステー吊りのワンオフアンダーパネルが目を引くフロントフェイス。一方、リヤはパラシュート効果を抑えるため穴開け加工を施したバンパーに、FD3S用ディフューザーを流用装着。GTウイングはボルテックス製、エアダクト付きの近代的N2フェンダーはカスタムガレージスピード製となる。

松岡さんの“趣味としての本気チャレンジ”は、まだ始まったばかりだ。すでに来シーズンを見据え、5速MTからアルテッツァ用6速MTへのフルクロス化を完了するなど、スーパーN2の名にふさわしいアップデートは着実に進行中。カーボンパーツによる軽量化や空力強化が実現したとき、このAE86がどんな速さを見せるのか。期待は尽きない。
●取材協力:ファイン 和歌山県伊都郡かつらぎ町妙寺44-1 Mail:info@fine-jp.com
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